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第15話 最高の家族

「バカな……馬鹿なぁああああああ!」


 男の笑みが初めて崩れた。男は信じていた。『あの方』を。そして、自分達に流れる白い血が最も優れたものだと。

 だが、今、男の目に映っている光景はその男の信じているものをどんどん破壊していく。


「ジャム! じいさん! 行くぞぉおおお!」


「ああ! 頼むぜ、親父!」


「思い切り振れ息子! そして、ド派手にぶちかませ! 孫!」



 ドワーフの父が振る大槌が横薙ぎに思い切り振られると、そこに足を置き孫を抱きしめた竜族の祖父がその勢いで飛び出し竜の翼を生やし加速していく、腕の中の兄は6色の魔法を同時に発現させ、敵二人に浴びせかけ、消滅させる。


「男共もやるのう! じゃが、家族で強いのは女だと思い知らせてやろうか!」


「はい、お義母様! ニアちゃん、リィンちゃん、お母さんが援護するから思い切りやっちゃいなさい」


「ふ……了解しました。母上」


「え? リィンねえちゃんが今、笑った? へ、へへへ! よおし! いっくよお!」



 使徒たち二人の放つ白い高密度魔力球を祖母の生み出した魔法植物で塞いでいく。いくつか止めきれなかったが、それでも姉妹は構わずに突っ込む。ぶつかった瞬間、母の回復魔法がすぐに彼女達の傷を完璧に治癒させ、再び駆けだす姉妹。

 姉は正確な狙撃で一人を撃ち抜き、妹は目にもとまらぬ速さで後ろへと回り込みその首を狩る。


「ザクス! 手を!」


「ああ、兄と祖母の考案したこの魔法喰らうがいい! 合成魔法〈影炎〉」



 恋人同士の繋いだ手から真っ黒な影が伸びていく。真っ黒な影が使徒二人の影に繋がると、使徒たちの身体はぶくぶくと蒸発し始め、黒い炎を上げて溶けていく。


 圧倒的な力。白い血を凌駕する家族の絆がそこにはあった。


 だが、男には分からない。その意味が、理屈が、道理が。


「く、くそ……! くそぉおおおお! 私達は最強なのです! どの一族よりも優れている! こんな継ぎ接ぎの家族に負けるわけが……!」


「継ぎ接ぎの縫い目はどうやらお前らの血の繋がりよりも硬かったらしいな」



 調子を取り戻したザクスがアンジェと目を見合わせ笑う。そこにはもう怯えの色はない。ただただ、彼女を信じる真っ直ぐな輝きのみ。


「おのれぇえええ! まだだ! まだ我々は負けてはいない! 父よ、我らが偉大なる父よ! 私をお助け下さい!」



 男が天に向かって叫ぶと、再びあの声が響く。

 だが、先ほどと打って変わって冷たい無機質な声。


『今、忙しい。せめて一人くらい殺せ。じゃあな』



 それだけを告げると、一滴の白い雨を男の頭上に降らせ、気配を消した。


 男は口に入ったソレが何かを理解する。ソレは薬。魂を喰らい魔力に変える死の薬。


 神に、偉大なる父と呼んだ何かに男は捨てられた。呆気なく。


 身体と一族としての死を悟った男は狂った。ただただ、世界への怒りを白い炎に変えて暴れ出す。目につく誰かに愛されたものは全て消滅させようと襲い掛かる、


 手始めは、男の傍にいた少年。


「シネ」



 白い炎が噴き出る手がユウに届く直前、ユウを抱きしめ助けたのは、王都を出た時誰からも愛される弟に嫉妬をしていたニアだった。


「ニアおねえちゃん!」


「ユウ! 怪我はない!? もう大丈夫だからね! おねえちゃんがずっとそばにいるからね!」


「う、う、うわあああああ」



 家族の為に幼いながら気丈に振舞い続けたユウの目から涙が溢れ出し、ニアは姉として頑張った弟の頭をそっと撫でてやる。そんな二人を護るように家族たちが取り囲む。

 その先頭に居たザクスは忌々しそうにこちらを睨んでくる男を見つめながらユウに言葉をかける。


「ユウ、改めて言わせてくれ。お前は俺の弟で、俺達の……家族だ! だから、俺がお前を守ってみせる!」


「うん! ザクスにいちゃん、ありがとう……がんばって!」



 ユウの言葉はザクスの心に届き、大きな力に変わる。その力を感じながらザクスは笑う。


「これは……白の一族の力じゃない。俺達家族の力だ!」


 ザクスが飛び出すと、示し合わせたように『家族』たちが同時に動き出す。


 父は、ザクスに向かって最高傑作である剣を投げる。まるでキャッチボールのように。


 母は、ザクスの為に身体を守るやさしい衣を生み出す。それは彼女の作る料理のようにやさしくザクスを包み込む。


 祖父と祖母は、ザクスを導くように、そして、男から守るように多くの技や魔法を繰り出していく。


 姉と兄は、ザクスの見本となるべく男の身体を磨き上げられた魔法によってどんどんと貫いていく。


 恋人は、魔力を込めた指輪の嵌まった右手でザクスを支え背中を押す。


 そして、二人の大切な弟と妹は何より彼らが大切にしてきた言葉でザクスに力を与える。


「「がんばれ! ザクスにいちゃん!」」



 十色の魔力が混ざり合い、濁った色の魔力が生まれザクスは笑う。


 濁った色。


 だが、それが何よりザクスにとって美しい色だった。沢山の思いの詰まった、繋がりで生まれたその力をザクスは全身に感じながら、家族の敵へと飛び込んでいく。


「ワガ、我が一族は無敵、サイキョウなのダァアアアアア!」


「違うな、最強で最高なのは、俺の家族だ」



 ザクスはそう告げると、最高に幸せそうな笑顔で敵を切り裂いた。


「ア、ギャアアアアアアアアアア!」



 断末魔を上げ、男は白い炎となり消えていく。


 全てを振り絞ったザクスは、剣を落とし、笑顔のまま倒れる。だが、一人で地面につくことはない。差し出された多くの手が彼の背中を支える。


 天に浮かぶ太陽を眩しそうに見るザクスを影が取り囲む。その影の正体は彼の家族。家族たちの笑顔を見て、ザクスはやはり眩しそうに目を細め、笑っていた。

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