⑲ ニビルに帰還
猫族の王子ミケーネの円盤は、通常の宇宙船の機能に加えて、並行宇宙と時空間の移動も可能な、優れモノである。
それ故、行きにはカグヤが、あれ程苦労して来た道程を、帰りはあっと言う間に、成し遂げることが可能であった。
彼の船に乗ってから少し雑談している間に、故郷の惑星ニビルが見えて来た時には、カグヤも、流石にびっくりさせられたのだった。
「時間的には、アナタが故郷を出発してから、一週間後になってます。丁度イイ塩梅でしょう?」
胸を張って言うミケーネに、カグヤは目を丸くして答えた。
「…これは一体、どういう仕組みなのかは…教えてもらえないのよね?」
「はい。失礼ながら、あなた方鳥族や爬虫類族、ハダカ猿族は、実に好戦的な人種と認識されています。ですから、兵器転用の恐れがあるので、教えることは禁じられているのです。すいませんね。」
「イイのよ。それは事実だもの。」
カグヤは大して悪びれもせず、むしろ誇らしそうに、そう言った。何しろ彼女は、天下の戦闘民族なのである。
「その代わりという訳でもないんですが…。」
ミケーネはクレカサイズのガジェットを、カグヤに差し出した。
「コレは?」
「ボク専用の呼び出しベルです。ボタンを一つ押して頂ければ、時空を超えて、すぐにお迎えに参上しますよ。実はコレ、由理子にも渡してあるのです。」
得意気に言う白猫に、ますます舌を巻くカグヤであった。
円盤は、惑星ニビルの大気圏に静かに突入し、カグヤの自宅前に正確に着陸した。
カグヤの両親は、玄関から出てきて驚いていたが、娘と一緒に円盤から出て来た白猫を見て、笑顔になった。彼等も猫好きだったのだ。
「確かに娘さんを送り届けましたよ。イロイロ詳しい話は、娘さんから聞いて下さいね?」
「まあまあ、遠路遥々ありがとうございます。せっかくだから、休憩がてら、お茶でもいかがかしら?」
カグヤの母はそう言ってくれたが、ミケーネはそれを辞した。
「私も一応、王子をやっておりまして。イロイロと忙しくしておりますので…ご挨拶はいずれまた。今日はコレで失礼致しますね。」
彼はそれだけ言って、そそくさと船に戻ると、動力を起動した。
「じゃあ、カグヤさん、また良きタイミングで呼んで下さいね?」
ミケーネは、最後に搭乗口から顔を出してそう言って手を振ると、扉を閉めて円盤を垂直上昇させた。
そして空の彼方に、あっと言う間に消えてしまったのだった。
「…たいした技術だな。我が国にも、是非欲しいものだ。」
カグヤの父は呟いた。
「ダメよ。お父様。軍事転用は禁止ですって。」とカグヤ。
「おお、そうだったな。彼等猫族は、平和主義者だったか。」
父はそう言って、ちょいワルな顔でニヤリと笑った。




