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4−6 船長

 翌日、技師長と城に向かった。

 大手門前にある騎士団駐屯地ではなく城内の特別騎士団駐屯地らしい。


 特別騎士団は、テオドルス候直轄の騎士団、王国であれば近衛騎士団と呼ばれる部隊・・である。しかし、実態は役に立たない貴族達の名誉職のような側面があった。


 駐屯地の門を潜ってのち、会う騎士は皆きらびやかな装いであった。

 あっ、あの剣の装飾どこかで見たことがあると思ったら、砦にいた女騎士ララの剣と同じ装飾じゃないか?


 技師長に聞くと同じ装飾でも縁の色で部隊が違うらしい。

 技師長は、おまえは細かいところに気が付くなぁ。と言いながら教えてくれた。


 特別騎士団は5部隊があり、第1から白、黒、赤、青、黄となっているらしい。


 ララは確か『青』であった。

 技師長に、「第4部隊とはどのような部隊でしょうか?」

「しっ、」と人差し指を口に当て、回りを気にしながら、小声で「後でな。」何か訊いてはいけないことを訊いたみたいだ。


 しばらくはしゃべらずに奥に進んだ。

 その部屋には4人の人が面接官のように並んで机についていた。

 技師長は一番端の席を用意され僕はその後ろに控えた。

 太陽の光が降り注ぎ明るい部屋は簡素な装飾のみで、どこか殺風景でもあった。


 他の4人は軍服を着ていて背後に副官を従えていた。1人だけ僕と同じような軍人ではない者がいた。

 こちらを見て会釈してくれたので僕も会釈した。

 好青年に思えた。

 後で会うことになろうとは思いもよらなかったが。


 佩剣の飾りが青の縁取りであるのが目に止まった。向こうから2番目の騎士だ。

 この人にララのことを聞けば教えてくれるだろうか?


 面接?尋問?の受験者用の椅子は一つ置かれていた。


 やがて、ドアが開き船長が入って来た。

 見るからに痩せ細り、憔悴した表情だった。


 騎士の一人が、

「名乗ってください。」

 憔悴した顔を正面に向けて、鋭い眼光で睨み付けると、

「商船エメル=ハル号船長フィリップ・ガーネット。」

 と言うと僕に気づいたのかどうか、一瞬こちらを見た気がしたが平静に質問に答えだした。


 エメル=ハル号が王国近衛軍の船を振り切りサン・アデレード港に帰りついた。

 船長は役場へ帰還と物資の輸送の挨拶を済ますとウルマン大森林の村への援助物資を積み込み、後から入港してきた王国近衛軍の船が去るのを待って出港した。


 ハンナ岬近くで援助物資を降ろすため、唯一と言っていい狭い泊地に錨を降ろすとボートで上陸した。


 村には二つの集落が出来ていて、人数も少し増え、食料も魚が捕れるようになって生活は少し楽になっていた。


 村長も交代時期に来ていてクリチュという者が村長代理になっいた。

 その、クリチュから石炭の発見が報告された。


 向こう端に座る騎士が「これだな。」と現物を取り出した。

「専門家に見せたところ良質で、どこでも欲しがる品質だそうだ。」


 現地を確認しましたが、地層が露出している場所があって、露天掘りが出来ると思う。

 その場所は海に近いので桟橋を造れば直接、船で運べると思う。


「技師長!どう思う?」の声に、

「ハンナ岬の近くだと海が荒れるから時期は限られるし、うまく泊地があるといいが?」


「泊地は狭いがエメル=ハル号が停泊できるほどの広さはある。」


「船長、それで何事があったのだ?エメル=ハル号の単なる事故ではないのだろう?」


 船長は続きを語った。

 村に着いた翌日から村人総出で物資の荷揚げを行った。


 夜になり、静かになったところ船長が泊まった村長の家と反対側の集落で騒ぎが起こった。

 何人かが走って確認に行ったが戻って来なかった。

 その夜はそのまま明けた。


 朝、クリチュらがもう一度確認に行くとそこは血の海であった。

 家という家を捜して、やっと女3人と赤子を含む子供4人を見つけた。


 話によると、いきなり猿人が襲って来た。それも剣や槍で見境なく殺しまくった。子供が悲惨で生きたまま喰われるのを見たとも言った。

 男たちは抵抗したらしい。

 その男たちの頭は空にされ、広場に並べられていた。


 あの砦で見た光景だ・・

 もしかすると勇敢な敵に敬意を表してのことなのか?


 船長は続ける。

 村長代理のクリチュと話して、残りの村人を避難させることにした。

 避難場所は洞窟神殿と呼ばれているところで、残りの村人全員が入れるという。食料や武器を持ってその日のうちに避難した。


 次の日、村を見に行くと、案の定荒らされていた。

 エメル=ハル号に女子供を乗せて避難することにした。

 ところが、その夜、エメル=ハル号が座礁した。傾斜した船体、マストが大きく傾いた。マストは断崖の上の森にまで倒れ込んでいた。

 早く、森の中で木々ともつれたマストやロープを切り離さなければ、満潮で船体がバラバラになる危険があったのでメインマストを自ら倒した。それでなんとか、満潮で船体が復元することができた。


 原因は判らないが、錨のロープが切れていた。切り口を見ると刃物で斬ったようであった。


 その夜からは、洞窟の入り口に頑丈な門を付けて、やっと眠れるようになった。


 このままでは、ジリ貧になると判断して応援を求めるために戻ってきた。

 テオなどの船員の一部は向こうに残って闘っている。

 早く、援軍をお願いしたい!


「他ならぬフィリップ海軍司令の頼みだ、至急に体制を取ろう。」

「船長、猿人は剣や槍を使っていたのか?弓矢は?」

「弓矢を使うものもいた。もはや猿ではない。人類の大きな脅威だ!」


 テオ!テオは村にいるのか!

 船長!ありがとうございます!

 僕がいるのに気づいて色々話してくれた。

 それにしても海軍司令?驚くばかりだ!

 船長のお陰でエミィたちのことはテオドルス候の宮廷には知られていない。

 テオは村で生きている。

 アツギは無事に着いた。

 猿人は集団行動している。


 尋問会は船長の退席で終わった。

 一息ついた騎士たちは、

「収容所砦の被害状況と似ているな。ヤリガ隊長どう思う?」

 ヤリガ隊長と呼ばれた騎士が第4部隊長なのだろう。

「判らぬな。派遣した騎士もまだ帰って来ないからな。」


 技師長が要らぬ者は去るとばかり立ち上がり、

「必要な時はお声がけください。」と席を後にした。

「あれ以上聞いてはいかんよ。」

 さっさと城から役場へ戻った。


 途中、「青縁装飾の話だがな、特別騎士団には色々あってな、特にあの部隊だけは特別だ。冤罪も平気な部隊だと覚えておくといい。」


 そして、「さあ!俺たちは水道を造ろう!」

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