駆け引き*3
それから一時間もしない内に、ロドホルンの中央広場は人でごった返すことになった。
「さあさあ!今ならドラゴンの鱗が手に入るぞ!小さい奴なら、鱗1枚につき銀貨8枚!だが2枚買うなら銀貨15枚にまけといてやる!買った買った!」
……ランヴァルドが、ドラゴンの素材を声高に売り捌いているからである!
ランヴァルドは威勢よく、そして楽しく、ドラゴンの素材を売り捌いた。
『ドラゴン?まさか倒したのか?』と首を傾げる者も居たが、借り物の露天の店先に並べたドラゴンの素材を見て、驚きこそすれ疑う者など居るはずが無い。
それにそもそも、ランヴァルド達がロドホルンに到着した時、ドラゴンの首を持って領主邸へ向かったところを多くの人々が目撃している。それからランヴァルド達が謁見している間にも噂は広まり、今や、ロドホルンの多くの人々が、『ドラゴンが打ち倒された!』と騒いでいる状態なのだ。
北部の人間は大抵、気難しくとも祭り好きである。他に娯楽が無いので、騒げる時には騒ぎたいのである。
よって、ランヴァルドはそれを煽ってやればいい。
「そこの御仁!中々の手練れだとお見受けするが、ドラゴンの牙はどうだ?それにドラゴンの皮もある!『次のドラゴン』を狩る時の為にも、ドラゴンの皮はあった方がいいんじゃないか?」
特に、戦士は狙い目だ。鎧をまとった者が居れば、ランヴァルドはかかさず声を掛けた。
彼らはドラゴンの素材も欲しいだろうが、それ以上にドラゴン殺しの名誉が欲しかったはず。それに、『次』のドラゴンが居ると嘯いてやれば、彼らもまた、ドラゴンの皮や牙を買い求めてくれるというわけだ。ドラゴンの炎はドラゴンの皮や鱗で防ぐのがよいのだ。よって、ドラゴン皮を貼った盾や鎧はよく売れる。
そして何より、ドラゴンの牙は勇猛な戦士を象徴するお守りである。気休めでもなく、実際にドラゴンの牙は魔石と同程度の魔力を有するものも多いので、特に身体強化の魔法を使えるような戦士であるならば、是非持っておきたい代物なのだ。
……さて。
こうしてランヴァルドは市井の人々にドラゴンの素材を売り捌いた。
値段は、少々安かったかもしれない。ランヴァルドが出したものは、主に小さな牙や鱗だったからだ。
『庶民でも少し頑張れば手を伸ばせる』という価格帯のものを多く出し、そして実際、多くの庶民に『少し頑張らせた』といったところだろうか。そのあたりの価格設定と、少々厳しい価格を飲み込ませる話術はランヴァルドの得意とするところである。
だが、まあ……ランヴァルドはここで儲けることよりも、とにかく多くの人々にドラゴンの素材を買わせ、ついでに在庫を吐き出すことを優先した。なので多少はおまけしてやることもあったのだが……隣で見ていたネールは、どうもこれが不思議だったらしい。
ランヴァルドが『分かった分かった。じゃあ鱗3枚で銀貨20枚でいい』とやっているのを見て、指折り数えては首を傾げていた。なのでランヴァルドは『お前の計算がおかしいんじゃなくて、俺が値引きしてやっただけだぞ』と教えてやった。
……さもないと、ネールはずっと、『銀貨8枚の鱗が3つで、銀貨20枚……?』と首を傾げていそうだったので!
