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クズに金貨と花冠を  作者: もちもち物質
第一章:とんだ拾い物
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悪徳商人と野良の英雄*1

「親父。それ1つくれ」

 星空の下、祭りの人混みの中を悠々と進んで屋台の店主に小銭を渡せば、小さな焼き菓子を小さな紙袋にざっくりと掬い入れて渡してくれた。

 礼を言って屋台を離れてから、ランヴァルドは自分の片手をずっと握っている小さな手の持ち主に『ほらよ』と焼き菓子の袋を渡してやる。だが、少女のもう片方の手には、ここまでで買ってきた他の菓子やらなにやらがもう2、3あり、袋を抱えるのに難儀している。

 なら俺の手を離せばいいんじゃないか、と思うランヴァルドだったが、どうも、彼女はそうしたくない様子である。仕方がない。ランヴァルドはいくらか持つのを手伝ってやって、広場の片隅のベンチへ向かった。

 ベンチに腰を下ろすと、ランヴァルドの隣に座った少女はわくわくと、先程の紙袋を開け始めた。そうして中の焼き菓子をつまむと口に入れ……これまた随分と幸せそうな顔をするのだ。

 ランヴァルドはしばらく、幸せそうな少女の横顔を眺めていた。祭りの篝火に輝く金髪は、昼下がりの陽光か、はたまた豊穣の麦畑か。そしてその瞳が美しい海色をしていることを、ランヴァルドはよく知っている。

 ……だが、彼女が一度戦い始めれば、この髪が神々の放つ閃光のように見えることもまた、ランヴァルドは知っている。敵を見据える瞳が、何より冷たい氷のように見えることも。『救国の英雄』に相応しい凛々しさと美しさ、そして恐ろしさを以てして、彼女は敵を屠っていくのだ。

 ……だが今、こうして焼き菓子の甘さに口元を綻ばせる横顔を見ていると、どうにも『救国の英雄』には見えない。ただの、幸せそうな少女である。

「……他、気になるもの、あるか?」

 ランヴァルドが少女にそう話しかければ、きょとん、とした顔で少女はランヴァルドの顔を見上げた。そして、もじもじ、とした様子で、遠慮がちに首を横に振る。

 だが、ランヴァルドは少女に遠慮はさせない。そう決めている。

「この7日はお前にいくらでも付き合ってやるって約束だからな。遠慮はするなよ?『救国の英雄』様なんだ。そのくらいのご褒美は、あってもいいだろ。……な。ネール」

 ランヴァルドが苦笑を向ければ、少女ネールは、きょとん、とした後、表情を緩めて、ふや、と笑う。……やはり、英雄には見えない。

 ネールがつまんで差し出してきた焼き菓子をランヴァルドも口にすれば、さくさくとした食感と香ばしさが美味かった。中央に乗せられた木苺のジャムの甘酸っぱさが、中々いい。

『美味いな』と言葉をかけてやれば、ネールはこくこくと頷いて、また幸せそうに笑うのだ。

 ……ランヴァルドは、英雄になど到底見えないこの少女が英雄になってしまうまでのことを、順繰りに思い出していく。

 それは即ち……ランヴァルドとネール、この2人の旅路の回顧に他ならない。




 クズに金貨と花冠を

 第一章:とんだ拾いもの




「っ」

 その日、ランヴァルドは悪夢から目を覚ました。

 鎧戸の隙間から朝陽が差し込む宿の一室。ベッドの上。ランヴァルドはぜえぜえと荒い呼吸を整えながら、『ああ、またあの時の夢か』と分かり切ったことを確認した。

「ったく、こんな日に縁起でもない……いや、丁度いい、かもな……」

 悪夢には慣れたものだ。慣れたはずだ。そしてこの男……『ランヴァルド・マグナス』と名乗る彼にとってこの悪夢は、自分の執念、そして復讐心を燃やし続けるためにくべられる薪のようなものだ。いっそ、歓迎したっていい。そう開き直って、呼吸を整えたランヴァルドは寝台から抜け出した。


