奇妙な一団
「はぁ……なるほど」
エルーサの街で憲兵をやっているスキーヤ。
憲兵として数年仕事をしていた彼だが、今までに経験がないほどに奇妙な者達を相手にしていた。
一人は自由騎士として各地を旅しているというカイト。
その隣には見たこともない紅白の服を着ているモモヨ。
そして彼らに引き連れられてやって来た野盗達であった。
人目を引くこの一団がやって来た時、スキーヤはまさか犯罪者の引き渡しだとは思ってもいなかった。
何故なら、彼らはのんびりと談笑しながら詰め所までやって来たからだ。
普通ならばこのような場合、捕まった野盗達はみっともなく最後の足掻きをしているものである。
逃げ出そうとする者や、仲間に罪を被せようとする者。
だが、彼らが捕まえたという野盗は全員が己の罪を認めて大人しくしている。
そして更に奇妙な事が一つ。
「ですから、えーっと、彼らはそんなに悪いことをしてなくて……」
「彼らはモモヨさんを囲んでいたので助けに入ったのだが、刃物も抜いていなかったからね。
その辺りのことや彼女の意見も聞き入れて、罪が軽くなる分には配慮してほしい」
野盗の被害者であるはずのモモヨという女性と、それを助けたというカイト。
この二人は野盗達の罪が軽くなるような話しかしなかったのである。
これも普通であれば多少は大袈裟に話しても罪を重くさせようとする事が多い。
というのも、重犯罪者の引き渡しであればあるほどに懸賞金が高くなるからである。
何もかもがセオリーとは真逆の展開に唖然としながらも、スキーヤは職務を全うする為に気を取り直した。
「ええっと、そうですね……現在聞いた話から考えると彼らは大体一年ほど犯罪奴隷として働かされる事になるかと思います。
しかし、この程度ならば比較で安全な場所の刑務作業となる筈ですし、それを終えれば普通の市民に戻れますよ」
「わぁ!皆さん、一年頑張れば元の暮らしに戻れるそうですよ!」
「女神様、ありがとうございます!!」
「俺ら、一生懸命償ってきます」
「刑務を終えても二度とこんな犯罪には手を染めません」
野盗達の決定に百代が喜んで声をかけると、彼らは涙を流しながら感謝の言葉を口にした。
これまた見たことのない光景に、またもや唖然とするスキーヤの肩をカイトがポンと叩いた。
「こういう女性だから彼らも心を入れ替えたようなのだ。
きっとこの先は真面目な民として国の力になってくれるだろう。
彼らの扱い、よろしく頼むよ」
カイトはそう言いながらスキーヤにチラリと手の中の何かを見せた!
その瞬間にスキーヤは青ざめ、呆然としていた顔が途端に引き締まる。
「か、かしこまりました!!」
こうして、モモヨ達を襲った野盗達は憲兵に引き渡された。
彼らは主に教会周りの雑務を進んで行い、服役後はそのまま入信してその身を捧げたのだとか。