「なあ、ネール。お前にとって、銀貨8枚は大金か?」
ついでにネールにそう尋ねてみると、ネールは少し考えて、こくん、と頷いた。
まあ、それはそうだろう。銀貨1枚あれば、パンが一週間分は買える。質素な家庭なら、一か月分の食費がなんとか賄えるかもしれない。
……そう。そこで、ドラゴンの鱗である。
食べることはできず、武器になるでもない、ドラゴンの鱗を売り捌いた意味はここにある。
「連中、蓄えを吐き出してドラゴンの素材を買い求めたからな。多分、この冬の食料を買う金が無くなった馬鹿も居る。そうしてひもじい思いをした時、奴らは何を恨むと思う?……自分自身じゃない。お上だよ」
そう。
ランヴァルドは今回……暴動の種を蒔いてやったのだ。
ネールは相変わらず、きょとんとしていた。それを見て苦笑すると、ランヴァルドは領主邸の方をちらりと見やる。
「ドラゴン殺しの伝説で有名なドラクスローガ領なら、ドラゴンの鱗は飛ぶように売れる。何せ、数代前が狩ったドラゴンの鱗が家宝として残るような場所なんだからな。……ま、それが分かる領主ならこうならないように、領主直々に全てのドラゴン素材を買い取っちまうところだが……」
ネールは理解していないだろうが、まあ、それはそれで構わない。『いつかは教えてやった方がいいんだろうか』と思いつつ、まあそれは当分先か……或いは永遠に来ない話だな、と思い直す。ネールが商売のことを理解してしまうと、ランヴァルドはネールを利用しにくくなりそうなので。
「それに、ドラゴンの素材なんて、鱗や牙ならまだしも、皮は『熱にも寒さにも強い素材』だ。炎だって防げるし、それでいて軽い。……こんなに武具に向くものを、例えば山賊連中にでも売られたら困るだろうにな」
ランヴァルドは、領主ドグラスの様子を思い出す。
……元が戦士の血筋なのだとすぐに分かるような、屈強な男であった。だが、少々考え無しなのか、或いは、ドラゴン殺しの英雄になどかまけていられないような、他の何かがあったのか。
まあ、どちらにせよランヴァルドにとっては同じことだが。
「ドラゴンの素材なんざ、下手な売り方をすりゃあ、市場が壊れる。治安も乱れる。そうなった時困るのは領主様だし、そもそもそれを防ぐのが領主の役目なんだが……」
ランヴァルドとしては、思うところが無いでもない。いずれ自分が領主になるのだと思って学び、考え、悩んでいた時が確かにあったので。
「……ま、こうなってようやく分かった領主様が『在庫』があるなら買おうと思って下さるかもしれないんでな。申し出て頂けりゃあ、俺だって売ってさし上げるのはやぶさかじゃあない。明日が楽しみだ」
だが、今のランヴァルドは領主ではない。ただの旅商人で、ただの悪徳商人だ。
だから、毟れる相手から、毟る。領主なら、それなりには金があるはずだ。いくら賊の対処に困っている真っ最中の、北部の領主だとはいっても。
「一日待たされた分、頂けるものは頂けるだろ。きっとな」
にやり、と笑うランヴァルドを見て、ネールはきょとんとしていたが、やがて、『ランヴァルドが嬉しそう』ということでにこにこと笑い始めた。……つくづく、ネールは無知で、そして、善良であった。
そしてある程度鱗や牙が売れたところで、ランヴァルドは店じまいすることにした。露店を片付け、露天を貸してくれたご婦人に露店を返して代金を支払い、ネールを連れて『竜麟亭』へと向かう。
『竜麟亭』はランヴァルドが以前も使用したことのある宿だが、まあ、表通りに面しているだけあって、それなりに安全で信頼できる宿である。在庫のドラゴン素材を持ち込んで部屋に置いておいてもある程度安全が確保されるであろうということで、ランヴァルドはここを選んだ。
「ああ、マグナスの旦那!こっちだ!」
……そして、予めエリク達、烏合の討伐隊に飲み代を渡しておいた甲斐があった。彼らはランヴァルドの目論見通り、『竜麟亭』のホールで酒を飲み、そして、人々に今回の英雄譚を語って聞かせていたようである。
宿の主人とカウンター越しに話し、部屋の鍵を貰う。代金はエリクが払っておいてくれたので、鍵だけ受け取ればいいのはなんとも身軽だ。
……その分、金貨を失うことになっているが、この程度はすぐ取り返せる。否、もう取り返した。先ほどの、小さな牙や鱗を売り捌いたあれだけで、既に金貨数枚分の稼ぎになっている。これならば、皮や大きな牙、骨や首を売ったら、いよいよ金貨100枚にも届くかもしれない。
