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【短編集】とある小説家の最初の10日間

小説家 7日目

作者: 七星涼花

 今日は、2025年7月16日。雨は上がり、窓の外には薄い日差しが差していた。冷房の音は相変わらず部屋を切り裂くが、今日は少し鈍く聞こえる。机の上には、書き始めた原稿が開かれている。私は、初めての作品を完成させた7月10日の手応えを胸に、また一日を始めた。


 ゴミ箱の中に、捨てたアイデアノートがちらりと見える。水と恐怖に関する物語を書こうと思った。しかし、指は動かない。水への恐怖が、怖かった記憶を呼び起こす。結局、ノートには手を伸ばさず、目を背けた。代わりに、小説家になってから1週間経過してした新人小説家の物語を書くことにした。


 300字を超えた頃、背中に熱が走る。空白の壁がまた立ち塞がった。水のイメージがふと脳裏をよぎり、鼓動が速くなる。でも、今回は怖くない。7月10日の達成感が、それを押し流す。キーボードを叩く指は確かで、一行、また一行。冷房の風が首筋を撫でるが、それはもう鋭い刃ではなく、優しい吐息のようだ。


 保存ボタンを押した。窓の外で鳩が鳴く。雨上がりの空気が、部屋に清々しさを運んでくる。水と恐怖に関する物語は書かない。それでも、この指は明日も動くだろうと思った。小説家としての7日目が、そう告げている。

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