とりあえず学校
二七歳の女担任教師が戸惑い色をモロに出して、元・潤壱を紹介。
「え、えーっと。世の中、何が起きっかよおー分からんです。今から紹介すっ子は、アンタ達の顔馴染みのクラスメートです。――元、生田潤壱君。かか彼は、朝目が覚めたら女ん子に成っとりました」
「生田潤壱改め生田潤です。宜しくお願い致します」
元・空手男児が改まって自己紹介。
大爆発の大爆笑。
「嘘ばつくっなら、もっとマシな嘘ばつかんか!」
「空手の朝練に遅刻したって、言い訳に替え玉かいっ!!」
「本物の生田君ば出さんねさ!」
「そい、制服ん違うやっかよ!」
「生田は、何処かあっ!!」
これまでに無い赤っ恥。
「ぐぬぬぬ……」
潤壱こと潤は、怒りを堪えた形相に変えて、歯を剥き出して拳を握り締めた。元・空手男児が、力強く踏み出して拳を振り上げる。
「おお、てめぇ達!! 俺が、正真正銘の生田潤壱改めっ、生田 潤だあっ!! 文句あっかコラあっ!!」
どう見ても何処見ても、生田 潤壱の面影無し。実に美しい少女である。すると、現・生田潤は何を思ったのか教壇の横に立つなりに、突然に拳と足で風を唸らせ舞を披露。
垂直に腕を曲げて払う。
踏み入れて拳で突く。
膝を急角度で突き上げる。
太股が丸見えに。
天高く足を蹴り上げに繋げた。
風が音を鳴らす。
惜しげも無く美脚を披露。
踏み出して正拳突き。
更に踏み出して腕を交差。
横一線、槍の如く肘鉄。
長槍の如き横一線の踵蹴り。
踏み出して正拳中段。
そして、瑞々しい唇を強く結んで生徒席を振り向いた。
「どげんや。まだやるかっ!!」 生田潤、自信たっぷり。
結局のところ
「潤ちゃーん、可愛かあーっ!!」
「良かぞおっ! 潤ちゃんっ!」
「恰好ん良かぞ! 可愛か!」
「潤ちゃんっ!」
「潤ちゃーん!!」
「いよっ! 空手美少女っ!!」
「潤っ」
「潤ちゃーん」
拍手喝采である。
「ぐぬぬぬ……」
再び歯を食い縛り、拳を握り締めた。
そんなこんなで昼休みに、ひとりの女生徒が笑顔で潤の元に来るなりに、手紙を渡した。
「潤ちゃん。こん手紙はね、アンタが着とるその紫陽花女子高校の女ん子からの手紙たいね」
「こっ、こりゃあ何ね?」
「ウチだって中は読んどらんよ。けど、分かるばい。――女ん子との待ち合わせに、遅れたら駄目けんね。頑張って」
「ぐぬぬぬ……」