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3−5 サンジューク砦

 エミィとフェンリルを連れて戻ると、既にムジアとアツギが帰って来ていた。

「砦の中は悲惨な状況です。姫様方は見ない方がよろしいかと思います。」


 しかし、向こう側に渡らないわけにはいかない。

「砦を襲った者、目的は何か分かりましたか?」

「遺体は全て首を切られて並べられておりました。何かの儀式に使ったのではないでしょうか?」


「砦のあちこちに猿人の毛が落ちておりました。襲ったのは猿人で違いないかと。」

 猿人がなぜ人類を襲うのか?今までうまく住み分けしていたのではないか?


「猿人に何か変わったことが起こったのだろうか?」

 豆芝の頭を撫でながら、

「フェンリル!何か知っているでしょ?」

 うぅ~ん。

「どうしようかな?」


 その様子に、エミィは、

「もういらないわ!今度の首輪はどのくらいになるかしら?」

 フェンリルはブルッと身体を震わすと「お願いします!話させてください!」

 みんなが笑う中、パリザが豆芝を膝に抱いた。


「自分はしばらく大森林の中にいたので小猿を使い魔にして話を聞いておりました。何でも猿人の中から王が現れ、猿人たちを率いて大森林の中を駆け回り西側をほぼ統一した。と聞きました。」

 フェンリルが心話で語る間、パリザの膝の上で気持ち良さそうに目を瞑っていた。


「困ったわね?」

「このまま進んでもいいのだけど、村が猿人の侵略を受ける可能性があるわね!ほって置けないわ。」

「フェンちゃん、猿の王の居どころを探してちょうだい。」


「え~、自分ですか?嫌だなあ!」

「パリザちゃん、もっと小さな犬の方がかわいいわよね?」

 フェンリルはパリザの膝から飛び降り、

「行ってきます!」と飛び出して行った。


「アツギ、砦の様子詳しく教えて!」

「砦には200や300の兵がいたと思われます。あちこちに闘いの跡がありました。最も激しかったのは亀裂側ではなく上流側でした。猿人は上流側から主攻し砦を落としたと思われます。」


「砦の中は、馬場に兵の首が北に向いて150程が並べられていましたが、脳と目はありませんでした。」

 これを聞いた瞬間、パリザが吐き戻した。アツギは思わず腰を浮かし「パリザ!」と抱き止めた。

 すかさずソフィが寄り添い木陰に横たえた。


「最も北側に祭壇が設けられていました。でも、最も問題なのは武器が全て持ち去られていることです。」

 武器・・使えるのか?

「皆さんも同じ疑問を持ったと思います。猿人が弓を引けるのかと?」


「私にも確たる意見があるわけではありませんが、彼らを率いる力があるものが教えればあるいは可能かと思います。」

 出来るのか・・

 砦全ての武器を持った猿人・・


「何をする気なのだ?」僕は吐き捨てるように言った。

「大陸の征服かな?」エミィが当然のように言う。

「猿人ごときが・・」そう言ったソフィにエミィが、「猿人ごときとは人類ごときともなり得るのよ?」


 エミィ様は、人類が絶対とは思っていない。いつか、人類に代わるものが現れる可能性を考えていた・・ということか?

「猿人が新猿人に進化して、人類に取って変わろうとし始めた。と考えるのが自然ね。狂暴さはどっちもどっちね。ズル賢さでは人類の圧勝かしら?」


「まず、村の安全を考えると誰か知らせに行くべきね!」

「アツギ行ってくれる?」

 アツギは躊躇した。パリザが心配だ、だが村の家族も心配だ。ムジアに行かせても上手く説明できないだろう。


「分かりました。行ってきます!」

 エミィは腕からオハンの盾を外し、

「これを持って行きなさい。必ず役に立つわ!もし、村が襲われた時は洞窟の神殿に逃げて。入口をオハンの盾が塞いでくれるわ!」

 アツギがパリザに挨拶をすると大森林へと戻って行った。


「姫様、ここにいるのも危険だと思います。砦に移った方が守り安いと思います。」周囲を見渡しながら猿人が今にも現れるのではないかと思わずにいられなかった。

「どうしよう?砦のほうがいいとは思うけど片付けなきゃね!」

 特にパリザには見せられない光景だ。


「ムジアさんが言うには、砦の司令官室は無傷だそうです。姫様方はこの部屋でお待ちください。片付けは僕とムジアさんでやります。」

「お願いするわ。最後に炎で天に帰してあげたいからね!」

 こうして僕らは倒木の橋を渡って砦に入った。


 片付けます。とは言ったものの夜になっても終わらなかった。どうしても丁寧に扱うので時間がかかった。

 僕は掘った穴に頭をひとつひとつ納めていった。

 結局、エミィの祭祀が行われたのは明け方だった。

 朝日に向かって皆で手を合わせた。


「デニス、綺麗に天に登って行ったわ。」

 エミィは僕を見詰めると不穏な発言をした。

「私もデニスと天に上る気持ちにさせてね!」

 はい、はい、この手の冗談にやっと馴れてきた。

 エミィはぶすっと面白くなさそうな顔をデニスに向けると「いけず!」


 僕とムジアは少し休み、朝食を採ると砦の探索に出た。

 望楼からは遠くまで見渡せた。見渡す限り平原で反対側は大森林だ。


 地下の酒蔵であったろう倉庫に降りたとき奥の壁の板の張り方に違和感を覚えた。

 壁を叩くと明らかに向こうに空間がある。

 端と思われる場所にナイフを差し込む。壁が音を発てて外れた。


 中を松明で照らすと、そこには奥の壁を背に、こちらに剣を向けて構えている騎士がいた。

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