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創造神は救いたい  作者: ヒヨコのピヨ


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野々花の今まで②

まさか野々花視点が3話分になってしまうとは。流石に予想外でした。

「……お、おはよう、陽介くん」


野々花は一瞬だけ喉を整えてから、そう声をかけた。

相手の反応を見る前に、まずは自分の声が震えていないかを確かめる。落ち着いているかどうかを探るつもりだったのに、言葉はほとんど反射のように口をついて出ていた。


「おはよう、野々花」


返ってきたのは、いつも通り低く、静かな声。

妙に張りつめた感じも、焦りもない。その声音を聞いた瞬間、胸の奥で何かがすとんと落ちた。


——やっぱり。


それだけで、十分だった。

野々花はその場ではそれ以上踏み込まず、昼休みに改めて話しかけようと心の中で決めた。

___________________________________

昼休み。

ざわつく教室の中で、野々花は少しだけ躊躇してから陽介の席へ向かった。


「ねえ、陽介くん。一緒にお昼、どう?」


もちろん、本当の目的は別にある。

ただ、露骨に切り出すほど自分は器用じゃない、とも思っていた。

一瞬だけ顔を上げた陽介は、何かを察したように視線を逸らし、それから短く答えた。


「いいよ。座りなよ」


拍子抜けするほど、あっさりした許可だった。

野々花は向かいの席に腰を下ろし、弁当箱を開ける。


しばらくは、箸の音と周囲の話し声だけが流れた。

沈黙が長くなるほど、言い出すタイミングを逃してしまいそうで

——野々花は意を決して口を開いた。


「陽介くんって、みんなより落ち着いてるよね」


言い終わると同時に、視線は自然と下へ落ちた。

正面から見られるのが、少し怖かった。


「そうか?」


短い返事。

それ以上続ける気はなさそうで、野々花は内心で小さく息を吸う。


「なんか……こういうの、知ってたとか?」


探るような言い方になってしまったのは、自覚している。

誤魔化されるか、はぐらかされると思っていた。

けれど——


「野々花は、どう思ってるんだ?」


意外にも、問い返された。

野々花は箸を止め、深く息を吸ってから考えをまとめる。


「……みんな、ソワソワしてるじゃん」


言葉を選びながら、続けた。


「なんとなく、能力もらったのって自分だけじゃないんだろうなって思ってる。

だって、さっきから“変な感じがする”って言ってる子、いっぱいいたし」


少しだけ間を置いて、さらに言葉を重ねる。


「でもね……誰も“自分は能力をもらいました”って言わないの。

多分、神様からの言いつけなんじゃないかなって。

“他人に言っちゃダメ”って」


「神様」という単語が出た瞬間、

陽介の肩から、ほんのわずかに力が抜けたように見えた。


——今の、気のせい?


そう思った矢先、


「そうか。教えてくれてありがとう。……でも、今は俺のことを言うつもりはない」


きっぱりとした言葉が返ってきた。

少し冷たくも聞こえたけれど、その瞳の奥には、微かな焦りが滲んでいた。

頼られていない。

そう思うと、胸がちくりと痛んだ。


でも——きっと、陽介なりの配慮なのだろう。

そう自分に言い聞かせ、野々花は顔を上げて笑った。


「ううん、平気。……でもさ、手伝えることがあったら言ってね?」


そのやり取りを、少し離れた場所で見ていた翔が、なぜか危なっかしい笑みを浮かべていたのが目に入った。

理由はわからないが、背中が少し寒くなる。

___________________________________

翌日、水曜日。

教室の扉が勢いよく開き、陽介が珍しく駆け込んできた。


授業中の様子を見る限り、顔色は前よりマシだ。

眠そうではあるが、どこか張りつめた集中が感じられる。

悩みは軽くなったようにも見えるが——その代わり、忙しそうだった。


昼休み。

陽介は机に肘をつき、ぼんやりとパンをかじっていた。

気づけば、また彼のところへ来ている。

時間があると、どうしても足が向いてしまう。


「ねぇ陽介くん。最近すごく疲れてるよね?

なんか忙しそうに見えるけど……大丈夫?」

「え、あぁ……まあ、色々あってな」


曖昧な返事。


けれど「何もない」と切り捨てられるよりは、まだいい。

これ以上踏み込めば、同じ答えが返ってくるだけだろう。

それに、無理に聞けば、彼の負担になってしまうかもしれない。

そう思い、野々花はそれ以上追及しなかった。


そこへ翔が割り込んできて、

同じような質問を陽介に投げかける。

しばらくやり取りが続き、

納得したのか、諦めたのかは分からないまま、翔は引き下がった。


帰りのホームルーム。

担任の一言で、教室の空気が一気に重くなる。


——試験は、1週間後。


主に男子から、露骨に嫌そうな声が上がった。

早く帰りたいだの、面倒だのと言いながら、

結局は自分たちで帰りを遅らせていることに気づいていない。

担任は必要事項だけを告げると、

さっさと号令をかけて教室を後にした。

___________________________________

家に帰った野々花は、荷物を置くとそのまま土手へ向かった。

もし知り合いに会ったら、

「外の空気を吸いに来た」と言うつもりだ。


——本当は、家にいたくなかっただけ。


でも、それを口にすることはできない。

夕方の風に髪を揺らしながら、

野々花はゆっくりと歩き続けた。

本当に、続きすぎだぞとか思ったらコメントで言ってね?

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