㉚ 鷹志の秘策
その後イシュタルは、出雲大社近くの村に寄り、鷹志から注文されたモノを、直ちに調達した。
筋力がガイア人…つまり地球人の、およそ3倍ある彼女は、かなり重量のあるその8個の物体を、軽々と目的地に運んでしまった。何しろ背中には、蒼くて大きな翼まで備えているのだ。最早、歩く必要すら無いのである。
ソレは8個の大きな樽だった。いやむしろ、このために、彼女が村人たちに急遽造らせた、大きな木製のバケツを、改造した特注品だった。
彼女はそれらを、先程生き埋めにしたヤマタノオロチの前に置くと、全てのフタを取り去った。
途端に、地酒のアルコールの香りが、辺り一面に広がったのだった。
そして彼女は、静かにその場を去り、鷹志らとともに、物陰から様子を見ることにしたのだ。
すると間もなく、地響きとともに、八つの首が瓦礫の中から持ち上がった。
それらの首は、すぐに酒樽に気がつき、少しその香りを確かめた後、全ての樽に同時に八つの頭を突っ込んで、ガブガブ酒を飲みだしたのだ。
やがてヤツは酒を飲み干すと、全ての頭が地べたに倒れ落ち、グーグーいびきをかきながら寝てしまったのだった。
「…ねっ?」と鷹志。
「いやあ、まさかホントにこうなるなんて…。」
とイシュタル。
「じゃあ、ヤリますか。香子さん、お願いします。」
鷹志の依頼を受けて、香子が精神を集中させる。
するとまた辺りの森の中から、たくさんの根やツタが伸び出して来て、ヤマタノオロチの八つの首を、全て縛りつけて、地べたに固定してしまった。
次に鷹志は、サン・ジェルマンから、もしもの時に備えてと渡されていた、オリハルコンの剣を出した。
当たり前だが、イシュタルもお揃いのモノを持っていた。
後はもう簡単だった。
二人はオリハルコンの剣で、次々と寝ている八つの首を切り落とし、ヤマタノオロチの息の根を止めてしまったのだった。
全てが片付いて一息ついた時、イシュタルが言った。
「確かキミの名は鷹志だったね。ワタシが透視したところ、キミは肉体的にも精神的にも、少しばかり賢いだけの、タダのニンゲンなのに、たいしたものだね。まさかこんなアナログな手段が有効とは…。」
イシュタルは、すっかり感心していた。
「まあ、超能力が無くても、場合によっては、やりようがある、という事ですね。」
日頃、身の周りの異能力者たちに、助けられてばかりだった鷹志は、面目躍如という気持ちであった。
「キミは我が日本の本拠地、出雲大社の恩人だよ。今後はキミを、戦争王イシュタルの名の元に、真田雪子に次ぐ"名誉アヌンナキ"としたい。そしてキミに、凄まじい王"スサノオ"の称号を与えようと思う。」とイシュタルは言ったのだった。
「それはまた、勿体なきお言葉です。」
鷹志はそう言って、恭しくお辞儀をした。
「ま、今回は譲っておくわね?」
隣で香子が、そう言って笑った。
「鷹志、やったね!」
その後ろで、由理子は小さく拍手をして、はしゃいでいたのだった。