そんなこんなでほくほくしているランヴァルドは、『ネール。今日はここで夕食だぞ』とネールに話しかけつつ、エリク達の席へと歩み寄る。
途端、エリク達はにこにこと満面の笑みと尊敬の眼差しでランヴァルドを見上げ、座っていた椅子をずらして、ランヴァルドとネールが入る隙間を作ってくれる。
そして同時に、彼らの周りに集まっている人々……ロドホルンの住民や、ドラゴン狩りの為にロドホルンを訪問していたのであろう冒険者達が、興味津々の表情でランヴァルドと、何よりもネールを見つめるのだ。
……どうやら、既に『ドラゴンを殺したのはネールだ』という話が行き渡っているらしい。
「マグナスの旦那!あんたからも聞かせてやってくれよ!この小さなお嬢ちゃんが、伝説の勇者様みたいにドラゴンを仕留めた時の話を!」
酒が入った分か、陽気で上機嫌なエリクが声を上げれば、多くの人々が『そうだ!』『聞かせてくれ!』とこれまた陽気に声を上げる。
ランヴァルドが少々戸惑った様子を見せてやれば、周囲からは『まあ飲め』『それ食え』と、酒のボトルや食事の皿が集まってきて、ランヴァルドとネールの前はすぐいっぱいになった。
ネールが目を瞬かせていたので、ランヴァルドは『好きなのを食べていいぞ』と教えてやる。するとネールは嬉しそうに頷いて、リンゴのパイが乗った皿を控えめに引き寄せた。それを見た人々が『かわいい!』『かわいい!』と騒ぐのも、まあ、ランヴァルドの計算の内である。
ランヴァルド自身も、並んだ酒をざっと確認して、一番弱そうなものに目星を付けると、如何にも『適当に選ばずに取った』と見えるような動作でそれを取り、瓶の栓を抜いて、瓶から直に酒を煽る。
ランヴァルドの仕草に『いい飲みっぷりだ!』『中々やるじゃねえか!』と歓声が上がるのを見て、ランヴァルドはひとまず安堵した。……北部人に受けの良い所作がどんなものかはよく知っている。だからそれを忠実に守ってやればいいだけだ。
ランヴァルドは改めて気を引き締めると、そうとは気取られないように椅子に座り直し、語り始めることにしたのだ。
「そうだな……じゃあ、どこから聞きたい?今回のドラゴンを仕留めた時のか……はたまた、希望があるならステンティールの竜退治の話から始めてもいい」
途端、『ステンティールの竜殺し!?』『なんだよ、ドラゴンを2匹も倒してるって!?冗談だろ!?』といったざわめきが歓声と共に上がり……ランヴァルドはにやりと笑いながら、早速、吟遊詩人か何かのように話し始めるのだ。
「じゃあ、ステンティールの竜……魔石食らいの岩石竜の話を始めよう。それについて話すには、まず、ステンティール領で起きていた恐ろしい陰謀と、それに巻き込まれた美しい姫君の話をすることになるが……」
……そう。ランヴァルドはまるで、吟遊詩人のようであった。
その話し方の朗々たる点は勿論だが……半分程度創作された物語を語るという点においても。
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ネールは、さくさくさくさく、とリンゴのパイを齧っていた。煮ただけの林檎がただパイの封筒に包まれたような、そんな素朴な味わいのパイであったが、これが何とも美味しかったのである。
……だが、ネールはそれも途中で忘れて、ランヴァルドの物語に聞き入ることになった。
何せ、ランヴァルドは話すのが上手だ。ランヴァルドが話しているのを聞くのは楽しいし……何より、堂々と物語を紡ぐランヴァルドを見ているのが、楽しかった。
「それもそのはず、ステンティールの姫君は、うちのネールに瓜二つだったのさ。だから俺達が囮になれば、本物の姫君を逃がすことができた、ってわけで……」
暖炉の炎の温かな光がランヴァルドの黒髪に反射してきらきら光る。藍色の瞳を笑みに細めながら話すランヴァルドを見上げて、ネールは『綺麗だなあ』と思う。
ランヴァルドが話す内容は、ネールとランヴァルドがステンティールで体験したことを元にして創った物語であった。あちこち事実とは異なるが、これがなかなか面白い。
ネールとエヴェリーナは同時にステンティールのお城に居たことになっていたし、エヴェリーナとネールが頻繁に入れ替わりながら問題を解決したような話になっていた。けれどそれが中々どうして、面白いのだ!
