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4ー2 

 その晩の営業は大変だった。

 何て言ったって、ホールに美女2人が現れたのだ。

 客が騒ぐ、騒ぐ。


 特にソフィは人気で、お酒の勢いでお尻を触ろうとするものが後を絶たない。

 ついにパウラが「手を出したものは出入り禁止にする」と宣言してやっと収まった。


 そのソフィが料理を取りにきた時のデニスを見る目を母は見逃さなかった。


 エミィはああ言ったものの、何をすればいいのかさっぱりわからなかった。

 食堂の厨房に初めて入り興味津々であったのだが勝手がわからない。

 一つずつデニスに教えてもらう。手取り足取りが楽しくて張り切りすぎて、派手に皿を8枚割った。


 営業が終わり、ほっとした空気が流れる中パウラは、テーブルに余り物で作った遅い夕餉を並べて

「皆さん、今日はありがとう。いっぱい食べて下さい。今晩は2階の部屋を使ってもらっていいから泊まって行ってね。」


 お腹の減った皆は我先に料理を口に運んでいた。「お母さん、美味しいです!」店の雰囲気に圧倒されていたパリザが真っ先に料理を誉めた。


「母さん、その事なんだけど暫く皆を泊めていいかな?」

 パウラは願ってもないとばかり、

「うちは大歓迎よ!人手不足で宿屋の方はまだ開業できていないから部屋はあるわ。明日からも手伝ってもらえると嬉しいんだけど?」

「もちろんです!」意外にもソフィが応えた。


 皆を部屋に案内して、やっと母と向かい合った。

「テオが帰って来てね。あなたを途中で降ろして、船はそのままあなたを置いて帰ってきてしまった。」

 と泣きながら謝るテオに、

「あなたが悪いんじゃないでしょ。それに死んだと決まった訳でもないし。」

「そうだけど。」

 と言うと、「これデニスの取り分だから。」

 とパールをくれたわ、この店はそのパールを換金したお金で買ったのよ、ありがとうデニス。


 テオが言うには、あなたが店の名前を『船と桟橋』にしたいって言ってたって。

 だから、この名前にしたのよ。あなたが帰って来た時に分かりやすいようにね。「デニスお帰り!」

 母に抱き締められたのはいつ以来だろうか?


 「テオに、お礼を言いたいんだけど、どうしてる?」

 「テオはあなたを置き去りにしたことを悔やんで、また、エメル=ハル号で捜しに出たわ、行き違いだったわね。」


「ところでデニス、カグヤさんとサヨさんのどちらが本命なの?」

 えっ、何それ。

「そんなこと考えたことないよ!」

 そう?なんかニンマリしている母であった。


 エミィは部屋に落ち着き、今日のことを思い出していた。

 その時、ドアを叩く音がして、

「いいかしら?」デニスの母がホットワインを2つ持って入ってきた。


 ホットワインを一つ手渡し、腰をかけると、

「カグヤさん、いや、王家の姫様ですよね。」

 特に驚きはなく、

「いつから、おわかりでしたか?」


「最初にお顔を見た時から。」

「この目ですか?」

「それが一番ですが、オーラが違いますよ。」笑顔で答える母であった。


 少し話をさせて頂いてよろしいですか?と断り、詰まならければ言ってくださいねと母は話し始めた。


「デニスの父はウーゴといい、王立歴史編纂室の主任研究員だったんですよ。ウーゴから王家には、ときたまヘテロクロミアの姫が生まれることがあると聞いていましたから。」と笑顔で言うとウーゴの人生を語りはじめた。


 ウーゴは史書と史跡を調べ、この世界は人類の前にも支配者がいた、と結論付けました。

 その支配者とは、魔族または神族と呼ばれる者たちであったと記しています。


 魔族は強力な魔力に永遠に近い寿命を持っていましたが、互いに個性が強すぎ連携できないばかりか、争ってばかりいました。

 それに皆一様に生殖能力が極端に低かったようです。


 彼らはそれぞれが自分の領分を守るだけで手一杯であったようです。

 知らず知らずのうちに人類という蕃族が急激に繁殖し、大陸中に拡がるのを見過ごしてしまいました。


 やがて人類は火を手にし、鉄を手に入れました。そうすると魔族の中には人類に敗れる者がでてきました。

 領地を保持出来なくなり放浪魔族となり他の魔族を襲って、ある者は相手の魔族の領地を手入れ、またある者は他の魔族に倒された。

 そうして魔族は数を減らして行きました。


 その頃、魔族の中で人類と共存しようとする一派が出てきました、ここでは彼等を神族と呼びます。

 労働を人間にさせ、自らを崇めさせるということを始めました。

 人類が働き神を崇め奉るというルールが出来上がりました。


 人類と共存を選択した神族はなんとか生き残り、魔族は滅びに瀕することになりました。やがて神族のひとりが人類との間に子孫を儲けたのです。


 この子が初代ランザニア王です。

 第3代ベラクアイリン・エイランティスが貴女と同じヘテロクロミアだった、そして彼女の魔力は魔族と変わらないほど強かった。

 彼女の行う奇跡は国民を熱狂させたそうです。


 というのが、ウーゴの研究成果でした。

 この論文を発表した途端、彼は異端者として王国を追われ、あちらこちらを転々とした末にここに流れてきました。


「そうだったのですね。私が王宮で聴かされた創生の神話とはかなり違いますが、疑問に思っていた処の説明としては納得できます。でも、別の疑問も出てきました。」


「別の疑問ですか?」

「魔族は誰に変わって世界の支配者になったのでしょうか?そして、人類の次は誰が支配者になるのでしょう?そしてそれはいつなのでしょう?」


「私の力は同じヘテロクロミアのベラクアイリンに遠く及びません。王家の人間が魔力を使えたのは6~7代前までです。今の王家の人間はちょっと感じるといった程度です。私はそれよりは少しましといったところでしょう。」


「ところがデニスの手を握った瞬間に魔力が身体中に溢れ、いろいろな力が使えるようになりました。この人は天が遣わした私の無二の人なんだと思いました。」


「デニスがですか?」

「そうです。デニスが私の希望になりました。デニスが私に生きる勇気を与えてくれました。」

「私にはデニスが必要です。」


 パウラは満面の笑顔でエミィを見ていた。

「デニスは幸せね。でも、困ったわねぇ。貴女の妹さんのデニスを見る目は恋する女性の目だと思うわ。」


「そうですね、わかっているんです。私がデニスを追いかけるとどんどん逃げていくんです。そして、その先には妹が待っているんです。二人の相性は抜群なんです。私にはどうしようもない。でも、私にもデニスが必要なんです。この力をやがて世界のために役立てるためにも。」


「何か方法があると思うわ。私も考えてみましょう。」

 罪な子ね、こんな美しい姉妹に愛されるなんて。

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