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5−4 偵察隊

 マハーク部隊長とリビオ師団長の迎えを受けてアルスローランは砦に入った。

 既に猿人襲撃の痕跡はなく整然と整えられていた。

 その砦には援軍が到着するまでに1回だけ襲撃があった。

 襲って来たのは100頭ほどだった。


 マハークは準備していた。

 砦の周り浅い空堀を掘りそこに藁や柴を積み上げて、機を見て放火し撃退した。

 被害はほとんどなかった。


「火に弱いですか?」

 アルスローランが尋ねると。

「どうでしょう?今回は火に驚いて逃げてくれましたが一度では判断が難しいですね。ちょっと気になったのは、これまでと違い攻撃が直線的であったように思います。」


 ここで全てを話すと言うわけにもいかないな、と思いながら

「これまでの戦闘記録から読み解くと猿人は全体で4~500頭位だと思われます。それが、1頭の王に率いられているようです。その王が出てきた時が手強いようです。」

「では、その王を倒せば後はどうとでもなる、ということですか?」

「そこまで簡単ではないでしょうが何とかなるでしょう。」

「それまで、砦の強化と偵察を行いましょう。」


 僕は上陸するとテオ兄ぃを捜した。

 砦で聞くとエメル=ハル号の乗組員なら洞窟にいるよ、と聞き込んで飛んで行った。

 地獄の門の砦に近付くと塀の上から、

「デニス!」

 テオの声が聞こえた。

「テオ兄ぃ!」

 叫ぶと同時に走り出した。


 話すことは山ほどあった。しかし、エミィの素性だけは話すことが出来ず、心苦しかった。

 テオたちは、村人を送り出した後も船長の命令でここに残って軍に協力していた。


 工兵部隊は砦の周囲の空堀を深く広く掘り広げ、堀底に逆茂木を設置した。

 砦を囲う塀の四隅に見張り台を造作することにした。

 丸太を組んで三階の高さにまで揚げ、そこからさらに見張り台組み上げようとしていた。

 森林の樹木の高さをやや越えてかなり遠くまで見渡せるようになるはずである。


 工兵はフル回転で働いていた。

 デニスの指示で堀、塀、門から矢倉まで改良が施されていく。

「こんな城の造り方、どこでおぼえたんですか?」

 僕としては戦国時代の城を参考にしただけなんだけど、カーリャは見直したとばかりに次から次へと質問してくる。


 アルスローラン司令は、デニスを呼ぶと、

「赤縁(特別騎士団第3部隊)を偵察に出すんだ。一緒に行ってほしい。」

 僕は工兵で偵察には役立たずですけど。

「地形やら地図を作りながら行ってきてもらいたい。お願いできるか?」

 お願いって、命令ですよね。


 赤縁のマヌエル隊長は明るい好漢でまだ20代後半と思われる。

 工兵から数人連れて行く必要があり、カーリャに相談すると4人を推薦してくれた。

 それとカーリャ自身も一緒に行くという。


 マヌエル隊長は、北東を偵察するという。一番猿人のコロニーが有りそうな方角ではある。

 ただ、道なき道なので馬は使えない。道を切り開きながら進むというがなかなか難作業になるだろう。

 その時間を使って地図を作ることになる。今回は精密なものではないのでが救いであった。


 洞窟内の船着場に降りるとそこにいたのはクドラドで、僕を見てにっ、と笑った。

「村の人たちと行かなかったのか?」

 僕はクドラドがそこにいることに驚いていた。

「石炭を任されたからな、余所者に勝手にされては堪らん!」

 当たり前だろうとばかりに答えた。

「今のところ、することはないのだがな。」


 偵察隊は出発のため、砦の正門前に集合した。

 僕の周りには、カーリャ外工兵が4名がいたが、何故かテオ兄ぃとクドラドまでいた。


 テオ兄ぃは、デニスに万が一があると帰ってから、皆に会わせる顔がないからな。という。

 クドラドは暇だから。という訳の分からない理由で付いてきた。


 肩掛けカバンの中から豆柴が、

「デニスに寄ってくるのは女ばかりかと思っていたら男も寄ってくるのか?」


 予定は10日間、おそらく8日間進んで2日間で戻ってくる予定である。

 僕は肩掛けカバンに豆柴を入れ、背嚢(バックパック)に食料や道具を入れてグングニールの槍を杖替わりにオハンの盾を左腕に装着していた。

 槍や盾は普通の人にはそうとは分からないし、持ち運ぶのも困ることはない。


 出発して3日、道を造りながら進んでいるような具合で、思ったようには進めない。

 マヌエル隊長は、笑いながら余裕のある表情であったが、内心はかなりイライラしているのが見て取れた。

「デニスさん、この先もこの調子何だろうか?」


 普通は、僕に聞かれても・・と思うところであるが、実は夜間フェンリルを偵察に出していた。

 その報告によると後5日の距離に猿人のコロニーがあるとのことだった。

 どう伝えたものか迷っていた。

「予定通り、進んで見てはどうでしょう?」

 と言うしかなかった。


 次の日には、どことなく見張られているような感覚があった。皆には一人では行動しないように注意した。


 フェンリルにその夜も探らせた。

 いつもなら偵察ついでに息抜きをして夜明けに帰ってくるが、夜更けに慌てて帰ってきた。

「猿どもが襲撃の準備をしているぞ!夜明け前に襲ってこよう。」

 どのくらいの数かな?

「30~50だろう。」


 逃げた方がいいな。僕は決断するとマヌエル隊長に進言した。

「情報源は明かせませんが、猿人の襲撃があります。50頭ほどのようです。」

 考えるまもなく、皆を起こすと、

「猿どもの襲撃がある。迎え打つぞ!」

 えっ!逃げないの?

「奴らは樹上から来るぞ!円陣を作って槍衾(やりぶすま)で対抗する!急げ!」

 こちらは僕たちを入れてやっと90人。大丈夫か?


 来た!樹上からいきなり飛び降りてきた。

 下には槍衾があり、最初の1頭は槍に貫かれた。

 次々と飛び降りて来る猿人に対し、集団で対抗する。

 こちらの円陣を崩せず、撤退する猿人に矢を射かけてさらに数頭を倒した。


 猿人は10数頭の遺体を残して撤退した。


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