ついでに、マティアスは『美しい領主夫人に取り入ろうとした悪徳商人』として話されていたし……領主夫人は、そんなマティアスを突っぱねた、というような話になっていた。ネールは、これもいいと思う。
……領主夫人があの後どうなったのか、ネールは知らない。けれど、何も無いわけにはいかないのだということは、分かる。それが悲しいことだとも、思う。だから……ランヴァルドが語る『物語』はちょっとだけ優しいけれど、それがいいと思うのだ。
ネールはランヴァルドの話に聞き入り、時々ランヴァルドが『そこで活躍したのが彼女で……』とネールを誉めそやすのを聞いてもじもじして、周りの人々が『これも食え』『いっぱい食え』と食べ物をくれるのをちびちび食べ……中々に楽しい時を過ごした。
何せ、ランヴァルドが楽しそうにしていたので。
……ランヴァルドは喋るのが上手だ。そして本人も、喋るのは嫌いじゃないのだろう。ランヴァルドが生き生きと話し、その話に周りの人々が聞き入るのを見ていると、ネールは嬉しくなる。
ランヴァルドが嬉しいと、ネールは嬉しいのだ。ランヴァルドがきらきら輝いているのを見ると、ネールは嬉しい。皆にランヴァルドが褒められているのも、とっても嬉しい!
「ネールのこの白刃勲章は、こうしてステンティールの領主様から賜ったってわけさ」
そんなランヴァルドがネールの胸の勲章の話をしたので、ネールは少し堂々と胸を張って、そこに飾られた銀色の勲章が皆に見えるようにした。
ちょっと恥ずかしかったけれど、ランヴァルドも『よし、それでいい』というように笑顔で頷いてくれたし、ネール自身、周りの人達に『こんなに小さいのに白刃勲章とはなあ』『なんてこった、お嬢ちゃん、大したもんだ!』と褒められるのは、恥ずかしいけれど嬉しい。
……成程。褒められるのは、嬉しいことだったのだ。ネールはふと、そんなことを思い出した。
随分昔、自分の父母が自分を褒めてくれた時、やっぱりネールは嬉しかった。もう、忘れかけてしまっていたけれど……ランヴァルドと居ると、色々なことを新しく知るし、色々なことを思い出すこともある。
かつての幸せだった記憶の欠片を思い出したネールは、ちょっとだけ、ランヴァルドにくっついてみることにした。ちょっとだけにじり寄って、ちょっとだけ、体をランヴァルドの方へ倒す。
……すると、ランヴァルドは話を中断して、『眠いか?なら先に部屋に戻っていてもいいが』と優しく聞いてくれた。なのでネールは、ふるふる、と首を横に振る。まだ眠くない。まだランヴァルドの話を聞いていたいし、まだ、隣に居たいから。だからまだ、眠くない。
ランヴァルドはそんなネールを見て、『しょうがないな』と笑うと、もう少しネールの体を引き寄せて、しっかりもたれかからせてくれた。
ネールは、衣服越しにもじんわり伝わるランヴァルドの体温のぬくみを感じながら、思わずにこにこと笑みをこぼす。
……ああ、幸せ!
