Happening
最近忙しくて・・・。スミマセン
こんな調子で無駄に緊張を重ねた結果、翔はようやく机に向かうことができた。
とはいえ、環境が変わっただけで、やること自体はいつもと同じだ。
分からないところがあれば野々花に聞き、野々花は少し考えてから丁寧に説明する。
ときどき「ここはね……」と指でノートをなぞる仕草が入り、翔はそちらに意識を持っていかれそうになるが、必死に目を逸らした。
(集中しろ、俺)
そうこうしているうちに、いつの間にか時計の針は昼を回っていた。
「そろそろ休憩にしよっか」
野々花がそう言い、軽く手を叩く。
そのまま近くにいたメイドを呼び、昼食の準備を頼んでいた。
料理ができるまで少し時間がかかるらしく、その間に屋敷を案内することになった。
広い廊下を歩きながら、翔は内心ずっと落ち着かなかった。
(でかい……静か……落ち着かねぇ……)
そんな中、いくつも並ぶ扉の一つが、なぜか妙に気になった。
特別な装飾があるわけでもないのに、視線が引っかかる。
「なあ、この部屋って何の部屋――」
言い終わる前に、翔は何気なく扉に手をかけてしまった。
開いたのは、ほんの一瞬だった。
淡い色合いの家具、整えられた机。
壁際には写真立てのようなものが見えた――そこに誰かの写真が入っていた気がした、その刹那。
「ち、違っ――!!」
バタン、と勢いよく扉が閉められた。
「ちがうの! 今のは、その、えっと、その部屋は、その……!」
野々花は顔を真っ赤にし、両手をわたわたと動かしながら、誰にも責められていないのに必死に言い訳を始めていた。
「いや、その……今のは開けるつもりじゃなくて、ほんとに、その……!」
(……)
翔は一瞬、言葉を失った。
――正直に言うと。
(……可愛い)
そう思ってしまった自分に、内心でかなり動揺する。
必死に隠そうとしている様子も、焦りすぎて何を言っているのか分からなくなっているところも、
全部ひっくるめて、どうしようもなく。
(やべぇ……)
翔は咳払いを一つして、視線を逸らした。
「だ、大丈夫だから。
俺、何も見てないし、何も聞いてないし。ほんとに」
そう言うと、野々花は一瞬きょとんとしたあと、安心したように肩の力を抜いた。
「……ほんと?」
「ほんと。だからその、気にすんな」
野々花はまだ少し疑わしそうな顔をしていたが、やがて小さく頷いた。
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そのまま二人は何事もなかったかのように勉強部屋へ戻る。
少しして、ちょうどいいタイミングで料理が運ばれてきた。
「案内、ちょっと時間かけすぎちゃったね」
野々花が苦笑しながら言う。
「まあ……いいんじゃね」
翔はそう答えつつ、先ほどの光景を思い出さないように意識を切り替えた。
この時の二人はまだ知らない。
同じ頃、陽介たちが新たな仲間と出会っていることを。
陽介たちが会ったのは、翔や野々花”の”仲間です。




