心を改める
本当に怪我が治ってしまったと分かれば野党達も厳禁なもの。
すっかり大人しくなって百代の治療を待ち始めたのであった。
そうして十数分後……全員の傷を撫で終わった百代は彼等ににっこりと笑顔を向ける。
「これで大丈夫ですよ。
もう悪いことしちゃダメですからね」
その笑顔を見た野盗達の瞳からポロポロと涙が溢れ始める。
「め、女神様……」
「おれ、人にこんなに優しくしてもらったのは初めてだ」
「約束するよ。
必ず罪を償って真っ当に生きるんだ」
野盗の口から次々と謝罪と反省の言葉が湧き出てくる。
カイトは今までもこうした野盗を捕まえた事はあったし、同じような反省の弁を何度も聞いていた。
だが、その者たちは罪を軽くしたいだけのその場限りの謝罪であり、本当に心から反省していないのは外から見ていれば丸わかりであった。
だが、百代の優しさに触れた彼等の目からは濁りがなくなり、全員が純粋に輝いていた。
彼等の言葉には一切の嘘がない……今までに沢山の野盗を捕まえてきたからこそ、そう信じられるカイトであった。
「お前たち、自分の足で街まで歩けるか?」
「へい、勿論です」
「是非ともあっしらを衛兵に突き出してくだせぇ」
「出来ればその懸賞金は女神様に寄付させてもらえるとありがてぇ話です」
「え、いえ、私は別に……」
「なるほど、ここでそなたらを捕まえることが出来たのはモモヨさんのおかげ。
お前たちの言い分は最もだ」
カイトは野盗の言葉に大きく頷いた。
「そういう訳ですので出来れば街までご一緒しては貰えないでしょうか?
この者達の懸賞金をお渡ししたいのです」
「え、あ、うん、そうだよね。
分かりました。
彼等のことも心配なので最後までご一緒させてもらいます」
「最後まであっしらの心配をしてくださるなんて」
「ここで処刑されても悔いはねえ」
「ああ、女神様の役に立てるなら命なんて推しかねぇよ」
百代の優しさにまたも感激する野盗達であったが、百代はそんな彼等の前に再び立って相対した。
「もう、そんな命を粗末にするようなことを言っちゃダメです!
私も貴方達の罪が軽くなるように進言しますから、絶対に死のうなんて思わないでください。
カイトさんも協力してくださいね!」
またも上目遣いでそう話す百代の瞳に耐えられず、カイトは頬をぽりぽりと掻く。
「え、ええ、分かりました。
なるべく彼等の罪が重くならないように進言しましょう」