最終話 本物の家族
穏やかな昼下がり。
そんな言葉が似合う時間をその家族は一緒に過ごしていた。
家族はそれぞれが夢を見つけ歩き始めていた。
ドラアグは、絶滅に瀕している竜の一族を救うべく時折出かけては、世界中に散り命を狙われ続けている竜と会い、竜と人の共存の道を探し続けていた。
リリは森に閉じこもるエルフ達の中で、開国すべきだと考える若者たちを連れて、国際交流の場を設けエルフの国を変えようとその受け皿となっていた。
ボボはドワーフ以外にも弟子を取り技術の継承を、シュラは世界中に保護と教育の充実した孤児院の設立を、ジャムは魔族の地位向上のために魔法に関する論文を書き続けていたし、リィンは心を学ぶべく他の古代文明の人形達と共に福祉活動を始めていた。
ニアは最強の冒険者になろうと仲間を募り冒険の旅に、ユウは近くの街の学校で友達をいっぱい作って一生懸命勉強することを頑張っていた。
だが、どんなに忙しくても彼らにはルールがあった。
必ず、家族の時間を作るというルールが。
今日はみんなでピクニックをする日。
ドラアグとリリは世界中巡り見つけてきた酒とお菓子を広げ、楽しそうにボボ達と杯を交わす。それをちくりと注意しながら、作ってきた自慢の料理を並べるのはシュラとリィン。ジャムは、久しぶりに会えて大騒ぎをしているニアとユウに絡まれうっとおしそうに眉間に皺を寄せてはいたがよろこびは隠せず、口をもにゃもにゃとさせていた。
この家族を繋げた張本人ザクスは、妻となったアンジェに強制的にさせられた膝枕の状態で楽しそうに笑う家族を見ていた。
「みんな、しあわせそうですね」
「ああ、ところで、アンジェ、この状態はちょっと家族にはずかし」
「駄目です。今日はわたくしのいう事を聞くという約束ですよね?」
笑顔のまま、問答無用に押さえつけるアンジェを見て、ザクスはシュラに似てきたなと苦笑いを浮かべ、大人しくアンジェの太ももに頭を置き続ける。が、ふと気になって視線を動かす。
「おなか、少しだが大きくなってきたな」
「ええ、楽しみです。あなたとわたくしの子」
ザクスはそれ以上何も言わない。『本当に俺の子なのか?』という疑念は少しもない。
彼女を心から愛し、心から信じていたから。
穏やかな風がザクスの頬を撫でた。
ザクスの瞳の中には家族がいた。
誰一人血のつながっていない家族。
奴隷として買った家族。
裏切れない奴隷である家族だから裏切らなかった自分はもういない。
ただただ、彼ら彼女らとの思い出が、愛情が、自分を裏切れないようにさせるだけ。
「ザクスにいちゃん! またお客さんだよ! 今日はドラアグじいちゃんを連れていこうとする竜のお客さんっぽい! 今までで一番強そうな竜!」
誰よりも感覚に優れたニアが家族の誰ももっていないかわいい獣耳をぴくぴくさせながらザクスに告げる。
「やれやれ……大切な家族の時間を邪魔するとは。許しがたいな」
ザクスは立ち上がり、家族に向かって笑いかける。誰もがザクスの言葉にうなずき、にやりと笑う。
「ザクス兄ちゃん、みんな、がんばれ!」
みんなに愛され、みんなを愛している末っ子ユウが応援の言葉をかけると、大切な義姉であるアンジェとそのお腹の新しい家族を守ろうとてててと傍に駆け寄り、ふんすと鼻息を荒くする。
その姿を見て、家族たちは目を見合わせ再び笑う。そして、肩を並べ歩き出す。
「さあて、どんな愚か者だ? 俺の家族を狙うなんて……」
ザクスは笑う。身体中から溢れてくる力、絆の力を感じて笑う。
「みんなは俺を信じてくれている。だから、俺はみんなを信じる。俺はそんな家族を守る、絶対に!」
最強で最高の本物の家族がそこにいた。
悪役貴族、奴隷落ち裏切られ者達と家族になる~前世今世の家族だけでなく神にさえ裏切られた俺は、絶対に裏切れない奴隷たちと家族になります~ 完
お読みくださりありがとうございました!
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