歩き巫女という存在
「この後は何処かご予定は?」
「それなんですけど……この地域の神様を祀っている場所はあるでしょうか?」
「神様を祀る……教会で大丈夫ですかね」
「あ、はい。
そこに行きたいです」
「ならばご案内しましょう」
「お世話になります」
道案内を買って出たカイトに連れられて教会に向かう道中、カイトは思っていた疑問を口に出した。
「モモヨさんは神職に携わる方なのでしょうか?
回復魔法も使われていましたし」
「回復魔法……というのはよく分かりませんが、神職に携わっていますね。
私は歩き巫女を生業とする者です」
「歩き巫女、ですか?」
「ええ、私の国では八百万と言ってその土地毎に祀られている神々がおられるのです。
その神様の元を巡って祈りを捧げ、鎮めの儀式を行う者が歩き巫女と言います」
「なるほど……つまり、特定の神様を信仰しているというわけではないのですね」
「ええ、神様でおるならば何でも私達が尽くすべきお方です。
歩き巫女とは、あらゆる神に仕えてその身を捧げる為にあるのですよ」
カイトが歩き巫女という聞き慣れない職業の説明を受けている途中で教会へと辿り着く。
「ここが教会です……失礼」
カイトは教会の門の前で来ると、その扉を数回ノックする。
「はいはい……おや、これはこれは。
よくいらっしゃいました、カイ……」
「カイトだ、初めまして!」
「え、ああ、はいはい。
カイト様ですね。
それと……」
「百代と申します。
よろしくお願いしますわ」
中から出て来た神父に対して、カイトはやや不自然に感じる挨拶を行った。
神父は一瞬は驚いたものの、カイトの後ろにいる百代に気付いて全てを察したようであった。
「はいはい、モモヨさんですね。
それで本日はどのようなご用件でしょうか?」
「実は、こちらに祀られておる神様にご挨拶をしたく。
ついでは、神に奉納する為の舞を踊らせては貰えないでしょうか?」
「ふむ……詳しい話をお聞きしても宜しいでしょうか?」
「ええ、実は……」
神父にも先ほどと同じ話をする。
その上で神への挨拶と共に舞を献上したいという話をすると、神父は興味深そうな顔で頷いた。
「信仰の垣根を超えて全ての神に奉仕する存在ですか。
そこまで神に身も心も捧げた者がどのような舞を驚くか興味がありますね。
お願いしても宜しいでしょうか?」
「もちろんです、それでは早速行いましょう」