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3−3 大森林2

 エミィはオハンの盾で皆を守り、グングニールの槍で猿人の大将を倒した。

 ソフィは神剣ソハヤで猿人をなぎ倒した。

 僕は何も出来なかった。

 僕は何をしてるんだろう・・

 護るどころか護られているじゃないか・・


「落ち込んでるの?ダーリン。」

 エミィが横にすり寄ってきた。

「愛する姫様の危機に何も出来なかった。それどころか護ってもらった。これでは存在価値がない・・」って思ったの?


「大丈夫よ!ダーリン!あれは私やソフィが闘ったのではないわ。神器が自ら闘ったのよ。グングニールを投げ槍にした時もソハヤとの連携が必要だった。回収のためにソハヤがソフィを使ったの。」

 デニスに寄りかかり、

「だから、ダーリンが落ち込むことはないの!」

 いやぁ、落ち込むでしょう?それに『ダーリン』って?エミィの体温を感じながらうれしいのか?迷惑なのか?わからないや。


 パリザはただただ震えていた。猿人の攻撃は心の底から怖いと思った。

 周囲に猿人の喚き声が反響した時、それだけでも恐ろしかった。次には石が飛んできた。それも右から左から飛んできた。震えながら頭を抱えてうずくまることしか出来なかった。


 姫様が大楯を出してかくまってくれなかったらケガで済んだだろうか?

 ただただ、村に居たくないだけでついてきた。なのにこんなに怖い思いをするなんて・・


 横にアツギがいてくれることで安心できた。

 アツギの妻はパリザの乳母だ、アツギは父親同然だった。

 もしアツギがいなかったらあの毛むくじゃらの猿人に捕まっていたかも知れないし、死んでいたかも知れない。

 怖い、怖い、こわい。


 やっと小休止となり、息を整えると恐ろしさがこみ上げてくる。

「ガオー!」遠くで大グマの声が聞こえる。

「ギィー!」「ギョー!」

 猿人の喚き声を聞こえてきた。


「死んだ大猿の血の臭いに誘われて大グマがやってきて、ちかくの猿のコロニーを襲ったみたいですね。大グマも一頭ではなさそうだ。」

「ちょっと休んだらもう少し離れましょう!」


 大グマが猿人を襲う場面を思い浮かべると寒気がしてきた。

「パリザ、震えているわ。怖かったのね。」エミィがハグして落ち着かせてくれた。

「姫様!私怖いです!」涙が頬を濡らしている。

「大丈夫よ!私がいるからね。」


 アツギが心配してパリザのそばから離れないが、どうしていいのか?わからないままオロオロしている。


「そろそろ出発する。」ムジアが宣言した。

 僕は重い腰を上げ足を引きずるようにして歩き始めた。


 夜営地で、アツギとムジアが話している。

「猿人のコロニーがあんなとこに出来るなんてどういうことだろう?」

「拡がっている。」ムジアの答えに

「猿人の数が増えてコロニーが拡がっているということか?」

「そうだ。」

「大森林で何かが起こっているのか?」

 と

 アツギが夕飯時に皆に話し始めた。

「明日の昼過ぎには大森林を一旦抜けます。しかし、大森林の終わりには大亀裂があります。幅は30メートルぐらいですが、高さは50メートルはあります。登り降りは不可能だと思います。」

 その話にビックリしたソフィが、

「では、向こう側には行けないのですか!」

「そうではありません。方法が二つあります。」

 エミィが「あまりいい話ではなさそうですが、教えてください。」

「ひとつは、亀裂に沿って少し遡ると対岸に砦があります。辺境防衛の砦です。この砦からこちら側に吊り橋が架かかっています。」

 皆一様にほっとした雰囲気が流れた。

「でも、この橋を渡っても砦に入れてもらえないのです。前回もだめでした。矢を射かけられたほどです。」

「こちらから味方がやってくると想像ができないんでしょう。」


「もうひとつの方法は?」

「大亀裂に沿って3日ほどさかのぼります。亀裂の幅が5メートルほどになつている場所で岩が覆い被さって橋代わりになっている場所があります。」


「3日ですか?かなり遠回りですね。」

「行くのに3日、帰るのに3日で6日のロスです。」


「どちらにしても砦までは行く必要があります。行って見ましょう。」エミィの一言でとりあえず砦まで進むことになった。


 その夜、皆が寝静まるとソフィが突然、発狂したように大声を上げ、苦しそうにのたうち回った。

 エミィが飛び付いて鎮まらせようとしたが、一度目は降り飛ばされて僕の横に尻もちを着いた。

「これが神器の代価よ!手伝って!」

二人掛りで抑えて、三人で抱き合って寝る形になっていた。

 やっとソフィが軽い寝息をたて始めたのはそれから1時間もしてからだった。

 ソフィは大丈夫なのだろうか?毎回こんなことが続くと身体がもたないのではないか?と思うと寝顔を観ながら愛しく思えていた。

 


 次の日、前方が次第に明るさを増して来て、大森林の終わりが見えてきた。


 異変に気づいたのは、大亀裂から対岸の砦を見た時だった。

 砦の外壁は、あちこちが崩れ落ちていて、そこから見える内部の建物は焼け焦げていた。


「何があった?」デニスは吊り橋が有ったであろう場所からじっと見てみる。


 ソフィが「これは何でしょう?」デニスの後ろから切り株を見て言った。

 大木の切り株なのだか切り口がおかしい、斧や鋸で伐ったようではなく、何か鈍器で力任せに伐ったような後だった。


 谷底を覗いたデニスは、そこに伐られた木が落ちているのを見た。

「誰かがここの大木を切り倒してここに橋を架けようとしたみたいだ。」


「成功したのだろうか?」

「成功したので砦が燃えているのでは?」

「誰がそのようなことを?」

「猿人だ!」ムジアが一言で言いきった。


「猿人にそのような知恵があるのか?」

「変わった猿人が現れたか、偶然か?」

「わからん。」


「猿人はなぜ砦を襲ったのだ?」

「大森林が手狭になったか、人間を敵と認識したか?」

「どちらにしても村にとっていい話ではない。対策が必要だな。」


「デニス、ソハヤの剣で一番大きな木を伐ってちょうだい。橋になるように倒すのよ!」

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