3−1 出発
エミィはソフィと僕を洞窟の神殿に呼んだ。
「今日、呼んだのは神器たちにとってこの地が平穏な場所でなくなりそうだから外に出してあげようと思うの。」
エミィの指示で松明を神殿の入口の左右に置くとエミィに続いて神殿の入口をくぐった。
「デニス、来て!」
僕の手を取ると『天乃勾玉』をかざす。
背後で扉の閉まる音がすると同時に部屋が大きくなった。
正面の祭壇に並んだ3つの神器。ソハヤの剣、グングニールの槍そしてオハンの盾。
その内からグングニールの槍を取ると、エミィは右手に持った『精霊の勾玉』と呼ばれる小型な勾玉を槍の石突にあてると祈りを捧げる。と光を放ちながら『精霊の勾玉』はグングニールの槍の中に吸い込まれて行った。
「デニス、振るって見て!」
構えると重さを感じない。
これは・・?
「その槍はデニスの槍になった。長さも重さも思いのままよ!早く使いこなしなさい!」
自分の手と一体になったようなこの感触・・
「デニスはどの神器も使えるがグングニールがデニスでないと嫌らしい。」
「ソフィ、覚悟は出来ている?」
「はい!姉様。」
どういうこと?
エミィが一言説明してくれた。
「ソフィには神の加護がないの。神器を使うには代償が必要なのよ。」
代償?何を言ってるんだ・・
「ソフィ!あなたにはソハヤの剣を任せるわ。一緒に剣を握って!」
エミィがソフィが握る柄に手を重ねると、
「ソハヤよ!この者を認めよ!」
ソハヤの剣は『諾』と言う様に柄から剣先へ向かって光を発した。
「日頃は私が持っておくわ!使うときだけ渡すわね。かなり貪欲な剣だから。」
僕はびっくりして訊いた。
「その剣を使うとソフィはどうなるの?」
「あら、いつの間に呼び捨ての仲になったの?焼けるわ。」
「いや、そうじゃなくてソフィさんへの影響は大丈夫なんですか?」
「私にもわからないわ、ソフィとソハヤの相性次第なのよ。」
僕が頑張ってソフィにソハヤを持たせないようにしなきゃなぁ・・
神殿から出るとエミィは僕と二の腕を絡ませてソフィに見せつけるように
「デニス、私を護るのよ!そして抱いてね!」
ですから、その表現、誤解されますって!
「ソフィも頼むわね!デニスの手を握ってもいいから。」
僕のことを云われると何故か顔が赤らむソフィだった。
「姫様、どうしてここに僕達を連れてきたのですか?」
「冬が来る前にここを出て行くわ。」
「クリチュはああ言ってくれたけど、人の恨みはそう簡単ではないわ。まだ、まだ私に対する怒りが渦巻いているわ。事が起こってからでは村に迷惑をかけるからその前に出て行くのよ。」
「姉様、どこまでもお供致します。でも、どちらにどうやって行きますか?」
「大森林を北に向かって歩いて行くのよ!」
「大森林を北に抜けるのですか?」
そんなことが出来るのだろうか?
「そうよ!デニスの街に行ってお母様にご挨拶しなきゃ。」
「間もなくエメル=ハル号が迎えに来ると思います。待った方が安全です。」
「だ、め!」
「エメル=ハル号に乗ったら、テオドロス候から逃げられなくなるわ。私は自由に生きて見たいの!」
このわがまま王女様はどこまで突っ走るつもりだろう?
「姉様、いつ出発いたしますか?」
「そうねぇ、明後日でどうかしら?」
準備不足だ!村長も越えられなかった大森林だぞ。どうするデニス!
「姫様、準備期間が短すぎます。もう少し時間をください!」
「ごめんなさい。デニスの云うことを聞いてあげたいんだけれど、そんなに時間がないの、クリチュさんにこれ以上迷惑をかける訳にはいかないわ。すぐに準備して!」
その日から食料やサバイバルグッズを集め始めた。
クリチュさんには黙っていたが、この動きがばれない訳がなく
「デニスさん、何を考えているんですか?」
問い詰められて・・すべてしゃべってしまいました。
クリチュさんは怒るどころか、「恩人に気をつかわせて申し訳ない。」
止めてもあの姫様のことですから止まらないでしょう、自分に出来ることはやらせてください。と片棒を担いでくれました。
出発の朝、夜明け前に小屋をでた。
エミィとソフィの姉妹はフードを被って、僕は槍を手に荷物を背負って。
村はずれと言うか、大森林の入口に3人は立っていた。
「アツギと申します。」
「ムジアだ。」
壮年?老年かもと言う二人が目の前に立っていた。
「何かご用でしょうか?」僕が前に出て聞いた。
「クリチュから話を聞いた。」
クリチュさんから?
「女神様が大森林を渡る。道案内が必要。」
クリチュさんが道案内を付けてくれたってこと?
「お二人は大森林に詳しいのですか?」
アツギと名乗った背の低い方が、
「我らが村では一番詳しいですね。」
それはありがたい。
「クリチュさんの指示で一緒に行って下さるのですか?」
「そう思ってもらっていいです。」
「他にも何かあるんですか?」
背の高い方が、
「村長を捜す!」
行方不明の村長・・
「失礼しました、ムジアはいつもこの調子で困ってしまいます。」
「実は私たちは村長の家に仕えておりました。大森林も3人で一度だけ越えたことがあります。今回は皆さまの道案内を兼ねて、村長の行方を捜したいのです。」
話を聞いていたエミィが、
「ありがとー。お願いするわ。村長も手がかりがあるといいですね。」
「申し訳ないのですが、もう一つお願いがあります。」と言うと「お嬢様!」と声をかけた。
樹の陰から申し訳なさそうにパリザが現れた。
「あらぁ!パリザちゃん!」
少しおどおどしながら、エミィに近づくと
「姫様、一緒に連れていって下さい!」
いきなりパリザをバグして、耳許で一言二言しゃべるとパリザを離して、
「じゃぁ!6人で大森林に挑むわよ!」
パリザがデニスの顔をチラチラと見て顔を赤くしている。
姫様、何を吹き込んだんですか?
ムジアを先頭、アツギが最後と言う一行は大森林に入って行った。




