㉖ 縄文時代へ
「じゃあ、早速行きましょうか。鷹志君、運転よろしくね?」
「…ああ、ハイ。」
彼は由理子のジト眼を気にしながら答えた。
三名は、毎度お馴染みの地下駐車場に行くと、今日は香子が、緑のビートルの助手席に乗り込んだ。
由理子はそれも気に入らなかった。
「みんな席に着いたわね?」
香子はそう言うと、早速、時空転位装置の操作パネルに、目的地の座標を次のように打ち込んだ。
紀元前7000年5月5日9時00分
北緯37度55分
東経139度01分
「分かりました。東北地方ですね?」
理解力の高い鷹志は、それだけ言うと、クルマを外に出し、光学迷彩をかけて垂直上昇させた。
「では、出発進行です。」
彼はいつになく"銀河鉄道999"の車掌みたいなセリフを言って、時空転位装置のスイッチを入れた。
何よソレ。ガラにも無く、緊張してるのかしら?
由理子はそう思って、それがまた気に入らなかったのだった。
到着した現場は、信濃川の河口付近の集落だった。
ビートルに光学迷彩をかけたまま、一行が上空から眺めると、地上では、ナニやらテンヤワンヤのお取り込み中のようだった。
まず三名の目に飛び込んで来たのは、巨大な着陸船だった。ソレの基本的なフォルムは、バケツを逆さまにしたような形で、その外版にはナニやらウネウネと配管やら配線やらがたくさん取り付けられていた。
香子はソレの形に、何故か既視感を覚えた。
「あっ!」彼女は気づいた。
「何よ。大きな声を出して。」由理子が突っかかる。
「あの宇宙船の形、逆さまに置いた火焔型土器にソックリじゃない?」
「…ホントだ!一番端の火炎の形を減らしたような…多分、離発着の時のロケット噴射があれば、ますますソックリになりそうですね?」
美術史料にも造詣が深い、鷹志が同意した。
「それに、コッチで縄文人たちを追い散らしているロボットの形は、まんま遮光器土偶だわ。」
彼女は尚も言及した。
彼女の言う通りだった。
良く見ると、ロボットたちは、人々を攻撃しているのではなく、捕獲しようと動いているようだった。
またぞろ、他所から来た異世界人が、ニンゲンを何処かの星に拉致して、奴隷にでもするつもりなのだろう。
「どうします?」鷹志は迷っていた。
「見ちゃったからねえ…。」由理子も迷う。
「二人とも、何を迷うことが有るの?縄文時代に史実もクソも無いでしょ?」と少しキタナイ言葉を使う香子。
「ええい、ヤリますか?」と鷹志。
「ヤリましょう。」と由理子。
「そう来なくっちゃね!」と香子。




