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5−7 デニス支隊

 フェンリルは、首輪から解き放たれ大森林の中を駆け巡っていた。

 なんで俺がこんなにくそまじめにやってんだ。と思うと腹が立つ!くそ!くそ!だいたいあの姫が良くない。

 俺は神の使いなのに小間使いのように使いやがって!


 ぶつぶつと文句を言いながら、大森林の探索を続けていく。

 まず、戦いのあった北東側、ここには確かにコロニーがあったが・・残骸を残して既に移動したようだな。

 猿人のコロニーは、簡易な造りなので頻繁に移動しているんだろう?


 フェンリルは大森林を北に抜けて、大亀裂に沿って南東の下流側に向かって移動した。

 夜が明け始め、再び太陽が隠れるまでの間、休む場として自分が棲み家としていた神殿に帰った。


 神籍は剥奪されたがここは自分のテリトリー。誰にも邪魔されることなく独りになれる。

 また、暫くの間眠りにつくか、再び目覚めた時にはあの姫も既に年老いてこの世には居らんだろう。


 寝所を整えていると、壁がポロポロと剥がれ落ちてくる。

 どうしたことだと思って周囲を見て回ると神殿は既に崩壊が始まっている。

 これでは寝所どころではない。

「くそ!ここでサボってやろうと思ったのに!」と思った瞬間、天井が崩落し、危うく逃れ出てきた。

「ソル神よ!お許しください!まじめにやります!」


 神殿を飛び出て大森林の樹木の上で落ち込んでいた。月も中天を過ぎているのに近くにあるサンジューク砦に人が活動する気配がした。

 近づいてみると灯りが点り人が動いているのが見てとれる。


 何人ぐらいか?100人近いか?

 慎重に近づくと厩に馬が繋がれ、騎士が中をウロウロしていた。


 豆柴の姿で侵入した。

 灯りのついた部屋をみて回る。

 はっとして、あっ、あいつ!いつの間にかいなくなった女騎士だよな。こんなところにいたのか!

 何しているんだろう?と闇に耳を澄ます。


「ヤリガ隊長、天狗の動きは相変わらず掴めませんね。」

 壁越しに神経を集中すると、中には2人居るのがわかる。女騎士ララがもう一人に喋っているが、まるでこちらを向いて喋っているようでもある。


 こちらに背を向けた騎士が、

「掴めなくていいさ。もっと暴れてくれればこっちのものさ。アロナ=ヒント辺りを襲ってくれれば御の字なんだかな。」

 何か、面白そうな話をしているな。

「しかし、どう言い訳なさるのですか?我々の失敗なのですよ。」


 ヤリガは笑いながら、

「失敗?大成功さ!猿人が暴れて我が候の名声に傷が付けばいいのさ。『哲学者の覇王』がどう言い訳をするのか?まっ、どう言い訳しても『悪魔の手先』に墜ちているのは明らかだからな。領民の信頼は候から離れるし候は居たたまれなくなるだろう。精神的に持つかな?」

 フッフッフッ、唇の片方だけを吊り上げて笑っている。


「既に嫡子パルスローランには手を打ったし、アルスローランは地位に興味のない変わり者だから、自然と後継者はあの不出来なケンドリック公子となるであろう。それでよいのさ。」

 ララは静かに聞いていたが、

「それが、復讐になるのでしょうか?」


 おお!ララ!

「そなたの父と私は仲の良い友人だった。昔の話だが二人は王国の復興を夢見て切磋琢磨していた。そなたの父は王国の男爵位を持ち、王国から領地を与えられてもいた。それを先代のテオドルス候は、ありもしない贈収賄事件をでっち上げ、そなたの父を始め叙爵していた貴族12人を処刑した。そしてその領地を統合して現在のテオドルス候領をつくった。」


「その子息たちも連座させられ、ほとんどの家は滅んだが、そなたのキール家は辛うじて残った。跡継ぎがまだ0歳の女の子だったからだ。」


「私の家は貴族ではなかったが、そなたの父に近かったから、暫くは身を隠さなければいけなかった。私はエルミン=キラズに逃げ、人目を避けて暮らした。明日の食べ物もない極貧の生活だった。名を変え、顔を整形してテオドルス候が代替わりした際に戻ってきて仕えた。それも復讐をするためだ。」


 ほう!なかなか面白いな!

 ずっと聞いていたいが、任務とは関係ないか?

 デニスから姫に告げ口されると大変だからな。

 フェンリルは砦を離れた。

 これ以上ここにいても猿人の居所はわからないと判断した。


 猿人が制圧しているはずの大森林西側にはいないみたいだな。と判断すると夜空を東側へと駆けた。


 救援に出た部隊は特に猿人の抵抗に会うことなく無事に赤縁騎士団(特別騎士団第3部隊)を収容し砦へと帰還した。

 ポロポロになった赤縁は死傷者を除いた60数人で再編する必要がある。

 しばらくは休息であるが。


 砦の指揮官室にアルスローラン司令を始め、陸軍第1師団長アレハンドロ、第3師団長リビオ、赤縁騎士団長マヌエル、第3騎士団長ユージュ、工兵部隊長コンドンといった主だった面々が集まり作戦会議が開かれていた。

「デニス!報告を!」

 アルスローランの一言で、会議は始まった。

「偵察の結果を報告します。」

 何故か僕はこの場にいて、フェンリルの持って帰って来た情報を報告する役になっている。


「猿人は、北東にあったコロニーを放棄し、さらに東へと移動しているようです。この動きがこちらへの攻撃を断念したものかどうかは調査中です。ですが、このまま東に移動し、大森林を抜けてしまうとアレハンドロ候領に達してしまいます。これまで国内の問題であったのが国際問題になります。」


 アルスローランが、「そうならないように急ぐ必要がある。全軍で大森林東側を掃討する。まず猿人たちがアレハンドロ領に達しないよう引き留めて置く必要がある。そのための部隊を出す。」


 陸軍第1師団から2個大隊、赤縁騎士団、工兵から1個中隊の500名で組織する。と言うと、

「デニスを指揮官とする。以後、この部隊をデニス支隊と呼ぶ。」

アルスローランはマヌエルの方を見ると、

「赤縁は引き続きでご苦労だが、猿人対策に詳しいから外すわけにはいかん、マヌエル、半分でいいから出してほしい。」

アルスローランは、少ない兵で猿人の殲滅を目指さざるを得なくなった。

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