ある作戦
今日のもう一つの投稿は夕方行います。
ちょっと待っててネ
勉強会を始めて一時間ほど経った頃だった。
突然、玄関の方から勢いよくチャイムが鳴り響いた。
「あれ、早かったな……?」
陽介がそう思って玄関へ向かうと
──そこに立っていたのは、野々花の両親だった。
ふたりとも、ただ事ではないという顔をしている。
とくに父親の方は、今にも怒鳴り出しそうな鋭い目つきだ。
「……あの、何か──」
陽介が言い切る前に、父親が低い声で遮った。
「聞いたぞ。ウチの娘が“男二人の家で勉強会”ってどういうことだ?」
隣で母親も腕を組み、強めの口調で睨むように言った。
「野々花、女の子なのよ? なのに男の子の家に一人で行かせるなんて、普通じゃないでしょう」
“あ、これが野々花の急ぎの用事か…”
と陽介は察した。
とっさに否定する。
「ち、違います! 変なことなんてしてません! 本当にただの勉強だけで──」
だが、父親は鼻で笑った。
「そんなの、誰だってそう言うだろ。連れ込まれて無理やり言わされてる可能性だって──」
「いやいや! 本当に違うんですってば!」
必死に説明しても、まるで聞いてもらえない。
そして、タイミング悪く(いや良く?)リビングから顔を出したユラナスが、ひょこっと現れた。
「どうしたの、陽介?」
──救世主が現れた瞬間だった。
陽介に電流のようなひらめきが走った。
「あ、あのっ! 昨日も今日も、この子も一緒なんです! “女の子がひとりだけ”ってわけじゃないんですよ!」
完全ノリと勢いの “ユラナス女子設定作戦” である。
父親と母親は一瞬ぽかんとした表情になる。
母親が眉をひそめてユラナスを見た。
ユラナスは意図を理解しているのか理解していないのか分からない微妙な顔で、ただ静かに会釈した。
「……え? この子も、その……女の子……なの?」
「そ、そうです! はい!!」
(※陽介、全力で推し通す)
ユラナスも困りつつも補足してくれた。
「私は陽介とよく勉強してる。昨日も一緒にいました」
声がやけに澄んでいるのが幸いしたのか、両親の表情が少しずつ落ち着いていく。
そこへ──タイミングを見計らったように、野々花が後ろから出てきた。
「お母さん、お父さん……本当に勉強だけだよ。陽介くんにも翔にも、そんな失礼なこと言わないで」
必死に訴えるも、両親は最初は「言わされているんじゃ」と疑っていた。
だけど三人+ユラナスがそれぞれ真剣に説明を重ねていくにつれ、ようやく態度が緩んでいった。
父親は深いため息をつき、腕をほどいた。
「……わかった。今日は帰る。だがな、野々花。お前が嫌な思いしてないか、それだけは確認したかったんだ」
母親も目を細めて、娘の肩に手を置く。
「心配なんだからね。本当に気をつけなさいよ」
「……うん。ありがと」
やっとのことで納得したらしく、両親は玄関から退場していった。
扉が閉まり、見た目からして高級そうだった車のエンジン音が遠ざかっていった。
瞬間──陽介、翔、ユラナス、そして野々花の四人は、その場にドッと疲れが出て崩れ落ちた。
「……マジで心臓に悪いんだけど」
「陽介、よくあれ思いついたね……」
「助かったよ、ユラナス……!」
なんとか事態は収束したのであった。
直後、見た目からして高級そうだった車のエンジン音が遠ざかっていった。
今更ながら、ユラナスを可愛いキャラにしといて良かったと思ってます。




