デモンストレーション
朝のホームルームが終わったあと、陽介はユラナスに文句を言おうとした。
だが、ユラナスはすでに生徒たちに囲まれており、質問攻めの渦中。近づく隙がまったくない。
仕方なく諦め、そのまま午前授業が終わった。
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——そして昼休み。
いつものようにコンビニ弁当を開けたところで、
野々花、翔、そしてユラナスが揃ってやってきた。
野々花と翔は「聞きたいことあるんだけど」という顔。
ユラナスは「一緒にいたい」オーラを全開にしている。
ちなみにユラナス、午前中は休み時間すら質問攻めだったらしく、どこか疲れが滲んでいた。
……俺の顔を見た瞬間だけ、疲れが吹っ飛んだように見えたが。
とりあえず、本題をぶつける。
「……で、どういうつもりだお前」
ユラナスはわずかに悲しそうに目を伏せ、静かに答えた。
「“関係がある”と示唆しておいたほうが、最初から接触しやすいと思ったから」
そこで一拍置き、小さく続ける。
「……でも、“あの気持ち”が嘘かと聞かれても……うなずける自信、ないけど」
その言葉を聞いて、陽介は思わずため息をついた。
野々花と翔も「やっぱりか」という反応で肩を落とす。
陽介は諦めの気配を漂わせつつも、翔と野々花にはまだ質問が残っている。
「まず、お前……本当に協力者本人なのか?」
「はい。でも、一応“監視もしろ”と言われています」
「なんで学校にまで来たの?」
「陽介くんの近くにいたほうが、やり取りしやすいから。ついでに、監視」
「で、能力は? 言える範囲で良いから」
「あと先生どうやって説得したの?」
翔と野々花が交互に質問する。
ユラナスは疲れた顔のままでも丁寧に答えていた。
…さすがに最後の二つは俺が止めたが。
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放課後。
野々花たちとは一度別れ、陽介は自転車を取りに駐輪場へ向かった。
そこには、当然のようにユラナスが立っていた。
「……なんでいるんだよ」
「同じ移動手段のほうが、あとをつけやすいから」
悪びれもせず言われ、陽介は額を押さえる。
結局、家までついて来られた。
ただ、せっかくなので——
翔たちが気にしていた、能力の説明を聞くいい機会だと思い勉強会に誘ってみたところ、
ユラナスは「陽介くんが望むなら」とあっさり承諾した。
ついでに「どうして俺なんかに好意を持ったんだ」と聞いてみたが、そこはやんわりかわされた。
(いや、絶対ごまかしただけだろ……)
そんなことを考えていると、玄関のチャイムが鳴った。
翔と野々花だ。
「よーし、始めますか。勉強会……ついでにユラナスの再自己紹介タイム」
リビングに移動すると、ユラナスは静かに姿勢を正し、淡々と語り始めた。
「……あらためて。ユラナスです。陽介くんの……協力者、です」
野々花が小声で「やっぱ声きれい……」と呟く。
そして、能力の説明に入った。
「ぼくの権能は二つ。【時空間停止】と【解析眼】。どちらも、主から授かりました」
翔が食い気味に聞く。
「【時空間停止】って……そのまんま止める感じ?」
「はい。半径数メートル以内の“時間”と“空間”を、一定時間だけ凍結できます。動けるのはぼくのみ。
極端に言えば、時間停止中は老化しない。空間停止中は老化する、という違いです」
「……やべぇ……」
野々花が口を開けて固まった。
ユラナスは続ける。
「【解析眼】は対象の情報を視認できます。能力の系統、危険指数、状態、嘘と本音の判別など……情報系なら色々と」
陽介は疑問を挟む。
「やっぱ時間停止のほうが負担デカいのか?」
「陽介くん、正解です!」
「あと空間停止って、思考とか感覚は残るんだよな?」
「はい」
このやり取りを見て、翔と野々花は揃ってため息をついた。
「……お前ら、疲れんの早くね?」
「原因はどう考えてもお前の人間(?)関係だろ」
「陽介くんの理解度が普通じゃないんだよ」
”人間”と言うことに躊躇いを覚えていそうだったのは、能力を陽介に与えたやつが人間と言っていいのか分からなかったからだろう。
そんな掛け合いのあと、ユラナスがそっと陽介を見つめる。
「……あの、【時空間停止】のデモンストレーション……見たいですか?」
その瞬間、翔と野々花の眼が輝いた。
二人の視線が陽介に突き刺さる。
「「見たいに決まってるだろ(でしょ)!!」」
陽介は頭を抱えた。
(……なんでこうなったんだ俺の生活)
「ユラナス」は、天王星から取りました。




