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5−8 援軍

 また、またヨタロウさんの無茶振りだ。

 とうとう『部隊長』にまでなってしまった。

 豆柴を肩掛けカバンに入れ、グングニールの槍を持って出発した。

 テオ兄ぃが心配して付いて来てくれた。

 ソフィがくれた胸のネックレスに手を当てた。


 砦の外はウルマン村だったところだ、荒廃した村の跡地を抜けると大森林の濃い樹木が立ちはだかっている。


 僕は先頭に立ち、グングニールの槍を振るって1本1本倒して行く。

 槍の使い方としては間違っていると思うけど、これが一番速い。

 その後を工兵が簡単な整備を行なって部隊が通れるようにしていく。

 デニス支隊の後、討伐軍本体が通りやすくしておく。


 大きな樹木が、音をたたて倒れる。

 倒れた樹木が2度3度と全身を震わす、その度に地響きが起こるんだ。

 テオはその度に大袈裟に飛び上がったりして、皆の気持ちを和らげてくれる。


 昼の大休止を挟んで、午後3時頃までこの作業を繰り返す。

 その後は夜営の準備に入る。

 周囲に樹木があると樹上が得意な猿人に襲われる危険が大きいので、夜営地の周囲の樹木も極力切るようにしていた。


 今回の遠征から夜営地のそばの樹木に大きな旗を掲げるようにしていた。

 砦から僕らの位置が判るようにだ。


 毎夜、フェンリルを偵察に出す。

 この日、気になる報告を持ってきた。

 大森林の東側、森林が尽きたところは『境目の丘』と呼ばれるアレハンドロ候領とのまさに国境地帯が存在している。

 その丘では樹木は育たず、岩と草だけの丘だ。そこの洞窟に猿人の母子がコロニーを造っているという。


 大森林を抜ける必要があるな。『境目の丘』をアレハンドロ候領側に抜けると大森林ほどではないが森がある。

 そこを抜けてしまえば街が目の前だ。


 砦の望楼に登るとデニス支隊の夜営地の旗が1本、2本と東に向かって延びていく。

 進む速度が信じられないほど速い。

 やはりデニスを部隊長にして正解だったとアルスローランは思った。


 デニス支隊が砦を出てから5日、支隊からの連絡騎士が、猿人の母子コロニーの情報をもたらした。

 アルスローランは、「よし、これだ!」と判断し、砦に残る将兵に出陣準備を発し、援軍が到着次第出発できるように準備した。


 アルスローランらが、砦の出口で足踏みしながら、まだかまだかと待った援軍が泊地に入った。

 援軍は陸軍第2師団1万人でまず、先遣隊として第1旅団2500人をマテオ師団長が直率して入港してきた。

 アルスローランは、サン=アデレードの本気振りについ苦笑いが出た。


 その援軍の中にソフィが騎士の姿で加わっていた。

 周囲からは青縁のララ副長と思われて、「何故こんなところに青縁の副長がいるのだ?」「美しいんだか青縁ではなぁ・・」など様々な反応があり、中には色目を使ってくる輩もいたが、ほぼ周囲から敬遠されていた。

 エミィは面白そうに眺めて、ソフィに、「これで、誰も寄って来ないわ、身の安全を確保するには効果的だったわね。」

 ソフィはソフィで姉様の遊びに付き合わされて、周囲からの好奇の眼に晒され面白いわけはなかったが、それ以上にデニスのことが気になっていた。


 ソフィは上陸すると真っ直ぐに司令部へと向かった。

 アルスローランは一度だけ会ったことのある姫様の妹姫に会うため、他の予定を全てキャンセルして待っていた。


 扉をノックして入って来た女騎士はまさに青縁騎士団ララ副長とそっくりで思わず二度見してしまった。

 それよりもソフィの横にいる付き人を見て驚いた。

「姫様!このような危険な処にいらして頂き、光栄です!」

 アルスローランは付き人の前に片膝を付いて頭を下げた。


 し、指令!・・側にいたリビオ師団長が何が起こったのだと驚いた。

 アルスローランはリビオに向かい、「頭を下げよ!」と無理に頭を下げさせた。


 ソフィの付き人が、「アルス、やめよ!ややこしくなるではないか。」

 そこにいたのは、エミィ王女であった。

「私はデニスを助けにきただけだ!早々にデニスのところに案内せよ!」

 アルスローランは、頭を下げたまま、

「デニス隊長は既に部隊を率いて出陣中です。」

いないのか・・面白くない。

「そうか、ちょっと椅子を借りる。」

 と言うと椅子に座り、ソフィを呼ぶと両手を握りしめ眼を閉じた。


 暫くそのままでいたが、眼を開けると、「夜まで世話になる。」と言うとそのまま眼を閉じてしまった。


「ソフィさん、どういうことでしょう?」

 アルスローランは、もっとエミィと話がしたかったのに自分は無視されたとショックだった。


「今、姉様はデニスの元にいるフェンリルと話をしました。そして、今は安全であることと夜に迎えに来る」との話をしました。

 と伝えた後、アルスローランを安心させるように、

「姉様はあなたのことを無視するように見せて焼きもちを妬かせているだけですよ。」

「ソフィ!要らぬことは言わない!」

 薄目を開けて叱った。

 ソフィは舌を出して笑った。

「私にこんな格好をさせた仕返しです。」


 砦は夜半まで出陣の準備に大忙しであった。

 リビオ師団長は聞いてはいけないことのような気がしたが、恐る恐る聞いた。

「あの方はどなたでしょう?」

 アルスローランは決して他言無用と念をおして、

「エメルディララ・エイランティス・ランザニア次期女王陛下である。」

 リビオは開いた口が塞がらなかった。


「では、ララ副長そっくりな方は妹姫様ですか?最近、行方不明になったお二方ですか?」

「もう、そんな噂が流れているのか?いや、流されているんだろうな。」


 その二人は、宛がわれた部屋で旅装を整えていた。

 あの懐かしいフード姿である。

 窓をコンコンと叩く音がした。

「姉様、フェンリルが参りました。」

 窓を開けると豆柴が中に入ってきた。


「タクシーじゃないんだからな!迎えに来い!って何?」

「あら、ご機嫌斜めね。今度ご馳走を作ってあげるから機嫌を直してね。」

 ご馳走を作る?エミィが?誰が食べるの?俺?・・ヤだ!絶対!


「あっ、そこまでしていただかなくてもちゃんと働きます。」

 これぞ危機管理!と自画自賛しているフェンリルであった。

「それじゃあ、早速デニスのところに連れていって!」

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