 旅商人であるランヴァルドは、それなりにきちんと身づくろいをすることにしている。より良い印象を人々に与えるためだ。印象がいい方が、儲かる。そういうことである。

 まずは動きやすい服に着替える。少々癖がついていた黒髪には櫛を通す。髭は剃刀で剃る。鏡を見て仕上がりを確認していれば、自身の藍色の目と目が合った。

「……やっと、だ。やっとここまで来たんだ」

 呟いて、ランヴァルドは鏡の中の自分に、にやりと笑った。

 今日はいい日だ。絶好の取引日和……そして、ランヴァルドの執念が、ようやく実りそうなそんな日なのだから。

「今年中に貴族位を買ってやるからな」

 見てろよ、と、ランヴァルドは自身へとも神へとも……或いは、『自分の生家』へともつかない決意を胸に、宿を出た。




「金貨500枚だ。きっちり揃えてきた。確認してくれ」

 薄暗い店内。カウンターの上に置いた革袋が、じゃらり、と重い音を立てる。

「……よし、確かに。じゃ、これで取引成立だな」

 馴染みの店員と握手して、笑みを交わす。全財産を投じて購入した武器の数々は、急いでかき集めてもらった物の割に質がいい。これなら高く売れるだろう。

「なあ、マグナス。美味い話があるんだが、一枚噛まないか?上手くいきゃ金貨30枚を山分けできる。だが、気難しい奴を口説き落とさなきゃならねえんだ。あんたの力を借りたい」

 そこへ、店員はにやりと笑って話を持ちかけてきた。……彼はランヴァルドの口の上手さや品を見定める目を頼って、こうして『美味い話』に誘ってくることが度々ある。

「悪いが、他を当たってくれ。今日中にもう、ここを発たなきゃならない。北へ行くんだ」

 だが、ランヴァルドは誘いを断った。大抵の誘いは受けるランヴァルドにしては、珍しいが……。

「北ぁ?……もしかして、あの武器全部、北に持ってくのかい?」

「ああ。丁度、北が荒れてんだよ」

 ……より美味い儲け話がある時に限っては、別なのである。




 今年は殊更に寒い夏だった。南でも北でもそうだ。

 冷夏は不作を生む。そして不作は飢餓や困窮を、飢餓や困窮は略奪を生む。……だからどの所領でも山賊や野盗が増えた。秩序を守るため、それぞれの町が、領主が躍起になっている。

 ……だからこそ、ランヴァルドは笑っている。

「ほー。つまり、アレか。困ってるとこに武器を高値で売りつけよう、って魂胆か」

「そういうことだ。だから、全財産叩いて武器を買い付けに来た、ってわけさ」

 冷夏に多くの領が苦しむ中だからこそ、売れるものがある。ランヴァルドはそうした商機を見逃さない。そして、良心的な価格で販売してやる気なんて、さらさら無い。北部のいくつかの領を巡って、足元を見た値段を吹っ掛けてやるつもりである。


「成程なあ。……しかし、こんだけ武器があると関所で大分もってかれそうだ。今、北の方じゃあ益々税が上がってるって話は聞いてるぜ。これだと、いくらぐらい持ってかれるんだ?」

 勿論、北部の領主達とて馬鹿ではない。ランヴァルドのような『悪徳商人』に私財を搾り取られないように、南から北に入ってくる武器や麦には高い関税を課していると聞く。

 だが。

「税?そんなものは無いさ」

 ランヴァルドはそう言ってせせら笑う。そう。ランヴァルドは、北部の領主共に税金を捧げてやるつもりはさらさら無かった。

「は?ってことはお前、関所を避けて北へ……?ん!?じゃあ、まさか、魔獣の森を抜けるつもりか!?」

「ご名答!」

 そう。ランヴァルドはこれから、武器を密輸する。

 関所を通らずに……その代わり、『魔獣の森』を抜けていくことで、北へ向かうのだ。


「護衛は付き合いの長い奴に紹介してもらった。ただでさえ、北に行けば略奪だらけだからな。どのみち、腕のいい護衛が必要だったんだ。その点、あいつの紹介なら大丈夫だろ」

