ミリカの仕事
「あの……本当に危ないから止めた方が……」
「気にしない気にしない。
いつも通りでお願いします」
ミリカの業務に付き合うという話をしていた百代であるが、当の本人は乗り気ではなかった。
それもその筈であり、ミリカはシスターの服は変わらないものの、腰には棘のついた金属の棒……いわゆるメイスと呼ばれる武器を装備していた。
そして、服に隠れて見えづらいものの足元には黒くて分厚いブーツを履いており、誰がどう見ても今から教会の仕事をするようには思えなかったのである。
それもその筈であり、ミリカの普段の仕事はギルドで仕事を請負、街の外でのアイテム採取や魔物の駆除を行なっていたのであった。
孤児院は街からの補助金と教会への寄付で運営されていたのだが、それだけでは最低限の生活しか行えない金額であった。
そこでミリカは成長すると共に少しずつこのような仕事を請け負って、手に入れた金銭を教会へと納めていた。
神父は最初はそこまでする必要はないし、自分の将来のために使うべきだと断っていたのだが、子供達のためと言われれば強く断る事ができなかったのであった。
現在はこの街のギルドの中では実力者となり、自分がいなくても孤児院の子供達が同じように仕事にありつけるようにと、後進の面倒を見ていたのであった。
という事で、今回はミリカと百代の他に、孤児院の子供が3人付いてきていたりする。
「姉ちゃん、巫女様は俺たちが守るから大丈夫だって」
「そうそう、それにお姉ちゃんがいれば何の心配もないでしょ?」
「大船に乗った気で任せてください」
「はぁ……あんた達が調子に乗ってる時が一番怖いんだけど」
そう口では言っているミリカであるが、実際に今から行く近くの森では、大きな危険はほぼ無い。
全体的に危険度の少ない森の中でも、特に安全な区域を回るだけだからである。
それでも薬草に木の実やキノコ、動物型の小さな魔物の素材など、需要はそれなりにあるので孤児院の稼ぎとしては十分である。
こうして、武装したミリカと3人の子供達に百代を加えた5人は街を出て森の中へと向かっていったのであった。




