㉓ 可能性の未来
「ねえ、他の場所も見に行きましょうよ。名駅とかどう?」香子がそう言うと、皆も同意した。
三名はクルマに戻ると、また光学迷彩をかけて、上空から名護屋駅周辺を眺めることにした。
そこの発展ぶりは、久屋大通公園周辺の比では無かった。JRゲートタワービルを始めとする、数々の高層ビル群が、見る者を圧倒した。
「ああ、何だか、"THE21世紀"って感じよねぇ…名護屋もすっかり大都会になってしまって。」
香子は灌漑深気に言った。
「でも、やっぱり空飛ぶクルマは居ないわね。残念。」
由理子が言った。
「映画バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2の、未来予想はハズレですね。これじゃあ、ビートルの光学迷彩は解除できません。」
鷹志もそう言った。
「今、改めて思うわ。サン・ジェルマン伯爵は、やっぱり凄い人なのね?」
香子が呟いた。
「そして彼は、既得権益者からの妨害や、技術を軍事転用しようと目論むヤカラたちを恐れて、決してその発明を一般公開しようとは思わない。」
鷹志が、そう付け加えた。
「それはニコラ・テスラから学んだのね?」と香子。
「恐らく、そうでしょうね。」と鷹志。
「なあ〜に〜い?二人だけで、分かったような会話をして?何だかジェラシーだわ。」
由理子が言った。
「…ありがとう。何だか満足したわ。帰りましょうか?」
香子が話を切り上げた。
鷹志は、出発地の座標を、時空転位装置に入力した。
帰りも、もちろんあっと言う間だった。
三名は亜空間レストランに戻ると、お茶をしながら休憩した。
「35年後の未来は素敵だったわ。」
香子はウットリしていた。
「いつかあの未来がやって来るなら、私、毎日のお仕事、頑張れそうよ。」
「まあ、伯爵によると、さっき見たアレは、一つの可能性に過ぎないらしいんですけどね?」
鷹志が言う。
「未来は常に未確定。ソレは見に行くモノではなく、現在の我々が、各々の役割りを果たして、作り上げていくモノ。」
「ソレ、いつか伯爵の言ってた言葉よねえ?」
由理子が言った。
「…そうだよ?なんだよ。ツッコミのつもり?」
「ううん。でも、なんか、さも自分が考えたみたいな言い方だったから…。」
「そ、そんな事はないさ。」
その二人の遣り取りを見て、香子はクスクス笑った。
「二人、仲がイイのね。うらやましいわ。」
「そうです。ワタシたちは、ラブラブなのです。」
と由理子。
鷹志は恥ずかしそうだった。
「願わくば、35年後もそうあって欲しいものだわ。」
「もちろんです!」
自信たっぷりな由理子であった。




