⑱ オメデタなのか
「イイですけど…?」
カグヤが返事をするや否や、雪子は彼女をエレベーターに押し込んで、サン・ジェルマンと共に、地下のラボへと向かった。
約1時間後、三名はエレベーターで亜空間レストランに戻って来た。
何故かカグヤは真っ赤な顔をしていた。
「…で、どうだったの?」コソコソ訊く京子。
「ビンゴよ!」
親指を立てて、コソコソ答える雪子。
「はああ。」ソレを聞いて何とも言えない表情になって、その場でのけ反る京子。
「どうしたんですか?」またまた気になる雪村。
仕方無く、雪子が彼を部屋の片隅に呼んで、小声で事情を説明した。
「ええっ?」雪村はそう言った切り黙ってしまった。
そしてまた小走りで戻って来る雪子。
「で、どうする?カグヤ。」
「…どうしましょう?」
「このまま、この名護屋テレビ塔の一室を借りて、産み育てるも良し。丁度ミケーネの宇宙船もあるから、ケプラー星系のニビルに戻って、そこで育てるも良し…。」
「…取り敢えず、両親には、報告したいです。」
「まあ、そりゃあ、そうよねえ?」
「はい。でも、この子の父親はガイア人なので、やはりこの地で育てたいです。」
「そうしてもらえると、助かるわ。この子は将来、宮本伊織になるのだから…史実を守るためにもね?」
「じゃあ、早速ミケーネ君に頼みますか?」
サン・ジェルマンが依頼役を買って出た。
交渉は直ぐに成立し、カグヤはこの後、彼の船で一旦ニビルに帰る事となった。
そうと決まったら、善は急げということで、皆で地下駐車場に降りて行った。
ミケーネが宇宙船の動力を起動し、カグヤが乗り込んだ。
「イロイロお世話になりました。当初の目標とは違う結果になったけど、今、私は幸せな気分です。」
とカグヤ。
「それはナニよりです。ご両親にも宜しくお伝え下さい。」
サン・ジェルマンが挨拶する。
「待ってるわよ?」と雪子。
「また会いましょう。」と京子。
「期待にそえなくてごめんね。」と雪村。
「いつもタクシー代わりみたいに、使ってごめんね?」
最後に由理子が、ミケーネに謝った。
「いいさ、次はデートに付き合ってくれるならね。」
小さくても凛々しい白猫は、そう言って胸を張った。
鷹志は研究室で、香子はもう帰っていた。
カグヤは皆に手を振りながら、船内に入って行った。
船外に響く低い重低音が、急に「ヴン!」という音に変化した瞬間、ミケーネの円盤は時空ジャンプに突入し、皆の目の前から消えてしまったのだった。
「行っちゃったわね。」と京子。
「あの子が輝夜姫で、卑弥呼で、アヌンナキの一柱とはねえ。」と雪村。
「その上、あの宮本武蔵のパートナーとして、これから子どもを産むのよ。全く、マルチな活躍にも程があるわよ。何だか、もう…ねえ?」と雪子。
最後にそれを聞いて、その場のみんなで、大きなため息をついたのだった。




