⑥ 処遇の決定
「取り敢えず、カグヤさんの次の方針が決まるまで、ウチで面倒見てあげたら?地下2階か3階に、あなたのニンゲンコレクション用の客室が、たくさん有るわよね?どうせ一人増えても、どうということも無いでしょ?」
カグヤから、今までに体験した、その他の武勇伝を聞いた後、雪子がサン・ジェルマンに、そう言って説得しかけた時だった。
エレベーターの扉が開いて、中から村田京子が出て来たのだ。
「…もう。買い物から帰って来たら、レストランはもぬけの殻なんだもの。みんなこんな所に居たのね。一体何をして…?」
「今日から伯爵が、地下の客室に、もう一人女性を囲おうという相談が、今まとまったところなんですよぉ〜。」
由理子が、とても誤解を生み易い言い方で、状況説明をした。
そう言われた京子がベンチを見ると、見慣れない、控え目に言っても、かなり可愛らしい巫女姿の、女の子が座って居たのだった。
京子は少し考えた後、こう言った。
「…実家に帰らせていただきます。」
「ああ、京子さん、ちょっと待って、大きな誤解が!」
サン・ジェルマンは慌てて京子を引き止めた。
「ちっ。」
雪子が小さく舌打ちしたのを、京子は見逃さなかった。
「何かしら。事情が有るなら聞かせて下さる?」
帰りかけた脚を止めて、冷静に京子が訊いた。
サン・ジェルマンは、現在のややこしい状況を、彼女に必死に説明したのだった。
「…と言う訳で、別に私は側室を持とうとか、愛人を囲いたいとか、思ってませんので。私はいつでも京子さん一筋ですよ。」
「あら、そう…それなら。」
「…でも、私のことは愛しているのよね?」
「だから、雪子さんは話をややこしくしないで下さい。」
「雪子さん、アナタが過去に、私のサン・ジェルマンとどういう関係があったのかは、知らないわ。」
「…。」
「でも今は、私のサン・ジェルマンなのよ。妙な横ヤリは入れないでちょうだい。」
京子が雪子にピシャリと言った。
雪子は、それきり口をつぐんだ。
「じゃあ、取り敢えず、カグヤさんの宿泊場所はこことして…せっかくだから、誰か彼女を、名護屋の街に案内とか紹介とか、しますか?」
鷹志がそう言うと、由理子がそれを買って出た。
「は〜い。私、行きま〜す!…鷹志も一緒にね?」
「え〜っ、研究が途中なんだけど…。」
「なによ。イヤなの?」
「…行きますよ。」
「よし。決まりね!」
そう言うと、由理子は右手にカグヤ、左手に鷹志の手を握って、エレベーターに入って行った。
「じゃあ、また。のちほどね!」
元気にそう言うと、彼女は扉を閉めて、エレベーターで上がって行った。
「やれやれ。まるで嵐の後のようですね。」
サン・ジェルマンが言う。
「でも、何だか不憫ね。遥々遠くから、想い人を探しに来たのに、その人には、将来を誓い合った相手が居たなんて。」
そう言って京子は雪村を見る。
「え、僕?僕は別に悪くないよね?」
そう言って雪村は雪子を見る。
雪子は知らん顔をしている。
「まあ、でも、真面目な話、誰か彼女に似合うオトコを、探してあげたいわよねえ?」
香子がそう呟くと、皆が彼女の方を見た。
「えっ、アタシ?アタシは無理よ。愛知県の教員の忙しさ、舐めないでよね!」
「…仕方無い。やっぱり私が一番ヒマだしね。ソレ、引き受けるわ…雪村と一緒に。」と雪子が言った。
「うん、うん、それがイイよ…って、ええっ!?」
コレは雪村の悲痛な嘆き。
「また、弓子さんとの逢瀬の時間が、削られる〜。」
「タイムマシンを使えば、時間なんてアッと言う間に取り戻せるわよ。」などと、不届きな事を言う雪子であった。




