VSミス紫陽花2
茜は横座りで上体を起こして、戸惑う。
「うう嘘ば言わんでっ!」
「嘘じゃなかて。俺は元・生田潤壱で、訳あって今は生田潤っ!!」
「わっ私は、大原茜。生田君は何処ね!」
「だから、俺が生田だってば!!」
「まさかっ、恋敵なっ!?」
「ンな訳があっかコラ! 朝目が覚めたら、俺が女ん子に変わっとったったいね!!」
「デタラメやかね!!」
「デタラメじゃなか!!」
潤の怒鳴った途端、茜が地を蹴って走り、腹目掛けて肩を当てて押し倒した。すかさず、馬乗りを勝ち取る。そして、そのまま両頬を摘んで、引っ張った。
ミス紫陽花が嘆く。
「いやあ〜〜っ! いやあ〜〜っ! そがん事て有り得んばいっ! 嘘ばつかんでよお〜〜っ!」
「うひょらねへーひょ! うひょらねへーーっへ!!」
「いやあ〜っ! いやあ〜っ! 生田君に、逢わせて〜〜っ!」
「いふははっ、ほへはーーっ!!」
「そこまでん言うなら、確かめさしてさ!!」
ミス紫陽花が馬乗りのまま、潤の上着の隙間に両手を滑り込ませると、小さな膨らみを揉み始めてゆく。潤、たちまち未知の感覚から胸伝いに襲われる。
「ああっ……。だっ、駄目っ……いやっ……!」
頬を紅潮させつつも、唇噛み締めて堪えながら腰を突き上げて頭を地面に付け躰を弓なりに反らせた。そして、茜のセーラー襟を掴んで投げた。前方に投げられた茜が受け身を取って、転がり片膝を突いたのちに顔を向けて驚く。
「ほっほっ、本物!?」
「人ん乳ば、いつまでん揉むなあ!!」
赤面した潤が、拳を振り上げて怒鳴った。何か知らないが、突然にして全てを理解した茜。
「可愛か……」
「へっ……?」
「生田君て、女ん子に変わっても可愛かね……。魅力的ばい!!」
「ちちちょっと待て。」
「顔と躰は女ん子でも、心は男ん子やろ」
「そうそうそう! 分かって貰えた? 俺、嬉しか!!」
潤が歓喜している傍で、ゆっくりと立ち上がった茜が歩み寄ってゆき、照れ臭そうに頬を朱に染めながらも手を差し出た。
「潤さん……。あの……おとっ、お友達から始めて頂けませんか……」
「はい。此方こそ、宜しくお願いします」
潤は、この人はこんな性格なんだなと一気に理解して受け入れた。
「大原さん」
「はい」
「先程の動きは、いったい……?」
「プロレスリング……です」