⑰ 猫王子再び
三人がエレベーターから出ると、いつものメンバーが、亜空間レストランに揃って居た。
いや、むしろいつもより、少しばかり賑やかだった。
ソレはやはり、ゲストの猫王子のせいだろう。
彼はすっかり、由理子の事が気に入っていた。
そのせいで、こうして呼ばれもしないのに、遊びに来るようになったのだ。
「ただいま。今、帰ったわよ。あら、何だか賑やかじゃない?」
雪子にそう言われて、話に夢中になっていた皆は、やっと振り返った。
「おお、お帰りなさい。お疲れ様。首尾良く行きましたか?目的は果たせましたか?」
サン・ジェルマンが、労う。
「ええ、お陰様で。ビートルの貸し出し、ありがとう。助かったわ。やっぱり、生身のタイムトラベルは疲れるし、今回は人数も多かったから…あら、ミケーネ君、お久しぶり。」
「雪子さん、こんにちは。えへへ。また来ちゃいました。あれっ?ソッチは知らない方だな?」
二足歩行の、未来チックなデザインのツナギを着た、カワイイ白猫が答える。
「はじめまして、カワイイ猫さん。ワタシはカグヤ。カグヤ・イシュタルよ。惑星ニビルから来たの。昔はこの星で、輝夜姫って呼ばれたのよ。」
カグヤはその場にしゃがみ込んで、ミケーネに挨拶する。
「これはこれは、はじめまして、姫。私の名はミケーネ。一応、猫族の王子をしてます。」
「最近、遊んでばっかりだけどねえ?」
横からメイド服の由理子がチャチャを入れる。
その流れで、三人で楽しいお喋りが始まった。どうやらカグヤも猫好きなようだった。
その様子を確かめて、雪子がコッソリとサン・ジェルマンに近寄る
「ねえ、ちょっと相談が有るんだけど…。」
彼女は彼にコソコソ耳打ちする。
「なんです?改まって。」
「妊娠検査薬の在庫はあるかしら?」
「…ええ、下のラボに行けば幾らでも…って、ええっ!?雪子さん、オメデタなんですか!?」
「しっ、静かに!声のトーンを落として!」
尚もコソコソ話す雪子。
「私じゃなくて、カグヤが、ちょっと旅先で、愛しい方と一夜を共にしたのよ。」
「…たった一夜のハナシですよね?」
「でも、ニビル人のフィジカル・スキルは、私たちガイア人の、三倍なのよ。だから、妊娠検査薬の反応期間も三倍早いはず。」
「ああ、ナルホドって、ええ!?」
「だから、声が大きいって!」
「何ですか?二人して。また、良からぬことを企んでいるのかしら?」
村田京子が気にしだした。
サン・ジェルマンが仕方無く、京子にも事情を話すと、彼女は「まあ…。」と言った切り、言葉を失った。
「どうしました?」
次に、雪村まで話に加わろうとした。
「雪村はイイの!アッチで、みんなと楽しくお喋りしてなさい!…そうだ。アヌンナキに会った話をしておいてね。」
もう際限が無いので、雪子が体よく彼を追い払ってしまった。
「はあい。」
納得行かない顔で、雪村はみんなの話の輪の中に入って行った。
「カグヤさん、ちょっと…。」
次に雪子は、コッソリ彼女に手招きした。
「はい?」怪訝な顔のカグヤ。
「今から、私とサン・ジェルマンと一緒に、ちょっと地下のラボまで付き合って下さるかしら?」




