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5−14 掃討

 デニス支隊は多くの兵士を失っていた。

 元々500人編成だったのだが、前回、今回の戦いで死傷者が多数出て動ける戦力は350人程になっている。

 補充もないまま軍としての体裁が取れなくなりつつあった。

 それでも軍の先鋒を勤め続けている。

 後にテオドルス軍中最強部隊と言われる所以である。


 今回も本体を置き去りにして、追撃を開始した。

 支隊の中で意外だったのは工兵が善戦していることだ。

 自らを弱兵と思っている工兵たちは、闘う際には必ず防御設備を併用して闘っているのが効果的なのであろう。


 猿人のコロニーにたどり着いた時、そこで見たのは放置された数体の遺体だけあった。

 天狗は仲間を逃がした後、自ら最後尾にあって、こちらを確認しつつ逃れて行った。

 その姿は妻を子を慈しむ父親のようでもあった。

 僕がその姿を見た時は、既に遠くに離れすぎてグングニールの槍を投げることが出来なかった。

 ソフィやテオたちが追って走り出そうとしたのを押し止めた。


 支隊の体力が尽き欠けているのを一番感じているのも僕だった。

 大体、僕がこんなところにいるのが間違っている。

 僕は軍人じゃない、ただの宿屋の主人を夢みる船員だ。

 なんでこんな世界にきたのかなぁ。


 共に登ってきたクドラドが地下通路を探索すべきだと言う。

 確かに地下に隠れている可能性もある。

 しかし、地下に入って狭い空間での猿人との闘いは1対1になりやすく人間側が不利である。


 考えた末、地下の出入口を片っ端から潰して、天井部分を地上から落としてしまおうとなった。

 まさに工兵が得意とする闘いかただ。


 工兵が地下通路を潰していくうちに、アルスローランが軍を率いて丘を登ってきた。

 丘の途中に倒れている猿人たちに止めを刺しながらやってきた。

「やるだけやったが被害も大きかった。」素直な感想であったろう。


「東側に逃げたものもかなりいて第3師団が対応している。天狗は逃がしたが深手を負っているようだ。デニス君には苦労をかけた。」

 と労っておいて、

「この戦いで、200頭近い猿人を倒した。ほとんどが戦猿だ。これで猿人の戦力はほぼ壊滅したろう。しかし、300頭近くをうち洩らした。また、いずれ大きな脅威となる。」

 まだ、足りないと言いたいらしい。

 母猿も小猿も殺し尽くせということだからな。

 でも、支隊は尻餅をついたようにもう組織的には動けませんよ。

 

 アルスローランはデニス支隊の惨状を見ると、

「デニス支隊は解散とする。各部隊は原隊に復帰!アロナ=ヒントまで船で移動し別命あるまで待機とする!ご苦労だった!」


 よかった、解放された。

と同時に横でソフィが崩れ落ちた。

これまでの反応と違い、そのまま眼を閉じて僕の腕の中で動かなくなった。

 指揮官の重責から解放されたことは何より嬉しかったのだが、ソフィを抱き締めていて後の言葉は耳に入らなかった。


「デニス君には天狗を一緒に追いかけて貰わねばならない。」

「天狗は西に向かった。私の予測では行き先は『サンジューク砦』だろう。猿人たちが唯一逃げ込める場所だろうからな。」

 アルスローランは、エミィ、ソフィそして僕を選んで、軍とは別に天狗を追うと言ったらしい。


 兵たちは、船で大森林を迂回させる者と大森林の中に造りつつある道を通ってアロナ=ヒントに向かう者に別ける。

 アロナ=ヒントに到着しだい準備を調えてサンジューク砦に向かうように指示した。


 そして僕ら4人はフェンリルに乗って行くことになる。

 眼は覚ましたのだか、どこか遠くを見ているようなソフィを離すことができず、肩を抱き締めたままでいると

「4人は勘弁してくれ!重すぎるよ!」

「そう、嫌なのね?」エミィの声は何か平面的で僕も初めて感じる違和感があった。

 フェンリルはいつもの叱責の声と違うのを感じ取ったようで、

「行くよ!いけばいいんだろ?」


 その夜、僕たちはフェンリルの背に乗った。先頭にアルスローラン、ソフィそして僕一番後ろがエミィである。

 エミィは僕の腰に手を回して顔を背中に押し付けるとずっと無言だった。

 僕には分かるんだ。

 エミィ!苦しいんだね。

 人類の代表として猿人のジェノサイドを決定したこと、キキとロロのこと、君の胸の中でいろいろな君が葛藤を繰り返したんだろうね。


 僕のお腹の前で固く組まれたエミィの両手を上からそっと包み込むと二人の体温が一緒になっていく。

 エミィ!いつでも僕はそばにいるよ!

 ホントに?信用していいの?エミィは顔をあげると嬉しそうに言った。

 ソフィより私が大事かしら?

 ・・

 なあんだ!

 そういうとまた顔を僕の背中に押し付けて黙ってしまった。


 フェンリルは大森林の上を走るように飛んで行った。囚人砦が見えるようになると「どこに降りる?」

 アルスローランは、「真ん中に派手に降りよう!」


 砦の外周を一周する。

 下から見上げている騎士が一挙に増えた。中には弓を取り、矢を放ってくる者もいた。


 フェンリルは悠々と警戒の中を中央の練兵場に降りた。

 フェンリルの背に立ち上がったアルスローランは、

「わが名は、アルスローラン・テオドルス!ヤリガ隊長を呼べ!」

 と叫び、フェンリルから飛び降りた。


 僕も降りようとするがエミィもソフィも動かない。

 仕方なく、僕はソフィ、エミィの順に降ろした。

 アルスローランの後ろに僕ら3人は大人しく立った・・僕の両方の足の上に乗っている足は、右足はエミィかな?力を籠められると痛いんですけど。

ソフィ、左足に乗っているヒールを外してくれると嬉しいんだけど。


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