1−2 2人の少女
甲板長と店主が話し込んでいた。
「副長、2つですか?」
副長?甲板長は店主を副長と呼んだ。
この関係は何だろう。
店主は、奥から袋を二つ持って来ると「礼金だ!」と言って甲板長に渡した。
「副長、どっからこんな話を持ってくるんですか?」
店主はニヤリと笑うと「まあな」と口を濁した。
「テオ、デニス。買い付けするんだろ?」
と言うと甲板長は店主と3人の護衛と共に店の奥に入っていった。
「あなた達は幸運です。」
イントネーションの少しおかしな店員が棚から小さな袋を出して来て言った。
袋の中を出して見せる。
中からはパールが出てきた。
「パールじゃねぇか?」
またまた店員が独特のイントネーションで
「あなたの金と交換します。」
テオは震える手で袋から全ての金を出した。
その量を量った店員はパールを一粒引っ込めた。
「デニスこれを買い付けていいよな?」
もちろん。これって東の最果ての国ヤーポンでしか採れないパールと呼ばれる宝石だよな。
いったい幾らになるんだろう?思わず笑みが零れた。
テオが肘で僕をつついてきた。僕は背を伸ばして無表情を装った。
パールの袋を受けとるとテオが懐に入れた。
店の奥から店主達が出てきた。
うん?二人多い。
深くフードを被った二人は、俯きかげんに護衛の後ろに隠れている。
「あのう、僕はデニスと言います。」
何故か、挨拶をするべきだと思った。
しかし、何の返答もなかった。
甲板長が、「行くぞ!」と言うと皆が動き出した。
甲板長が先頭、続いて僕とテオ兄ぃ、その後ろにフードの二人が続き最後に怖い方々で街を港に向かって下っていった。
初めは後ろが気になり落ち着かなかったが、街を過ぎる頃には気にならなくなっていた。
「テオ兄ぃ、何も起きなくて良かったね。」
テオがキッと僕を睨み付け、
「ここからが危ねぇんじゃないか?」
という頃には港湾関係の倉庫群の中の道を歩いていた。
いきなり護衛の剣士が剣を振るった。
飛んできた矢が二つに折れて落ちた。
「船に向かって走れ!」
剣士が叫ぶ!弓士が矢の飛んできた方向に向かって矢を番えた。
ビックリして剣士の方を向いた僕に、
「頭を下げろ!死にたいのか!」と甲板長の怒声が飛んだ。
「二人を連れて船まで走れ!」
甲板長からの命令で一人の腕を掴んだ。
柔らかい・・女・・思わず手を離した。フードの中からの目線に刺し貫かれたような気がした。
「走ります!」
一番に走り始め、後ろを見ながら三人が付いて来るのを確認した。
その瞬間フードの一人が転んだ。
僕は慌てて戻り、二の腕を掴んで助け起こした。
「大丈夫ですか?」
「心配せずともよい!」と起き上がって何とも言えない優しい瞳が僕を見ていた。
もう一人のフードも駆け寄って来て、
「姉様、大事ございませんか?」
この人も女性、姉妹なんだこの人達は・・
とりあえず「急ぎましょう!」と僕は再び走り始めた。
目の前にエメル=ハル号の巨体が聳え立つように迫ってきた。
船のタラップを武装した船員達がわらわらと降りてくる。
ゼェゼエ言いながら彼等の影に入った。
テオ兄ぃも横で膝に手をついて息を整えている。
フードの二人はと見ると座り込んでしまっていた。
「み、水を・・」
降りてきた船長がブリキの水筒を手渡すとそのフードは自分では飲まず、もう一人の僕を見つめたフードの方に飲ませた。
「ゴクリゴクリ」と音が聞こえ、次にはもう一人のフードへと水筒を押しやった。
その間にも武装した船員達が盾を構え、その後に弓士を従えて倉庫の道へと向かって行く。二人の士の応援と撤収のために。
座り込んでしまった二人のフードの横で身構えていた僕とテオ兄ぃに船長が、「二人で船長室まで連れて行け!」
一人の二の腕を掴んで立たせようとすると、
「その方に触るな!」と横から声が飛んだ。
ちょっと頭にきた僕は、怒りを含んで、
「一人でこのタラップを登れるのか?」
先に何とか立ち上がった一人がもう一人を立たせようとフォローするが、なかなか立ち上がれない。
足首を擦りながら何か言っている。あまり聞き慣れない言葉だ。
ますます訝しく見えた。こいつら何だ!いったい。
「手伝って下さい。」
だろ、でもその前にごめんなさいだろ。
「ごめんなさい、足を挫いたみたい。お願いできますか?」
えっ、あっ・・どうぞ。としゃがんで背中を向けた。
「姉様、このようなものに背負われるのは・・」
その声を聞き流して、姉様と呼ばれたフードは、
「お願いします。」とおぶさってきた。
背中に柔らかさを感じる、後ろに回した腕に触れる感触が何とも心地よい。女性とはこんなに柔らかく良い香りのするものなのか?
今一人はテオ兄ぃが支えながらタラップを登って行く。
その間、僕は心地よさで重さも感じなかった。
タラップを登り甲板に出ても背負い続けて甲板上にある船長室の椅子に降ろした。
「ありがとう。」と言う言葉がふわっと僕の頭に降りてきた。
あっ、もう終わり?夢心地の一瞬であった。
「いえ、このくらい何でもありません。」
少女はフードを取った。
ブロンドのカールが軽くかかった髪が肩まで伸びて色白の顔を引き立ている。誰が見ても美人である。いや、絶世の美女と言うべきか?
そして、左右で違う目の色が僕の目を引き付けて離さない。ブルーとブラウンのヘテロクロミアだ。
「私はエメルディララ・エイランティス。エミィと呼んで。」




