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5−15 砦の夜

 青縁こと特別騎士団第4部隊長ヤリガがアルスローランの前に跪くと、

「殿下、この魔物はどういう曰く(いわ)のあるものでございましょう?」

 フェンリルの首を優しく撫でると、

「我が神から貸し与えられた『大神(おおかみ)』という神の使徒だ。」

 フェンリルに合図を送ると豆柴の姿になり、ソフィの腕の中に収まった。

 まあ、それでソフィが離れてくれたので片足は助かった。


「ヤリガ隊長!間もなく猿人たちがここにやって来る。この広場に呼び寄せ、ここで殲滅する。」

「準備をせよ!」


「はっ!で猿人はどのくらいの規模でございましょう?」

「200程と思われる。そのうち戦猿は1割程度。」

 200か、少ないな。それに戦猿はほとんど残っていない・・敗残軍か。

「では、どの様にして捕えましょうか?」

「捕らえる必要はない!殲滅するのだ。」

 そうか、もはや猿人は切り捨てるということか。

「ならば猿人用の通用門を開けておけば、自ら砦に入って参りましょう。」


「では、練兵場に縄を縦横に張り巡らせろ、猿人の足を止める。」

 それから、

「塀の上に弓兵を並べ一斉に討ち取る。」

「よいか!討ち洩らすな!」


 砦は準備に忙しくなった。

 エミィの感情が表情から読めなくなった。

 女神の微笑みを浮かべている。

 僕は思いきって、

「エミィ、大丈夫?」と聞いて見た。

「大丈夫なわけないじゃない。」

 と言うとその美しいヘテロクロミアの両眼に涙を溜めて、

「一つの種族を滅ぼす決断をしたのよ。王がこれほど辛いものとは正直分からなかったわ。」

 そして僕の手を取り胸に当てると、

「でも、私は王になるわ!こんな苦しみ他の誰にも味会わせたくないわ!」


 僕はエミィの手をとり、

「どこまでも一緒に行こう!」

 横でソフィは片膝をついて頭をさげた。

「二人の気持ち有り難く頂くわ、よろしくね!」


 アルスローランはヤリガが案内する司令官室に入った。

 装飾もほとんどない質素な20畳程の広さに、執務机と打ち合せテーブルが置かれていた。

 打ち合せテーブルに2人が向い合わせで座る。

「殿下、お連れの方々はどなたでしょうか?」

 あ~、

「私の婚約者とその妹、そして、我が家の執事だ。」


「あのララ騎士にそっくりな方が妹様ですか?」

「そうだか、そういえばララ副長はどうしている?」

「それが、今朝から姿が見えません。」

「そうか。2人を会わせて見たかったんだが?ところで、猿人のコントロールはどこまで進んでいたんだ?」

 じっとアルスローランの顔を見ながらどこまで話すべきか、頭をフル回転させていた。

「殿下はどこまで御存じなのでしょう?」

「質問を質問で返すのか?横着者め!」

 どうもこのヤリガという男、好きになれん!こやつの心はどっちを向いているんだ?

「父の前でタイランに全て聞いた。この件が片付けば、父は自らを罰するだろう。」

 自らを罰する?どのように?少なくとも侯の座は降りるであろう、しかし、次はこの男が・・邪魔だ!


「ある程度まではコントロールできます。猿人集団は家族単位ですが、それを大集団にするための薬が開発されましたので戦闘集団とすることが出来ました。」

 そんな薬があるのか?神をも冒涜する行為ではないか。

「そうか、今回はその戦闘集団が相手であった。結果を分析すればその集団がいかに戦闘集団として優れていたかが分かろう。」


 ヤリガはドアの外にいる副官を呼ぶと

「お付きの方々をお部屋に案内しなさい。」と命じた。

「殿下も部屋へご案内します。」

 自ら案内に立ちあがった。


 僕が案内されたのは高級士官が使用する部屋で質素だか十分な広さがあった。

 ただ、僕の部屋は2人とは砦の反対側で、いざという時に間に合うか?心配な位置にあった。


 ソフィは個室に案内されたが、姉姫と同じ部屋でよい、と断った。

 エミィのベッドの横にエキストラベッドを置き並んで休むことにした。

 灯りを落としてもエミィは最近眠れない。

 横からソフィの寝息がしてきて、そろそろ無理にでも寝なきゃ、と思う。

「デニスはもう寝たかしら?」と思い眼を瞑ってみる。


 うつらうつらして眠りに落ちる寸前、身体に重さを感じて眼をあけた。

 ぼんやりと見える目の前にソフィの顔があった。

「どうしたの?」と尋ねようとしたが声が出ない。手を動かそうとしても金縛りにあったように動かない。

 何とか動かそうと手と足に力を入れてみるが、やはり動かない。焦りに汗が出てきた。


 目の前のソフィが口を開いた。

「姫様、抵抗は無駄です。心を開いて私を受け入れて!」

 ソフィ・・いや、違う!

 誰だ!

 喋ろうとするが言葉にならない。

 デニス助けて!

 フェンリル!来て!


 僕は嫌な気がした。

 誰かが呼んでいる。ソフィ?エミィ?

 彼女らの部屋は教えられていない。

 ベッドから降りるとグングニールの槍だけを持って部屋を出た。


「諦めよ!心を開いて我を受け入れよ!」

 口調も声も先ほどから様変わりし、ソフィ?の口からチョロチョロと先が二又になった赤く長い舌が出ては引っ込んでいる。

 そう、ララなのね!

 目の色がそうね。

 金縛りに焦っていた気持ちが落ち着いてきて、少し余裕がでたのかもしれない。


「ララ!」やっと声が出た。

「ほう、声を出せるのか?さすが、ベラクアイリン・エイランティス以来の魔力持ちと言われるだけはあるな。」

「誰だ!」

「フッフッフッ、誰であろうな?」


 重なってララの声が聞こえる。

「この方は『魔王』様である!ひれ伏しなさい!」

「ララよ!身体も心も明け渡したか?」

「ふん、私の身などどうでも良いこと。魔王様に全てを捧げてこの世を正しく導いて頂くのよ!」

「魔王などと言う怪しいものとは共には行けぬな!」

「別に承知して貰う必要はない!」

 と言うとララはエミィの鼻をつまみ、口に口を押し付けると無理矢理に舌を入れようとした。

「私と口を合わせられるのはデニスだけよ!」

 エミィは必死で抵抗するが、金縛りにあっている身体はいうことを利かない。


 身体の力を抜き意識を口に集中して無理矢理に入ってきた舌を噛んだ。

 驚いたララは一瞬エミィから顔を放した。

 その一瞬、金縛りが解けたエミィが呼んだのは、

「ハーデス!!」

 ハーデスから貰った腕輪から沸き立つ黒い渦に周辺の暗黒が吸い込まれやがて形になった。


「ケルベロス!」

 エミィの上に跨がっていたララは、飛び降りて剣を構えた。

 三つ首のケルベロスは右の首がララに挑みかかった。

 ララが振るった剣を噛み取って、今度は左の首が襲いかかった。

 ララが思わず右手で防ごうとし、ケルベロスが食いちぎった!


 右腕を抱えてララは部屋を転げ出た。

「ララさん!」

 デニスの声にララは一瞬振り向くと向こう側に走り去って行った。

 僕は部屋に飛び込むと目の前にケルベロスが居て、思わず尻餅をついた。

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