自己紹介
「驚きました……まさか、助けようと思っていたレディに助けられるとは」
「あら、そちらの方は急に吹き飛んで行ったのですが大丈夫かしら?」
「え、あなたが投げ飛ばしたのでは?」
「あらあら……私はそんな危ないことなんてとてもとても」
「え、いや、今確かに……しかし、言われてみれば貴女のようなレディが男を投げ飛ばすなんて考えづらいか……」
男はそう言って女性の姿をマジマジと見つめた。
見たことのない紅白の仕立ての良い衣装を着てお。、光を反射してキラキラと光る髪を持ち、服の上からも分かるグラマラスな身体と、おっとりとしながらも周りを心配する姿は正に女神と称して良いだろう。
「あの……」
「これは失礼……レディをジロジロと眺めるとは申し訳ない」
「あ、それはどうでも良いんですけど……彼らを治してあげても良いでしょうか?」
「え、彼らをですか?」
女性が言う彼らとは、今さっきまで彼女を襲おうとしていた野盗達であった。
「ええ……何だかあちこち怪我をして痛そうですから」
「いや……彼等は貴女を襲おうとしていたので自業自得……」
「ダメ……でしょうか?」
「う、分かりました!
最低限の治療ならしても大丈夫です。
ただ、縄で縛ってからですよ」
女性の上目遣いの懇願に、男は根負けしてしまった。
本来なら治療してやる義理などないのだが、条件付きとはいえ了承されたことで満面の笑みを浮かべる彼女の姿を見ていたら、それでも良いかという気にさせられた。
男は野盗たちを手際よく縛り上げていった。
その最中のこと。
「あの、こんな状況で失礼ですがレディの名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「あら〜私ったらすっかり忘れていましたわ。
私の名前は百代と申します」
「モモヨさんですか、良いお名前ですね。
私の名前はカイトと申します」
「カイトさんですね。
よろしくお願いします」
そうやって二人が自己紹介していく中で横一列に並べられる野盗たち。
最初はやいのやいのと言っていた野盗たちだが、カイトの圧力によって黙らされてしまった。
そんな野盗たちに百代が近づき、しゃがみ込む。
「痛かったですよね、もう大丈夫ですからねぇ。
いたいのいたいの、とんでけ〜」
百代がそう言って野盗が怪我した部分を撫でる。
何とも可愛らしい治療だこと……カイトがそう思いながら傷口を見て衝撃を受けた。
カイトの打撃によって青ずんでいた皮膚。
その部分がすっかり良くなっていたのであった。