寝床が決まる
「巫女様、失礼します!!」
「あら、ミリカさん。
おはようございます」
ここは教会に併設された住居区。
主に孤児院の役割をしている建物である。
その部屋の一室をミリカが訪れると、中からは百代が姿を表した。
実は奉納の舞を踊った後、神父から街に滞在している間は是非ともここに滞在してほしいとお願いされてここに泊まる事になったのであった。
カイトは自身が取っている宿屋の部屋があるという事で、そちらの方へと帰っていく。
「巫女様、身支度の手伝いをさせていただきますね」
「あらあら、それではお願いしようかしら」
奉納の舞からすっかり百代に心酔してしてしまったミリカ。
彼女は滞在中の百代の世話を志願し、夜から付きっきりであった。
今日も朝早くからやってきたのだが、巫女としての習慣から既に目覚めて身支度を整えていた百代。
とりあえずはと、彼女の長く美しい金色の髪を梳かす手伝いをすることにしたのだった。
「巫女様の髪は黄金のように美しいですね。
故郷でもさぞ持て囃された事でしょう」
「私の国では殆ど全ての人が黒髪だったので、金色の髪を持つ私は憧れよりも畏怖の対象でしたね。
恐らくは両親から受け継いだのでしょうが……物心ついた時には両親はいなかったですし」
「そ、それは……無神経なことを言ってしまって申し訳ありません」
百代の答えに恐縮しながら謝罪する。
だが、鏡越しに見る彼女はなぜ謝っているのか分からないという顔をしていた。
「何も謝る必要はないのではないですか?
私は髪の毛を綺麗と言ってもらえて嬉しかったですよ。
私を拾って育ててくれた方も、百代の髪は太陽のように眩しくて綺麗だと褒めてくれましたからね」
そう語る百代の顔はとても優しく、昨夜の女神を彷彿とさせるようでミリカは思わず見入ってしまった。
身支度を整えた百代とミリカは部屋を出ると、既に朝の食事の準備ができているということで食堂へと向かった。
食堂にはここで育てている子供が沢山おり、彼らは見たこともない格好をしている百代を見てわいわいと騒いでいた。
ベテランのシスターがその騒動を抑えながら、百代の事を紹介すると子供達はちゃんと静かになった。
しかし、興味はあるのかチラチラと百代に向ける視線は感じていた。
「すいません、巫女様」
「いえいえ、子供らしくて良いではないですか」
「この後のご予定は?」
「折角ですのでこちらの生活を学ばせて頂こうかと。
差し当たってはミリカさんが普段行っていることを見せていただいてもよろしいでしょうか?」