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「魔女と鳳凰と輝夜姫」(セーラー服と雪女 第18巻)  作者: サナダムシオ


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⑨ カグヤとムサシ

「さあ、私たちも彼の後を追うわよ。」 

 雪子はそう言うと二人を促し、ビートルに戻った。


 彼女の操縦で光学迷彩を掛けたまま、急速上昇したクルマは、そのままひとっ飛びで、直ぐに武蔵の小舟に追いついた。


 雪子はビートルを、武蔵の小舟の真上に移動させると、四つのタイヤの車軸を下に向かって伸ばし、それをアームのように使って、真下の武蔵の小舟をガッチリ掴んでしまった。


 そしてそのまま小舟を持ち上げると、下関市の上空を越えて、最寄りの馬島まで運んでしまったのだ。

 もしもその時、空を仰ぎ見た者が居たなら、不思議な空飛ぶ小舟が見えたことだろう。


 運良く誰にも見られなかったからいいものを、急いでいたにしろ、雪子も随分と乱暴なことをしたモノである。


 突然空を飛んだ後、馬島に小舟を降ろされた武蔵は、目を白黒させて面食らっていた。

 三人はクルマを出て、そんな武蔵に近づいて行った。


「お、お主らは何だ!?妖怪変化のたぐいか?」

 流石の武蔵も、平常心を失いかけていた。

 無理も無い事である。


「私の名は雪子。妖怪変化のたぐいかと問われるなら、否定できないわね。それより、アナタに会わせたい女性が居るの。」 

 雪子はそう言うと、カグヤを前に出した。

「アナタ、この娘に見覚えは無いかしら?」


「なんじゃと?」

 そう言って武蔵はカグヤをじっと見る。

「…大層美しい娘ごだが、知らぬ顔だな。」 


「そんな。あんなに真剣に勝負した間柄なのに…。」

 思わず、そう言うカグヤ。

「勝負した?拙者が?貴様のような女ごと?そんな訳あるまい。」


「アナタの方から、寝ている私をわざわざ起こして、勝負を挑んできたのに…忘れるなんて酷いわ。」

「…聞き捨てならぬ事を言う女ごじゃ。それ程までに言うからには、何か証拠でもあるのかのう?」


「アナタのその身体に、思い出させてあげるわ!」

 カグヤはそう言うと、まだ小舟の中に立っていた武蔵に向かって飛びかかって行った。


 武蔵は素早く、小舟の後ろへ飛び退く。

「おう、おう、活きのイイお嬢さんだ。キライじゃないぞ。」と、まだ余裕の武蔵。


 するとカグヤは、少しチカラを使って、5m程上に飛び上がると、そのまま空中で、まるで目に見えない剣を上段に振りかぶったような姿勢を見せた。


 それを下で待ち構える武蔵は、本能的にナニかを感じ取り、思わず腰の刀に手をかけた。

 構わず、その武蔵に向かって、上空から見えない剣を打ち降ろすカグヤ。

 次の瞬間、ガキン!という金属音が、辺りに響き渡った。

 

 武蔵は瞬時に、両手で大小の二刀を抜いており、それを頭の上でクロスするようにして、カグヤの攻撃を防いだのだった。


 カグヤが打ち降ろした、見えないはずの剣は、確かにそこに有った。

 それは、こんなこともあろうかと、雪子が助手席に忍ばせておいた、オリハルコンの剣だったのだ。


挿絵(By みてみん)

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