旅の始まりと話の幕切り
百代が街の門番に御礼を言って外に出て暫く街道を歩いて暫くした後、彼女の後ろから馬に乗った二人組が追い抜いて行った。
(……分かってるだろうな)
「あらあら、そんな気はしてましたけど。
何か心当たりがありますよね、ラクネさん」
(ノーコメントで)
1人と二つの柱が会話していると、その馬に乗っていた二人組の後ろ……馬を操っていた人物にしがみついていた人物が馬から飛び降りて百代の前に立ち塞がった。
「酷いですよ、巫女様!
私を置いていくなんて!!」
その人物は百代達が既に予見していたミリカであった。
「あら、ミリカさんは教会の仕事や子供達の面倒があるのでは無いですか?」
「神父様に言われたのです。
これまで教会のために頑張ってくれたけれど、それが全て解決した今となっては好きなことをしてほしいと。
だから、巫女様について行こうと決めた次の日にコレですよ!!
女神様が夢枕に立ってくれなかったら完全に見失うところでした」
(やっぱりやってんじゃねぇか)
(いや、一か八かではあったのですよ。
夢とは言え、私のメッセージが受け取れたのは彼女に巫女としての才能が有るからです。
百代さんは後継者とか興味ありません?)
「確かにそれはそうですね……分かりました。
一緒に行きますか?」
「はい、勿論です!!」
「それじゃ、私もご一緒させてもらえるかな?」
百代とミリカの話がまとまった時、馬を操っていた人物……カイトも馬を降りて2人の元にやってきた。
「理由をお聞きしてもいいですか?」
「恥ずかしながらこの国ではドルネスト子爵みたいな不正を行う輩が横行しているんだ。
今回みたいに仕込みがバッチリな場所はともかく、全部の怪しい箇所を仕込むだけのお金も人員もない。
だが、君とその中にいる女神様の力を借りれれば少しはマシになるんじゃ無いかと思ってね」
「私はこの世界を自由に旅して、その土地土地にいる神様に奉納をしたいだけなのですが」
「それで構わないよ。
何か掴めれば運が良かった程度の話だからね。
後は……単純に君達についていけば面白そうな予感がするんだよ」
「なんか嫌な感じですね」
「はっはっはっ、シスター・ミリカはハッキリと物を言うなぁ。
そういうところも楽しそうだ」
百代の腕にしがみついてべっと舌を出すミリカであったが、カイトは全く気にしていない。
(まぁ、良いのでは無いか。
女2人旅ではトラブルも多かろう)
(そうですね。
私の意見からすると、彼は信用できる男ですよ)
「どうやら私の中の神様は賛成のようですのでご自由に。
楽しい旅になるかは保証しませんが」
「大丈夫。
勝手に私の方で楽しむから。
あ、この馬を頼むよ」
カイトはそう言って道の向こうから来た旅商人のような人物に馬を預けた。
「今のって……」
「私の部下」
「どこにどれだけいるんですか」
呆れた顔で言うミリカとは反対に上機嫌で2人の後をついてくるカイト。
「ふふ、どうやら退屈はしないですみそうですね」
3人と二つの柱の世直しの旅はこうして幕を開けたのであった。
後に彼女達は国を跨ぎ、世界と神の諍いすらも解決していくのだが……それはまた別の話である。
このシリーズは一旦ここで区切りとさせて頂きます。
これからですが、別のサイトにて悪役令嬢の後日談という作品を連載予定ですので、興味があればそちらも読んでいただけると嬉しいです。




