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創造神は救いたい  作者: ヒヨコのピヨ


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19/36

決断

今日は2話更新の日です。続きも楽しみに待っていてください!

■■■■の姿がふっと空へ滲むように消えると、通学路にはいつもの風が戻った。

ざぁ、と木々が揺れ、車の走行音が遠くで響く。

さっきまでの静寂が嘘みたいに世界が動き始める。

陽介はしばらくその場に立ち尽くしていた。

「……なんだったんだ、アイツ……」

声に出してみても答えは返ってこない。

空は薄曇りのまま、静かに広がっているだけだった。

しばし呆然としたあと、陽介は自転車のハンドルを握り直し、ゆっくりと家へ向かってこぎ出した。

___________________________________

家に着くと、日常は何事もなかったかのように続いていた。

夕飯を取り、風呂に入り──

そして自室に戻る。

机には部活の資料と、今日決めたゲーム企画のメモ。

いつもならそれを見ると自然と気分が上がるはずなのに、今日はどうしても意識がそっちに向かない。

ベッドに倒れ込むと、天井をぼんやり見上げる。

そして、脳裏によみがえってくる。

■■■■の、あの静かな声。


――君は、世界を揺らしつつある。

「……揺らしつつある、ね」


呟いた言葉が空気に溶けていく。

世界を? 自分が?

そんな大層なことをしているつもりなんてなかった。なにせ、自分がやっていることと言えば、能力を配るか悩んでいるだけなのだから。配っているわけでもないし、勿論それのせいでなにか起きているわけでもない。

それでも、あの観察するような視線と言葉には、妙な現実味があった。

一瞬、()()という単語が頭をかすめたが、振り払った。()()が過去にさかのぼれるわけがない、と。

そこまで頭に浮かんで、もっと重くのしかかってくるもう一つの声。


――配ればいいんだ。


アイツのあの台詞。


「……配るだけで、全部解決するわけじゃないだろ」


陽介は頭を抱えた。

配ったら、それはそれで新しい事故や暴走の原因になる。

でも、配らないで放置しておけば……

アイツに、いずれ世界を滅ぼされる。

どっちにしても放ってはおけない。


「……はぁ……どうすりゃいいんだよ……」


何度もため息をつきながら、陽介は枕に顔を埋めた。

しかし、睡魔のつま先さえも見えなかった。


(配るべきなのか……?でも、どう配る?誰に?どんな基準で?)


頭の中で同じ思考がぐるぐる回る。

その果てに、ようやくひとつの考えが浮かんだ。


(……ルールだ)


配るにしても、ただ与えるだけじゃ駄目だ。

暴走しない仕組み、使いすぎない制限、守らせるための枷。

それがあれば……少しはマシになる。


「そうだ……能力そのものに“制限”をつければ……」


ようやく、自分の胸にほんの少しだけ落ち着きが戻ってくる。

能力を配る。

けれど、ただばら撒くんじゃない。

きっちりとしたルールを作り、能力として配る。

それが唯一の妥協点であり、答えなのかもしれない。

陽介はゆっくりと目を閉じた。


(……明日、考えをまとめよう)


ようやく眠気が訪れはじめる。

世界を壊すか、守るか。

その分岐点にいる自分を自覚しながら、陽介は静かに眠りへ落ちていった。

■■■■に付いての考察、コメントで教えてください!(コメントは、ログインしていなくてもかけます。)

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