「まあ、そりゃいいが……いや、おま、お前なあ、護衛を雇う金を税金として関所に納めるって考えにならねえのか?」

「ああ。今はこの数の武器にかかる税金より、真っ当な護衛5人分の賃金の方がよっぽど安いんだ」

「成程なぁ。毎度毎度、潔いまでの守銭奴っぷりなこって」

 まるで悪びれる様子の無いランヴァルドの言葉に、店員は『やれやれ』と首を振った。

「……だが何も、こんな毎回毎回、危ない橋渡るような真似しなくたって。お前さんなら、いくらでも安全に稼げるだろうに」

 ちら、と店員から心配そうな目を向けられて、ランヴァルドはけらけらと笑う。

「ま、その時が来たら潔く破滅してやるさ」




 がたがた、と荷馬車が揺れる。ランヴァルドは御者台から注意深く周囲を見渡して、野盗の類が居ないかどうか、時折確認していた。

 ……今日で、出発から3日。

 まだ北部に入っていないが、それでも警戒は怠らない。他人を襲って積み荷を奪いたい者達は、どこにだって居るのだから。

 それに今、荷馬車に積んでいるものは、ランヴァルドが全財産を叩いて買い付けた商品だ。これを失えば、正に『破滅』が待っている。

「暗くなってきやがった。もしかするとこりゃ雨になるかもしれねえぜ?なあ、マグナスの旦那」

「そうだな。まあ、魔獣の森に入るなら、むしろ雨はありがたい。俺達の気配が雨に紛れれば、魔物に襲われることも少ないだろうさ」

「そうかい。ま、俺達は別になんだって構わねえけどな……」

 荷馬車の周囲を守りつつ歩く護衛達と言葉を交わして、ランヴァルドは前方に見えてきた森……通称『魔獣の森』を睨む。

 ……『魔獣の森』は、いわば『魔力の多い土地』の一つである。

 良質な魔石や薬草を生み出すが、同時に、狂暴な魔物をも生み出してしまう場所だ。欲深い者達が金目の物目当てに『魔獣の森』へ潜って、そして、命を落としていると聞く。

 そんな場所を通るのは恐ろしいが、仕方ない。ランヴァルドは金のためなら、多少の危ない橋は渡るのだ。

「よし、ここから先は魔獣の森だ。覚悟はいいな?」

「ああ。頼りにしてる」

「……まあ、前払いで代金を貰ってるからな。しっかり働かせてもらうさ」

 ランヴァルドは少しばかり緊張しながらも、『ま、北の連中に税金を吹っ掛けられないためだ』と覚悟を決めた。


 魔獣の森へと踏み入れば、辺りは益々暗くなる。鬱蒼と茂る木々によって光が遮られるためだ。

 その一方、光が碌に入ってこないというのに、植物は随分と元気である。これも魔力の恩恵だろう。魔力の影響か、少々珍しいような薬草が所々に生えているのが見られた。これが『魔獣の森』なのだ。踏み入ってすぐですら、こんなにも恩恵がある。

「……マグナスの旦那。あんた、魔獣の森は初めてか?」

「そうだな。話に聞いたことはあったし、ここの商品を取り扱ったこともあるが……実際に入るのは、初めてだ。俺は戦士じゃないし、馬鹿でもないんでね」

 護衛に話しかけられて、ランヴァルドはそう答える。

 それもそのはず、『魔獣の森』には、恩恵も多いが危険も多い。そしてランヴァルドは、自分の実力をよく分かっている。まあ……『戦うのには不向き』と。

 ランヴァルドは、情報を仕入れる耳と、如何様にも回る口先とで切り抜けられる危機にならいくらでも身を投じるが、剣や魔法の腕が無ければ切り抜けられない危機は、できるだけ避けたい。

