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第16話 最悪な神の転落

 その白い神は双子だった。

 弟である白い神は姉である白い女神が嫌いだった。


 世界の全てを救おうとする偽善者である姉が嫌いだった。

 だから、弟は彼女の全てを否定する為に最強の一族を作ろうとした。


 ただただ血の継承を続け、時に世界を破壊する一族。


 弟は姉の守る世界を時折破壊し心を満たしていた。


 だが、それでも姉は世界を守ろうとし続け、弟を苛立たせた。


 そんな時、一つの魂を見つける。


 最も近しい存在である家族に裏切られたボロボロで歪んだ魂だった。


 弟はその魂を見て嗤う。


 あの魂をもっともっと歪ませて、姉の信じる絆というものを否定してやろうと。


 裏切られ絶望し、世界を滅ぼす復讐者を生み出してやろう、と。


 弟は、その魂に力と憎しみを与えた。

 だが、弟は気づいていなかったその魂には憎しみを越える家族への飢えがあることを。




『さて、我々に許可なく外から魂を連れて来た罪をお前はどう償うつもりだ』


 弟は、震えていた。神の一族に囲まれ、責められるような目を向けられていたから。


『わ、わたしは、ただこの世界は弱肉強食であるべきだと』


『そんなことは聞いていない。お前は他の神の領域を犯した。そのことについてどう考えているのかを聞いている』



 父とも言える主神の言葉。その言葉は彼にとって何よりも重く、何よりも従わねばならない。

 だが、何も思い浮かばない。何故なら、彼はただ姉がきらいでしただけだったから。


『ふう……お前の身勝手な振る舞いも何か考えがあっての事ではないかと世界の為に働き続けるお前の姉が庇ったから見逃してやっていたが流石に今回は許せることではない』


 だいきらいな姉に庇われていたと知り、弟は姉に対しお門違いの憎しみを向ける。


 姉はただただ可哀そうなものを見る目で、同情の目で弟を見ていた。それが何より弟には許せなかった。何故自分のいう事を聞かずに世界を守ろうとし続ける姉が皆にちやほやされるのか弟には分からなかった。


 そう、弟は分かっていなかった。神を、神の一族を信じる気持ちを繋ぎとめようと世界を守り続けている姉の思いを弟は分かっていなかった。


『無限の地獄で暫く頭を冷やせ、そして、己のしたことを反省するがいい』


『はあ!? なんで僕が、いやだ! いやだぁああああああああああ! もっと、もっと、壊すんだ! 僕は、僕はまだ! あ、あ、ああああああああああ!』



 主神の言葉に従うように門が開かれ、彼は吸い込まれていく。

 その中から聞こえたのは、幻聴か、それとも。


『君の願いは一生叶わない。ぎゃは、ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』



 闇へと落ちていく中で、その神は誓った。こんな屈辱を味合わせたあの男を絶対に許さないと。


 一人ぼっちの牢獄の中で炎に焼かれ泣き叫びながら、一人の男を不幸のどん底に落とし嘲笑おうとした神はただひたすらに男と姉への罵詈雑言を吐き続けた。

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