㉙ 八岐大蛇
丁度その時、直接イシュタルの頭の中に、天王アンからの通信が入った。
「悪いけど、今緊急の連絡が入ったの。出雲の国の、とある川の上流辺りに、アラハバキの、ひときわ大型の着陸船が現れたわ。お話の途中でごめんなさい。すぐに行かなくては。」
言うが早いか、彼女は瞬間移動で、その場から消えてしまった。
「どうする?」と鷹志。
「…そりゃあ。」と由理子。
「…行くでしょ?」と香子。
意見は全員一致となり、三人は緑のビートルに乗り込むと、直ちに出雲の国に向かった。
現場は、斐伊川の源流辺りだった。
一行が現着すると、今まさに、アラハバキの着陸船が、真ん中から真っ二つに割れて、その中からナニやらウネウネ蠢く巨大なモノが出現するところだった。
「…なに、アレ?」由理子が思わず呟やいた。
「あれは…。」と鷹志。
「…ヤマタノオロチよ。」と続ける香子。
「何故かしら。アレには、ワタシのテレパシーがまるで通じない…。」
不思議がる由理子。
「多分アレは、アラハバキによって造られた、生体兵器だよ。だってあのキングギドラだって頭三つなんだよ?なのにアレは、頭も尻尾も八つある!」
そう推測したのは鷹志だった。
地上では早速、戦争王イシュタルによって、攻撃が開始された。
巨大な蛇の化け物に、次々とカミナリを落とすイシュタル。
だが、ヤマタノオロチはびくともしなかった。
これまでの省エネ侵略を踏まえて、敵も対策済みと言う訳だ。
出雲の国と言うアヌンナキの本丸を落とすために、恐らく敵も、本腰を入れて来たという事だろう。
「彼女の攻撃は、アレに対して相性が悪いわ。」と香子。
「そうですね。助け船を出しましょう。」と鷹志。
二人だけが分かったような会話をしていた。
何だか自分だけ、蚊帳の外のような感じで、又もや、ちょっとヤな気分の由理子だった。
イシュタルは粘り強く攻撃を続けた。そして最終的には、崩した山の瓦礫で生き埋めにして、何とかヤツの足止めに成功したようだった。
鷹志は、ビートルを近くの地上に降ろすと、早速彼女に近づいて行った。
イシュタルは肩で息をしていて、見るからにかなり消耗している。
「お疲れ様です。あの、ちょっといいですか?」
「…ああ、キミか。質問なら後にしてくれないかな。今は回復の為に精神を集中したいのよ…。」
「あの、ボク、あれの退治方法を知ってるんですけど…。」
「何それ?今は冗談を聞く気分じゃないんだけど…。」
「ホントです。昔話が好きな日本人なら、みんな知っている、有名な伝説が有るのです。」
「そんな話が有るなら、是非教えて欲しいものだわ。」
そこで鷹志は、イシュタルに近寄ると、ナニやらゴニョゴニョと耳打ちした。
「…そうか。そんな手が通じるのね?」
イシュタルは眼を見張って驚いたのだった。