「へえ、そうか。何だ、戦いには自信が無いのか?剣を帯びてるってのに」

 ……護衛の目が、ランヴァルドのベルトに吊り下げてある剣を見つめる。ランヴァルドは然程強くないが、この剣はずっと、身に着けている。

「まあそうだな。この剣も、飾りみたいなもんだ」

「飾りにしちゃ、中々の業物に見えるがなあ?」

「まあ、張れる見栄は張っておくに限る」

 適当に嘯いて見せれば、護衛はすぐ、剣への興味を失った。……そうして、ランヴァルドは半ば無意識に、剣の鍔に刻まれた紋章を、指でなぞる。

 そうしてより一層、金と成功への意欲……それから復讐心を、静かに燃え上がらせるのだった。




 やがて一行は、魔獣の森の中程までやってきた。

 そろそろ、人ならざるものの気配も色濃い。ランヴァルドは肌に感じる魔力から、『ああ、それなりに近くに魔物が居るな』と察した。

 尤も、この馬車がすぐさま襲われるようなことは無いだろう。何せ、この馬車は念入りに、魔除けの香草を焚いた煙で燻してある。魔物からしてみれば、襲うのに躊躇せざるを得ない相手、ということになるだろう。

 それ故か、幸いにしてまだ一度も、魔物とは出くわしていない。

「そろそろ半分くらいか?……もう少し速度を上げたいんだが、どうだ?」

 ランヴァルドが問えば、護衛達は顔を見合わせて頷き合う。彼らからしてみれば、この魔獣の森は狩りのための場所であるのだろうが、ランヴァルドからしてみれば、常に命の危険がある場所である。できるだけ早く抜けてしまいたかった。

「ああ、そうだな……」

「大体、半分くらいか……」

 護衛達が、立ち止まる。それを見て、ランヴァルドは不審に思いつつも荷馬車を停めた。

 ……だが。


「じゃ、ここでお別れってことにしようじゃねえか」

 護衛達は、にや、と笑ってそう言ったのである。




 瞬時に警戒したが、遅かった。

「なっ……」

 しゃっ、と抜かれたナイフが迫り、ランヴァルドの右脚の腱を斬り裂いていく。

 びしゃり、と飛び散った血に、馬が驚いて嘶く。

 ランヴァルドが最初に感じたものは、衝撃と熱。それから一瞬遅れて、激しい痛み。

 どくどくと溢れ出す血が、御者台を濡らした。だが、悲鳴は漏らさない。下手に声を上げれば、魔物に聞かれる。そして、手負いの獲物が居ると、魔物に知れたら……。

「ほら邪魔だ」

 護衛はランヴァルドを御者台から蹴り落とす。地面に叩きつけられたランヴァルドが呻いている間に、護衛はひらりと御者台へ飛び乗った。

「何の……つもりだ……!」

 半ば答えの分かっている問いを投げかければ、護衛達はげたげたと笑った。

「何のつもり?そんなの決まってるじゃねえか!この積み荷は俺達が頂く。たったそれだけだ!」

「あーあ。ランヴァルド・マグナスもこうなっちゃ、ざまあねえな」

 ランヴァルドが目を見開いて見上げれば……そこには、にたり、と笑う護衛達の姿があった。

 ……付き合いの長い者に紹介してもらった護衛だ。前金で給金も十分に払った。他にもランヴァルドができる対策は、全てしていた。……だが、それでも、こうなる。

「前金を貰ってるからな。とどめは刺さないでおいてやるよ。その代わり、ここで魔物の囮をやってもらうぜ。そうすりゃ、俺達は安全にこの森を抜けられるだろうさ」


 荷馬車が行ってしまった。馬に相当激しく鞭を入れているのか、馬の嘶きも蹄の音も、すぐに遠ざかって聞こえなくなる。

 ……そして、残されたランヴァルドは、必死に脚の血を止めようとしていた。

 布できつく縛って、そして、治癒の魔法を使っていた。

 魔法を使えるほどの学がある者はそう多くない。だが、ランヴァルドは多少、魔法を使うことができた。そのうちの1つがこの治癒の魔法である。

 とはいえ、そんなに立派なものでもない。ランヴァルドが持つ魔力では、精々、血を止める手助けになるかどうか、といった程度である。……ランヴァルドは、多少魔法を使えるものの、その素質に優れているわけではないのだ。

