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5−1 第1次派遣軍

 派遣軍はヨタロウいやアルスローランの弟ケンドリックを総司令に特別騎士団第4部隊、陸軍第3師団及び第1騎士団から2個中隊で合計4千名が、武装蒸気商船3隻、商船3隻でハンナ岬に向けて出港した。


 エメル=ハル号の乗組員は案内役としてフィリップ船長、マーク・イットー副甲板長が随行した。


 アロナ=ヒントはテオドルス候領では最も南の街でハンナ岬に最も近い港である。

 ここに全艦が集結した。


 ここで、特別騎士団第4部隊が内陸部に向け独自行動を取り始めた。

 また、陸軍第3師団の約半数がここからウルマン村へ向かってウルマン大森林を横断する道を開くべくアロナ=ヒントで集めた人夫と共に大森林に向かった。

 残る部隊が武装蒸気商船でハンナ岬へと向かい出港していった。


 ハンナ岬はここ1~2カ月が最も穏やかな季節で、航行する船はこの時期を狙って通る。しかし、嵐が来ることもあり油断はできない。安全な泊地が求められているが公式になっていない。

エメル=ハル号は航路からやや離れた場所に独自に泊地を確保していた。


 フィリップ船長の水先案内で泊地に入った艦隊は先遣隊をボートで洞窟へ送り出した。

 ボートは洞窟の波止場に着くとフィリップ船長以下12人が上陸した。


「テオ!ご苦労だった。どういう状況になっている?」

 フィリップ船長がテオの肩を叩いて労ってくれた。


「ここ数日は落ち着いているよ。猿どもの攻撃もない。」

「昨日、村へ偵察隊を出しました。ほぼ破壊されていましたが、猿どもの気配はありません。」


 船長は一緒に来た陸軍第3師団のリビオ司令官を船に帰して次の行動に移るよう進言をした。


 派遣軍は村近くの浜から上陸し、部隊は村を掌握、防御陣地を構築し始めた。

 エミィたちが居た集落に塹壕を掘り、持ち込んだ塀の材料で仮塀を構築した。


 中心には一際大きな建物の跡があり、そこに師団本部が置かれた。

 その夜はかがり火で不夜城の様相であった。


 翌日、周辺の偵察に出る部隊と防御陣地の構築を行う部隊に別れてそれぞれの任務を行なった。

 陽が傾いたころ偵察隊が帰って来て1キロメートル範囲には猿人の影はないと報告した。


 その翌日には、部隊を分けて石炭の調査を行なった。

 採取した石炭の品質は『優良』、埋蔵量も十分であると予測された。


 村と別に石炭産出箇所の『地獄の門』周辺を要塞化することが決まった。


 村跡の砦の整備が一段落着くと、総司令のケンドリック公子が上陸してきて村長代理のクリチュを謁見した。

 敷物もない地面に平伏したクリチュは、返答も許されず、ひたすら平伏し続けた。

 公子は、助けに来てやった。喜べと仰った。


 ケンドリック公子の前に石炭のサンプルが運ばれると、

「これが黄金に変わるのか?早くみたいな。」と笑顔で仰った。そして洞窟神殿の倉庫にあった古代金貨を手に取ると目が輝いていた。


 さらに、ケンドリックは洞窟を見廻り、そこに避難していた村人の中から若い女性3人に自分の世話をするように命じた。

 ところが、やって来たのは既に老境に入った女性たちだった。

 激昂したケンドリックは、旗下のリビオ陸軍第3師団司令官に村人を処罰せよ、と命じた。


 リビオはクリチュとパリザの母ヨーシャを呼び、事情を聞いた。

 ヨーシャは、堂々と「若い娘では気が回りません。私達のほうが役に立ちます!」とキッパリと言った。

 その凛とした覚悟をみたリビオは村との決定的な対立を回避する必要を感じた。

 大笑いし、「その通りだ!」といい、「総司令には自分から話をしておく。これからも頼む。」と頭を下げた。


 この日、騎士団の乗馬を陸揚げしていた。浜にボートで2頭づつ陸揚げしていた。

 18頭目が上陸し、付近に繋がれていた馬たちと砦に移動しようとした時、突如、横合いから猿人が襲いかかって来た。

 まず馬丁達が襲われた。

 手綱が外れた馬たちを猿人が追いかけ連れていった。食料になるのか?まさか乗馬?

 この襲撃で、20人程の犠牲が出た。

 犠牲者は猿人に連れ去られ遺体も残らなかった。


 陸軍第3師団は、村の砦と地獄の門との間の森を伐採、整地を行っていた。

 猿人はそこにも襲いかかった。

 こちらは、10人ほどの怪我人が出たが逆に猿人2頭を仕留めた。


 指令部では、「連中が昼間に襲ってくるとは想定外だ!」

「何人やられた?」

 と大騒ぎになった。

 総司令ケンドリックは、唇を青白くして、「司令部の警備を厳重にしろ!早く討伐しろ!」としか言わなかった。

 騎士団を中心に討伐隊を編成し、各100名で3隊を放射状に放った。

 各隊には食料を3日分持たせた。


 それから5日は静かであったが、討伐隊は2隊しか帰ってこなかった。

 次の日に1名だけが、命からがら砦にたどり着いた。

 その兵の語る凄惨な状況は、聞く者全てに嫌悪感と恐怖を与えた。


 ここに到り、リビオ指令はケンドリック総司令に援軍の要請をすべき。と建言した。

 リビオ指令は、猿人が少数の部隊で襲ってきたかと思えば大集団で獲物を追い詰めるような闘い方をしたりと変幻自在の様子に只事ではないと感じていた。


 ケンドリック総司令はその建言を却下すると、「猿人の本拠地を覆せ!」と命令を発した。

 猿人の本拠地を覆せ!と言われてもどこにあるのかさえわからない。


 第1騎士団が偵察に出ることになった。ただ馬が足りず、徒歩での行軍となった。

 次の日、何の成果もなく帰陣した。

 ただ、何人かの騎士は樹上から見張られているようだったと報告している。


 それから、10日間ほどは何事もなく過ぎ、その夜は夜風が涼しく感じて過ごしやすかった。夜も更けて下弦の月が中天に差し掛かった頃、いきなり砦が襲撃された。

 見張りが気付くのが遅れ、声をあげる間もなく首を刈り取られた。

 そして静かに門が突破された。


 ケンドリック総司令は持ち込んだ酒が無くなったことを副官に当たり散らしいた。これが彼の生命を救うことになる。


 砦の中が騒がしくなったのをケンドリックはいち早く察知し、副官に調査を命じた。

 副官は飛び出して行き、猿人を見かけると飛んで戻って来て、すぐに逃げるべきと報告した。


 残された馬に乗った主従は地獄の門に向かって兵を捨てて走った。

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