1−3 王女の初恋?
見つけたわ!こんな所にいたのね。
嬉しくて、嬉しくてちょっと笑っちゃた。
王宮を逃げ出して正解だったわ。
ソフィにお話しなくちゃ。
静かに船が動き出した。
私を背負ってくれた人はデニスと言うらしい。
彼の背中は心地よかったわ。
今まで感じたことのない感覚だったの。
あれが一つになるってことなのかしら?
私には予知能力があるわ。
他人に触れるとその人の未来がぼんやりとわかる・・何となく明るさや色で表現されるわ。
デニスのそれは明るい乳白色。今まで感じた事のない明るさと包み込むような柔らかさだった。
それは私と一体になる事で大きく変わるわね。
あの感触にもう一度触れたい、胸が熱くなるほどだわ。
私の運命の人デニス。
私を攫って逃げて!
しばらくすると船長が戻って来た。
「お二人ともご無事で何より。」
「ありがとう。」
ちょっとデニスを持ち上げてみようかしら。
「デニスさんが背負って下さって・・お陰でここまでくることができました。」
ちょっと舌を出しながら、デニスはどんな顔をするか横目で見てみたの。
おどおどとした表情がかわいい!
「デニス良くやった。」
船長に褒められたデニスは、どうしていいかわからずモジモジしている。
やっぱり可愛い!
「じゃぁ、俺等はこれで。」とテオが言って、船長室を出て行こうとしている。
「まぁ、待て。そこで聞いていろ!」
と船長は専用の椅子に腰掛けて話しだした。
「この二人は預かりものだ。サン・アデレード港に帰り次第、テオドルス候にお渡しする。それまでうちで預かることになった。」
「そこでだ、隣の物置きを整備して使ってもらうことにした。最後まで二人で面倒をみてやれ!」
そう言われた二人は部屋を出ていくと隣の部屋からガタガタと音がし始めた。
デニスが私のためにベッドを作ってくれているのね。
「で、姫様。姫様はこれからどうなさりたいのですか?」
船長のだみ声で楽しい妄想が破られた。
「テオドルス候には助けて頂いて感謝しています。でも、城に入るのは遠慮したいわ。できれば街の人々の中で暮らしてみたいのです。」
船長は苦い顔をますます苦くして、
「姫様、お気持ちはお伝え致します。が難しいと思いますよ。何よりも姫様の身の安全が保証できるかどうかでございましょう。」
「あら、あの二人が守って下さるのではありませんか?」
とうとう船長は吹き出してしまい、剣を振る真似をして、
「あいつらはこっちはからっきしですよ。国に帰られるという選択肢はないのですか?」
とたんに気持ち悪い顔を思いだし、悪寒がした。
「あんなならず者の妻になるなんて考えただけでもおぞましい。」
「しかし、姫様が戻らなければ妹姫様が身代わりということになりはしませんか?」
この妹は私の同母妹のサブリナのこと。2歳下なのだけれど意地悪なの。嫌いじゃないけどね。
「あの娘なら大丈夫よ。」
目が生まれつき不自由なのだけれど、他人の心はよく見透すの。
その上で嫌いな人には嫌な夢を見せるという能力を使うわ。
あの男も嫌われなければいいけど・・同情するわ。
船は順調に進んでいるようだ。
窓から見上げれば帆が風を一杯に張らんで、吹きぬける風が心地よい。
「ねぇ、ソフィ。あなたはほんとは国に残りたかったんじゃない?私に無理に付いて来てくれたんじゃないの?」
ソフィは、キッと黒い瞳を向けると、
「姉様、私は姉様と一緒に行くと決めたんです。幼い頃から私を庇ってくれたのは姉様だけでした。そのおかげで私は生きてこられたのですから。」
ふぅ~ん。私はみんながいじめるこの子を助ける自分がカッコいいと思っていただけなんだけど。
「何を言うの?ソフィ、あなたは大切な妹なのよ。当たり前じゃない。」
このセリフもカッコいいかしら?
「ソフィ、デニスを呼んでくれる?」
「姉様、あの者を近づけすぎるのは感心しません!」
デニスは私のデニスよ!もうそう決めたの。
「大丈夫よ、ちゃんと節度を持って接するから。あの子の持つ不思議な未来の色をもう一度確かめてみたいの。もしかすると私たちの未来に影響があるかも知れないから。」
ホントはそんなに真面目な理由じゃなくて、あの子に触れていると感じる不思議な高揚感を楽しみたいの。
真面目なソフィはそんなこととも知らず、部屋の前に控えているデニスに伝えに立った。
扉を開けると控えの椅子に座っていたのはテオだった。
「デニスはいるかしら?お姉様がお呼びなんだけど?」
テオはソフィの顔を見ると顔を赤らめて目を逸らし、
「デニスは甲板で仕事中です。手は離せないと思います。」
ソフィの後ろから、
「私たちも甲板に行ってもよいかしら?」
ソフィがビックリして私を振り向き、
「姉様!危険すぎます!」
テオは意表を突かれ、「こ、困ります!」
「ここ、暑いし。少し風に当たりたいの。いいでしょう?」
テオはドキドキしながら、慌てて座っていた椅子を蹴飛ばしながら、
「船長に聞いてきます!」と走り出した。
あら、ちょっと可愛いわね。
「ソフィ、外に行く準備しましょう。」
「女と分からないカッコウをして下さい!」というテオの前にはフードを被ったカッコウの二人が立っていた。
「これでいいかしら?」
「は、はい。そして外では喋らないでください。」
といい終わるまえに私は歩き出していた。
「ま、待って下さい!自分が先導します!」
炎天下の甲板は風が吹き抜け暑さの割に涼しいのだが、フードは暑い。
「あぁ、暑い!倒れそう・・」
とエミィはクラッと倒れかける。ソフィが慌てて支えて、
「姉様、やはり戻りましょう。」
「いえ、大丈夫よ。テオさん、フードを取ってよろしいかしら?」
テオは慌てて、
「ちょっと待ってください!」というと倉庫に椅子と傘を取りに走った。
ごめんなさいね。からかい過ぎたかしら?
椅子を船長室の壁沿いに据えテオは二人を座らせた。大きな傘を拡げ持って日差しと人の目を遮った。
以外に気が利くのね。使えるかも・・
甲板の中央でデニスが扱ったものを一人の男が舳先へと持っていった。
海に向かって投げると、それは海には落ちずにバッと花のように開き船の前へそして上に向かって登って行った。
「デニスが帆布のハギレで作ったんです。パラ・・えぇ~とパラ(シュ)ートというらしい。」
「パラートですか?何に使うのですか?」
エミィに話しかけられて、頭に血がのぼったテオは吃りながら、
「え、えぇ~と、エクストラセイル(順風時の補助帆)になるかもしれないんです。」
ふぅ~ん。やっぱりデニスは面白いわね。