ランヴァルドの話が一段落したところで、すごく背の高い男性が1人、ぬっ、とやってきた。
エリク、という名前だったはずの彼は、お酒が回っているのか、にこにこと上機嫌だ。
「マグナスの旦那。飲んでるかい」
「ああ。この通り」
ランヴァルドはお酒の瓶を掲げて見せている。……でも実は、あれの中身がほとんど減っていないことをネールは知っている。ランヴァルドは瓶に直接口づけてお酒を飲んでいるふりをしているし、周りの人達はそんなランヴァルドに気づいていないけれど。……ちょっぴり面白いな、とネールは思っている。
「いいね。旦那、いけるクチかい」
「ま、人並みには。……本当は、北部の出なんだ。家を追い出されたもんで、『南部寄りの中部出身』と偽ってるんだがな。ま、そういうわけで、酒はぼちぼち、だな」
「へえ」
ランヴァルドがエリクに小声で伝えれば、エリクは目を円くして驚いていた。
「そうか……家を追い出された、って、いつ?」
「もう随分昔のことだ。まだガキの頃にな」
「じゃあ、あんた、家族は……」
「……両親と、あと弟が居たよ。今も幸せに暮らしていると思う。だがもう会いには行けないしな。向こうも俺がどうしてるかは知らない。死んだと思っているかもな」
ランヴァルドは伏し目がちにそう言って、今度は本当にお酒を飲んだ。一口だけれど。
「ま、俺はいいんだ。今、それなりに楽しくやってることだし……今の俺にはネールが居るからな」
それからランヴァルドはにやりと笑って、ネールの肩を抱き寄せた。抱き寄せられたので、ネールは遠慮なくランヴァルドにくっつく。嬉しい!
「こいつさえ居れば、俺はまだまだやれるんだ」
その上、ランヴァルドがそんなことを言うのでネールは益々嬉しくなる!ランヴァルドは、ネールが居てよかったと思ってくれている、ということだろうか。本当に?本当に?
……本当にそうだったら、とても、とても嬉しい!
「エリク。あんたはどうなんだ?このあたりの出か」
「ん?ああ、まあ……ロドホルンのちょいと北の出だよ。生まれてこの方、ドラクスローガを出たことは無いなあ」
ランヴァルドは照れ隠しのように少し乱暴にネールの頭をもさもさ撫でて、さっさとエリクへ話を戻した。でももう遅い。ネールはこの通り、ご機嫌になってしまった!
「そうか。家族は?」
「両親はもう死んだが、俺にも弟が居るんだ。まあ、ちょっと頭の悪い奴だが……」
……エリクはランヴァルドと比べて、頭が良くないように思う。そんなエリクよりも更に頭の悪い人が居るとしたら……多分、とっても頭が悪い人だと思う。ネールは神妙な顔で『大変だ』と頷いた。
「……図体はデカくなったが、かわいい奴だよ。俺も兄貴として頑張らなきゃなあ」
「そうか。それでドラゴン狩りを?」
「ま、そんなとこだな。へへへ……」
……ネールはエリクを見て、首を傾げた。
エリクは少し寂しそうな顔をしていたような気がした。でも、それがどうしてなのかは分からない。
「ささ、マグナスの旦那。いつまでも俺があんたを独り占めしてちゃ、皆に申し訳ねえ。あっちの連中も竜殺しの話を聞きたがってるみたいだし、俺はこの辺にしとくよ」
「ああ、そうか。……さて、俺はいつまで話すことになるかな」
「はははは、そんなの、夜通しに決まってる!なんてったって、竜殺しの英雄の話だもんな!」
やがて、エリクはそそくさと離れたテーブルへ戻っていった。すると、『なら俺達が』とばかり、ランヴァルドの話を聞きたいらしい人達が入れ替わりにやってくる。
なのでまた、ランヴァルドは色々なお話をすることになるのだ。……ネールはそんなランヴァルドにもたれつつ、時々頭を撫でてもらいつつ、楽しく、幸せな時間を過ごすことになったのだった。
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