㉛ 後日談
ヤマタノオロチの退治で、幾つかの収穫というか、イイ事もあった。
まず、首を切り落とした後の残りの胴体だが、あっと言う間に体組織が自動分解され、消滅してしまったのだ。
おかげで巨大な腐った死体が、辺り一帯にトンデモない匂いを放つ、という事態は避けられたのであった。コレは怪獣退治の後で、地味で意外と忘れられがちだが、大きな問題なのである。
そして死体が消え去った後には、鍔のついていない、オリハルコンの剣のような、細長いヒヒイロカネが残されていたのだった。
イシュタルによると、ソレが生体兵器のバッテリーの働きをしていたということだった。ソレは通常のオリハルコンより、発散しているエネルギーが強力で、側に置いておくと、人体に悪影響を及ぼすらしい。鷹志は取り敢えずソレを、出雲大社に奉納することにした。
しかし、いつかソレは、名護屋市の熱田神宮に移送されることになると、鷹志は知っていた。
多分ソレの名は、草薙剣であるからだ。
事の顛末を受けて、流れでスサノオノミコトは自分という事になってしまったが…多分、長い歴史の中で、古代の人々が事件を話し伝えるうちに、イシュタルと自分のキャラクターを、ごちゃ混ぜになってしまったのだろう。鷹志はそう思う事にした。
…すると、さしずめクシナダヒメはユリちゃん、という事になるのかな?そう言ったら、彼女、喜ぶだろうな。なんて考えながら、鷹志はニヤニヤ笑ってしまった。
「なによ?一人でニヤニヤして。気持ち悪いわね。」
隣で香子がそう言うので、思わず鷹志は我に返った。
今はもう、帰りの時空転位の最中だった。
鷹志は、緑のビートルの運転席で、ハンドルを握りながら、思い出し笑いをしていたのだ。
「今日も充実した体験だったわ…それで次の予定だけど…。」助手席で香子が何か言いかけた時、後部座席から、由理子が必死になって、話に割って入って来た。
「今度こそもうダメ!春休みの鷹志は、ワタシのモノよ!次は雪子さんか、サン・ジェルマンと行って!」
「…あら、そう?鷹志君は…どう思うの?」
「…そうですね。そろそろカップル水要らずにしていただけると、助かりますけど…。」
鷹志は、やっとそう言えたのだった。
「分かったわ。次は伯爵か、雪子さんに頼んでみるわね。」
香子は意外にも、アッサリと引き下がった。
由理子は内心ホッとした。実は、彼女は彼女なりに、今回の一件で思うところがあったのだ。
姉の香子が、昔から読書家で博学だった事は知っていた。だから旅の間中ずっと、彼女は鷹志とよく話が合っていたのだ。
しかし自分はというと、その話の輪の中に入れなかった事が多々あったのだ。
そして、それがとても悔しかったのだった。
春休みまでに、もっともっと歴史の勉強をして、鷹志と話が合うようにするんだから!
そう心に誓う由理子であった。
今回のお話は、これで完結です。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回、第19巻にご期待下さい(>ω<)




