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5−11 子供達

 まず、調査だ。

 クドラドを呼び、出口となりそうな岩の隙間を調べるよう頼んだ。

 まず、陣地周辺の地下地図を作るのが優先だ。


 地図ができても地の利がない我が方から攻め込むのは悪手だと思っている。

 しかし、敵がやって来るのを予測し、邀撃(ようげき)する準備は必要であろう。


 地下のトンネルをはさんで、お互いが理解し合えるように話し合いが出来るといいのに、という思いは消えない。

 エミィに怒られそうだな・・よし!と頭を切り替えた。


 クドラドは工兵を使って地下地図を作りながら、陣地の守りに不要と思われる空間を岩や土で潰していく。

 クドラドの作る地下地図はまさに地下迷宮と言うべき地下の迷路を表していた。


 クドラドが言うには地下は横にも拡がっているが、上下にも拡がっている。まさに

 一番大きな通路はどちらかと言うとさらに地下に潜って行っている。

 猿人のコロニーの方向とは別方向だ。

 つまり、猿人のコロニーとここは繋がっていても細い通路しかない!

「これを分かった上で攻めてくるだろうか?」マヌエル特別騎士団第3部隊長は瞑目した。

 クドラドが言うには、地下迷宮の地図は立体なので紙の上には表しにくいらしい。


 地下迷宮の地図の作成をしていたカーリャたち工兵が、近くで泣き声を聞いた。

 一人が陣地に走り、カーリャはクドラドから禁止されてはいたが、恐る恐る近づいた。

 猿が2頭抱き合って泣いていた。


 猿と思ったのは猿人の子供のようだった。

 カーリャが近づくと一頭が大きく腕を振るった。その肘がカーリャの鳩尾(みぞおち)を捉えカーリャを吹っ飛ばした。

 子供と言えども猿人。人間より遥かに力強い。

 鳩尾を押さえながらのたうち回るカーリャを助けに工兵が近づくと、猿人の子供が一頭を庇って前に出て来た。


 工兵たちが槍を構えている。

 双方の間は1メートルもない。

 槍を突き出せばその子供の生命はない。


 カーリャが痛そうにしながら。「やめて!」と叫ぶ。

 工兵が槍を退くと2頭は奥に向かって去って行った。


 テオとマヌエルにクドラドが兵を連れて駆けつけた。

 蹲っているカーリャを助けると地下迷宮から後退した。


 手当てを受けるカーリャを横目に、クドラドが、「その子供たちが無事にコロニーに戻るといいが・・」


「戻らないとどうなる?」

「奴らが騒ぎ出すだろう。」

「下手をすると総攻撃になる。」

「その子猿が戻ればどうだ?」

「その時は何事もなく済むんじゃないか?」

「最悪を考えて準備しよう。」


 クドラドは地下迷宮の地図をもう少しだけ作っておこうと、工兵と地下に入った。

 そこで息も絶え絶えの2頭の子供の猿人を見つけた。

 2頭は抱き合ったまま倒れていた。

 地下迷宮で迷ってしまってコロニーには帰れなかったんだろう。


 恐らく動けないとみたが、万が一があるいけないと遠巻きにしたままで司令部に報告した。


 腰を浮かした僕をエミィが押し留めて、「デニスは行ったらダメ!」

「ここは私とソフィに任せて!」

 二人は護衛の騎士と共に地下迷宮へと向かった。


 エミィは地下迷宮に入ると、

「フェンリルをこの中で放せば猿人のコロニーなんかひっくり返してしまいそうね!」まだ傷の癒えない使い魔の

力を想っていた。


 エミィが、猿人の子供に近づく前にソフィは躊躇なく側に座り込み、呼吸を確認した。

「まだ、生きています!」

 そう言っても誰も動かない。

 どうしていいのか分からなくて動けないでいる。


 ソフィはその子を抱き起こそうと首の下に手を入れた時、その子の腕が無意識に振られソフィの胸を叩いた。

 ソフィはその弾みで倒れこんでしまった。


 エミィが「無茶して!デニスは誉めてくれないわよ。」

 でも、・・

「猿人も人間も変わらないなんてデニスが言うからいけないわ。あなたがいなくなったら私もデニスもどれ程悲しむと思うの?」エミィが、抱き締めた。


 誰も彼もが、2頭の小猿にこんなところで死んで欲しくはないと思った。

 その思いは様々であった。


 マヌエルは、ここで死なれて全面衝突になるのを防ぎたい。

 カーリャはただただ助けたい。


 クドラドが案を持ってきた。

 治療しようにもこのままではこちらが危険だ。少し元気になれば尚更だろう。


 倒れていた場所の周囲に檻を造り逃げ出さないようにする。可能ならば鎖か綱で繋いでおいた方が治療や栄養補給のために身体に触りやすいだろう。

 そして、回復したらこちらに馴れる前に放すのがよい。


 ちょっとかわいそうな気もするけど、それが一番いいと僕が判断した。

 2頭の猿人をロープで岩に繋ぎ、周囲に檻を設置した。

 診察も右手、左手、右足、左足を兵士が一人づつ付いて押さえながらの診察になった。


 エミィが、一頭の頭に触ると「帰りたい!帰りたい!お母さん!」で頭の中が一杯だった。

「子供は何の子供でも可愛い・・でも。」


 夕刻、討伐軍の先遣部隊が到着した。

 先遣部隊に総司令が同行しているってどうよ?

 アルスローランは陣地に着くと目敏くエミィを捜し、また、片膝を着いた。

「あんた、バカなの?」

 エミィから怒られている。

「申し訳ありません!」

 アルスローランは頭を掻きながら謝っている。


 僕がソフィのことばかり心配するのでエミィのご機嫌は斜めだ。


 討伐軍が到着し始めるとこれまでの陣地では手狭になってきた。

 工兵隊のカーリャとクドラドは地下迷宮をも取り入れた立体的な砦を築こうとしていた。


 僕はやっぱり諦めきれず、保護した小猿のもとに通っている。

 エミィには名前は付けるな、と釘を刺されていたが姉猿をキキ、弟猿をロロと名付けた。

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