⑤ 彼女の目的
雪子のオカシナ乱入で、試合はお開きとなった。
まあそもそも、実力差がエグいので、試合そのモノに意味が無いのだが…。
例え彼女がニビルで一番の腕っぷしだとしても、雪村の強さは、文字通り"次元が違う"のだ。
闘技場のベンチでカグヤを休憩させて、サン・ジェルマンの仲間たちは、その周りをとり囲んだ。
まず話しかけたのは、やはり由理子だった。
「ねえ、どうして遠く遥々かなたから、時空を超えてまでやって来て、私のお兄ちゃんと試合がしたかったの?」
「私の種族には掟が有るのです。それは"花婿は自分より強い者を選ぶべし"という事なんです。私の故郷では、強さが全ての基準なのです。惑星一つを、難なく何百光年も移動させるチカラがあるお方なら、さぞやお強いだろうと…。」
「なるほど。」
「ですから、どんなお方か、ひと目見てみたい、という好奇心も手伝って、ここまで来てしまいました。」
「…ああ、そういう事でしたら…試合の結果に関わらず、ご期待にはお答え出来かねます。」
隣に座って休憩していた雪村が、即答した。
「どうして…ですか?」
「だって、僕、婚約者が居るから…。」
「ええっ!?」
「酒井弓子さんという、将来を誓い合った方が…。」
「じゃあ、私がその女と闘って、亡き者にしてしまえば…。」
「冗談でもヤメて下さい。でなければ、今すぐこの場で、アナタを跡形も無く消しますよ?」
そう言って笑う雪村の目はマジだった。
「はあ、残念だわ。はるばるここまでやって来たのに…。」
「お兄ちゃん、この人可哀想だよ。誰か紹介してあげなよ。」
由理子がまた無茶振りして来た。
「そう言われても…ねえ?」
雪村はサン・ジェルマンを見る。
「私?私はダメですよ。事実婚だけど、村田京子さんという、立派な奥様が居ますから!」
珍しくアタフタするサン・ジェルマン。
「あれ?中世ヨーロッパの文化では、二人目、三人目の奥様を迎えるのも、アリじゃなかったっけ?」
雪村も珍しくイジワルな事を言う。
「キリスト教的にはアウトでも、お金持ちの貴族はみんな、公然と愛人を持ったとか…。」
「私は未来思考のニンゲンなので、そういう、けしからん事はしません!」
「…でも私の事は、愛しているのよね?」
雪子が横ヤリを入れる。
「雪子さん、話をややこしくしないで下さい。」
サン・ジェルマンはもう、半泣きだ。
いつも余裕タップリなのにオモシロ〜イ。
由理子はついそう思ってしまった。
そんなみんなの様子を、香子は冷ややかに見ていたし、鷹志はただ、オロオロしていた。
「そうだ。そちらの殿方は?お強いのかしら?」
鷹志はカグヤから、ついに恐れていた質問が飛んで来て、ビクッとなった。
「鷹志はダメよ。私のモノだから。因みに私には、アナタより強いお友だちが居るわよ?」
由理子が間髪入れずにそう言って、カグヤを目で殺した。




