⑯ カグヤの子ども
「…そして、生まれて来るこどもの名は、宮本伊織で確定なのよ。」
「…そう、なんですね?」
次から次に押し寄せる事実に、カグヤは最早、考えることを放棄しつつあった。
「…ほら、びっくりし過ぎて、すっかり参ってしまっているじゃない。まだほんの小娘なんだから、あんまり若いアタシをイジメないでね?」
戦争王は雪子に言った。
「はい、はい。」
それに対する雪子の返事は、あくまでも軽いものだ。
「…さて、今回やりたかったイベントは、これで終了よ。お二人さん、帰るとしますか?」
雪子にそう言われて、我に帰るカグヤと雪村であった。
「それじゃあ、そろそろお暇するわね、アヌンナキの皆さん。」
「ああ、またいつでも来なさい。鳳凰様…雪村君もな?」
天王アンにそう言われ、雪村は少し照れくさそうにしていた。
「僕はボクです。そんなに大したモノではありませんから…。」
「惑星一つ、遥か彼方へ動かしたんだ。そのチカラを誇ってもイイ。大したモノだよ。少なくとも、我等7柱のチカラを持ってしても、出来ない仕業だ。」
大地王ニンフルサグが言った。
「サヨナラ、若いワタシ。この先、どうなるかは知ってるけど、一応言っておくわ。元気でね?」
「はい。先行き不安だらけですけど…何とか頑張って生きます。未来のワタシもお元気で。」
年齢の違う二人のイシュタルは、エールの交換をした。
三人はもと来た道を戻り、城門を出てビートルに乗り込んだ。
今回も、身長2m級のアヌンナキの面々が、ゾロゾロと全員見送りに来た。
「流石に、気が引けるわね?」
運転席の雪子が言った。
「カグヤさん、みんなに手を振りましょう。」
助手席の雪村が、後部座席を振り返って言った。
垂直上昇するクルマから、見送りの面々に向けて手を振る二人。
やがてシルバーのビートルは、時空の彼方へ消えて行ったのだった。
「ホントは鳳凰様に、イロイロとお願いごとがあったのでしょう?」
知恵王エンキが天王アンに言った。
「またいつでも逢えるさ。あの真田雪子が居るかぎりな。」
天王はそう答えたし、本当にそう思っていた。
雪子たちを乗せたクルマは、無事に久屋大通の地下駐車場に戻って来た。
すると、見覚えのある、茶色とオレンジのツートンカラーの円盤型宇宙船が、お行儀よく、そこに停めてあるのが見えた。ただし、クルマ2台分のスペースは、使われていたのだが…。
「おっ、ミケーネ君が遊びに来てるみたいだね?」
雪子が二人に言った。
カグヤがキョトンとしているので、雪村が補足した。
「猫族の王子様だよ。妹の由理子の友人なんだ。カワイイ白猫なんだよ。」




