⑫ 次の目的地へ
「…それでムサシが61歳になったら、彼を死んだことにして、アナタの故郷、ニビルに連れて帰ってもイイわよ。」
「ホントですか!?」
「大丈夫、私に任せて。」
カグヤにそう言うと、雪子は少しワルイ笑顔を見せた。
「それじゃあ、ムサシさん、今日のところはこれでお暇するわね。」
「おう。次の再会を、楽しみに待っているぞ。カグヤ、それまで達者でな?」
「ムサシ様も。」
カグヤは名残り惜しそうにしながら、洞窟前にムサシを残し、ビートルの後部座席に乗り込んだ。
雪村も助手席に乗ったのを確かめると、雪子はクルマを垂直上昇させたのだった。
そして雪子は直ぐに、次の目的地の座標を打ち込んだ。
雪村がそれを隣から覗き込んで、ギョッとしていた。
「…あの、それ、入力した数値、合ってますか?」
「もちろんよ。どうかしたの?」
「…いや、紀元前2万年近くだから、イイのかなって。」
「大丈夫、心配しないで。それに実は、次の目的地の主役は、アナタなのよ。」
「ええっ?」
「うふふ…。乞うご期待!」
またまたワルイ笑顔の雪子である。
現地到着まで、体感で少しかかりそうなので、徐ろに、雪子が話し始めた。
「カグヤさん、アナタたちは、惑星ニビルで、色濃く鳥の因子を残しながら、霊長類に進化した一族なのよね?」
「はい。ご先祖様からは、代々そう言い伝えられています。」
「対して私たちニンゲンは、惑星ガイア…つまりこの地球で、猿の因子を残しながら、霊長類に進化した一族なのよ。」
雪子の話は続く。
「でも結果的に、遠く離れた場所で進化したはずの二つの種族は、ご覧の通り、とても似通った形態に落ち着いたのよね。コレを専門用語で、"収束進化"と言うらしいんだけど、ナニかそれ以上の、造物主の意思のようなモノを感じるのよね。」
「なるほど。サメとイルカのようなモノですね?」
雪村が口を挟んだ。
「そう、それ以上よ。多分、遺伝子レベルでも、相当近いのではないかしら。だから、仮に交雑すれば、高確率で雑種が生まれると思うのよ。」
雪子はそう言うと、チラリとカグヤの方を見た。
「因みに、フィジカル的なポテンシャルは、今まで見たところ、ニビル人は地球人の、およそ3倍といったところかしら。」
「…まるで、シャア・アズナブルですね?」
「なあに、それ?」
「ああ、すいません。ガノタにしか分からない事を、つい言ってしまいました。」
「…まあ、いいわ…話を戻すと、多分それは、彼等の環境が私たちよりも、戦闘を日常的で身近なモノとしているからよね。そして恐らく、同じ理由で、子どもの成長速度も、私たち人類より、遥かに速いはず…。」
「それって、まさに輝夜姫の…。」
雪村が何か言いかけた時、ビートルは目的の時空に到着したのだった。