 血は中々止まらない。やはり、ランヴァルドの魔法の拙さに対して、傷が深すぎるのだ。脚の腱はあまりにも容赦なく、ざっくりと深く、斬り裂かれていた。

「……くそ!」

 ランヴァルドは青ざめた顔で、悪態を吐く。

 全財産を奪われた。その上、手負いの状態で、魔獣の森に置き去りにされた。脚の腱をやられている。血が止まっても、もう、歩けない。

 最悪の状況だ。今を、そして未来を生きる望みは、とっくに潰えている。

 ……だがそれでも、ランヴァルドは必死に魔法を使い、生にしがみついていた。その甲斐あって、溢れる血の勢いが緩やかになり、そして、傷が塞がっていく。

「絶対、生き延びて……やるからな……」

 貧血と魔法による消耗とで、意識に霞が掛かってくる。だがランヴァルドは歯を食いしばって、生にしがみ付く。

 まだだ。こんなところでは終われない。こんなところで……復讐を終えるわけには、いかないのだ。

 思い出すのは、あの日。テーブルクロスや銀のカトラリーを汚す血と、それを吐いた自分。倒れた先、大理石の床と……自分を見下ろす、家族の目。

 だから死ねない。こんなところでは。何も成せないまま、死ぬわけにはいかない。


 自分が死んで、笑う奴が居るから。




 だが。

「……あ」

 ふ、と差した影にランヴァルドは顔を上げて、絶望した。

 そこには、血の臭いに惹かれてやってきたらしい魔物の姿があった。


 金剛(こんごう)(ひぐま)

 その存在は、毛皮や爪、牙の美しさで知られている。だが同時に、多くの人間を殺す魔物としても、よく名が知られていた。

 その金剛羆が、ランヴァルドの目の前に居る。……これからランヴァルドは、殺されるのだ。




「……くそ!」

 ならばせめて、と剣を抜く。

 ここで死ぬにしてもせめて、自分を殺す魔物の命を道連れにしてやろう、と。或いは、それが叶わずとも、生涯癒えない傷の一つくらいは、つけてやろうと。

 淀み腐った悪徳商人に堕ちたとしても、まだその程度の意地と……気高くあれ、と、多少の誇りは残っているのだ、と。

 ……だがそれ以上に、ただ、『死にたくない』と。


 その時。

 ぱっ、と血飛沫が飛んだ。そして金剛羆の巨体が傾ぐ。

 ……ランヴァルドは目を見開き、信じられないような気持ちでその光景を見ていた。

 金剛羆はその首筋を、すぱり、と斬り裂かれていた。そしてそれをやってのけたのは、木の上から躊躇なく、飛ぶようにやってきた……少女。

 彼女はその手のナイフを握り直すと、続けて金剛羆の目玉をその奥の脳髄ごと、一気に刺し貫いたのだった。




「な……んだ、これは……」

 あまりに呆気ない金剛羆の最期を見たランヴァルドが思わず声を洩らすと、ふ、と振り向いた少女の、海色の瞳と目が合った。

 少女はぽかん、としながらランヴァルドを見つめて、ぱち、と目を瞬く。

 ……そしてランヴァルドもまた、同じような顔をしていたのだった。


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― 新着の感想 ―
面白そうな作品ですね 読ませてもらってます
悪徳商人と野茂英雄に見えました。 新作期待してます。
先が楽しみな導入だなあ…と思ったらバカのデスゲームの作者さんだった!この作品も楽しみに読ませてもらいます
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