表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度も転生した僕は初めて姫様と出会う  作者: 13街区のマヤ
ウルマン大森林ウルマン村
9/48

2−4 一触即発

 甲板長の遺体をバルタの小屋へと運んだ。

 致命傷は背中に突き立った一本の矢だった。

 その矢は熊などの狩りに使われる強弓用の矢だった。


 強弓を引けるのは村ではブリほか2、3人しかいない。

 矢に銘は入っていなかった。


 バルタはケトマンに事情を知らせる使いを出し、「直ぐに来い!」と伝えた。

 村にとって、ただの殺人ではない。

 死んだのはエメル=ハル号の甲板長で、

 エメル=ハル号は村にとり大恩人なのだ。


 ここに入植する時も運んで貰い、その後も度々援助物資を運んで来てくれた。

 テオドルス候が命じエメル=ハル号が動かなければこの村は存在しないのだ。

 世界から忌み嫌われた一族を受け入れてくれたのはテオドロス候のみであった。

 ここは過酷な土地ではあるが、外界から遮断されて平穏な日々が送れていた。


 ただ、過酷な環境の中では援助なしでは生きていけなかった。

 先代のテオドロス候は毎年、当代になっても3年に一度は援助物資が届いた。

 それを運んでくれたのもエメル=ハル号なのだ。


 イサーク甲板長は、長くエメル=ハル号に乗っていて、村人とも親しかった。

 村の人口が増え始めた時、「もう、大丈夫だな!」ととても喜んでくれた。

 その後も度々援助物資を運んで来ては村が大きくなるのを喜んでくれた。

 村長の娘パリザの名付け親でもある。


 ケトマンは昼過ぎになってクドラトを伴ってやって来た。

「兄貴、どういうことだ!甲板長は恩人だぞ!」

「ケトマン、イサーク甲板長の背中に刺さっていた矢だ。」


 バルタは矢を見せ、

「銘は刻まれてないが、この白い尾羽は思うところがあるだろう?」

 バルタはケトマンの顔色が変わるのを見ると袂を別った弟とはいえ、痛々しく思った。


 クドラトが横から、

「ブリ殿ではありません!昨日は昼過ぎから夜遅くまで酔っ払っておいででした。」

 そしてバルタを睨み付けると、

「ブリ殿を貶めるための策略ではございませんか?考えてみてください、ブリ殿が犯人ならわざわざ自分が疑われる矢を使いますでしょうか?」


 ケトマンは息を吹き替えしたように、

「それはそうだ。いくらブリが短絡的だといってもそこまでバカではない!」


 バルタは、考え込み「一理あるな。では、誰が?」

 と周囲を見渡す。

 クドラトが「ブリ殿に罪を着せて得をするもの、でございましょうか?」

「クリチュ殿は、ブリ殿が居なくなれば次の村長の座が近づきますな。」

 ケトマンが要らんことを言うなとばかりに睨み付けた。


「ばかを言うな。クリチュにそんな気はないよ。」

 バルタは息子の気性を考えて擁護発言をした。がクドラトは続けて、

「そうでしょうか?女神様を味方にし、食料の心配もなくなり、両方の村人の目が自分たちに向いて来て、自分達が有利になったと思われたところにイサーク様が和解の提案をしたとしたら?」

「それでクリチュに何の得があるのだ。」

 バルタは不思議がって聞いた。


「女神様を擁した新たな国を夢想されたとしても不思議ではございますまい。それほどの女神様と伺っております。」

 ケトマンはそれ以上喋るなとクドラトを制し、

「兄貴、戯れ言だ。聞き流してくれ。」

 と言うとクドラトを促し座を立った。

「葬儀はうちも協力する。後で何人か来させる。」


 ケトマンが去った後、バルタはクリチュと僕を呼び、

「このままでは、クリチュが犯人にされる。デニス殿、何か方法はないだろうか?」

 科学捜査ができるわけでもないし、推理や捜査は専門外だしなぁ。

「取り敢えず、現場に行って見ましょう。」


 そこは、二つの村の間に拡がる耕地の中のあぜ道で人がすれ違うのも難しいほどの幅だ。

 現場周辺は既に多くの人々が出入りしていて踏み荒らされていた。

 これでは、証拠になるものも見つかりそうにない・・

 矢が射られたと思われる方角には、堆肥を積み上げた小山があった。


「恐らくここに隠れて甲板長が通り過ぎるのを待ったんでしょう。」

 小山の向こう側の畑に乱雑な足跡があった。

「踏まないで下さい。犯人の足跡かもしれません。」


 足跡はケトマンの村の方から来てケトマンの村へ帰って行ったように見える。それも二人分だ。


 小山から現場を見ると

「ここからなら約50m、かなりの腕前だと思われます。」


 僕は周りを見回すと一軒の家に目を付けた。こちら側に窓があるのだ。話を聞いて見る価値はあるだろう。

 その家へ向かうとクリチュが一緒に来てくれた。


 その家には老夫婦が住んでいて、クリチュの訪問を喜んでくれた。

 その老夫婦が言うには、

 クリチュと一緒に行きたかったが、齢を考えてこちらの村に残ったそうだ。

 クリチュは向こうに皆が暮らせるだけの小屋が出来たら迎えに来ると約束してくれた。


 昨日の晩のことを思い出して欲しいと伝えると、

「昨晩は、日が暮れるころから隣の小屋でブリの宴会が行われていた。大きな声が聞こえていた。」


「あのバカどもは酔って小便を催すと畑でやるんだ、肥料だとか何だとか叫びながらな、うるさいったらありゃしない。」

 状況証拠はブリを指しているなぁ。と思ったところにクリチュが、

「この家も我等の仲間というのは皆知っているから、信用されんだろうな。」

 決定的な証拠はなしか・・


 意気消沈してバルタの小屋に帰り着くと、エミィが、神妙な態度で

「犯人捜しは後にして、葬儀の準備をしてほしいんです。甲板長にはお世話になりましたし私が斎主としてお送りしたいと思っています。向こうの人達も一緒にお送りできるようにしてください。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