夢
懐かしい夢を見た。
あれは中学2年の夏前に起きた僕の人生にとってのターニングポイントなる出来事だった。
霧島さんにフラれた僕はダメな自分から生まれ変わることを決意した。
僕が改善したかったのは3つ。
・ダイエット
・勉強
・コミュニケーション能力
まずは痩せるために朝は30分、夜に1時間のウォーキングを始めた。それにプラスしてTouTubeで再生数が多かった痩せる体操の動画を毎日見てやった。
食生活も改めて、大好きだったポテトチップスなんかのスナック菓子やアイスやケーキなんかの甘いものを食べる事も控えた。
それ以外にも母さんにお願いして健康的な油や糖質の少ない料理を作ってもらった。
勉強面では学力を上げるために1日5時間のノルマを自分に課した。
とはいえ、元の学力も低く効率的な勉強法を知らない僕が1人でレベルアップするのには早い段階で限界を感じた。
だから両親にお願いして塾に通わせてもらった。
分からないことを人に聞けるというのは大きな変化で、塾に入ったことの恩恵をだいぶ受け取ることが出来たように思う。
最初は勉強しない日やお菓子をたくさん食べてしまったり誘惑に負けることも多かった。
その度に自分はなんてダメな奴なんだ。本当にどうしようないクズだなと自分を卑下することもあった。
それでも霧島さんに言われた言葉を思い出し、その悔しさをバネに僕は頑張った。
そうやって半年が経過した頃には80キロあった僕の体重は71キロまで落ちた。
勉強も努力した成果が出て平均30点ぐらいしか取れなかった僕が期末テストでは全教科75点以上も取ることが出来た。
そして肝心なコミュニケーション能力については姉さんやその友達に助けてもらった。
姉さんにコミュニケーションの取り方を聞いたり、友達との集まりに混ぜてもらうことで実践をつんだ。
その結果、僕は初対面の人でも緊張することなく話すことが出来るようになった。
最初は緊張したけど、女子大生に話し合いてになってもらうことは、コミュニケーション能力を上げるのに良かったと思う。
ありがとう姉さん。
そして、塾に入れてくれたりダイエットに付き合ってくれた両親にも感謝している。
そうして徐々に自信をつけていった僕は3年の春に霧島さんに告白した。
彼女は僕の成長を陰ながら応援してくれていたらしく、自分のことのように喜んでくれていた。
今の僕なら行けるかもしれない。彼女の反応やこれまでの努力を思い出して自信をみなぎらせた僕の告白は……
「ごめんね橋本くん。あなたとは付き合えない」
と失敗に終わった。
「理由を聞いてもいいかな?」
「あなたが悪いわけじゃないの…ただ…私は女の子にしか興味ないの」
そうして僕の初恋は終わりを告げた。
世の中には努力だけではどうにもならない事があると僕が知った瞬間だった。
それから茫然自失になった僕は地元から離れたくて、地元から行くと3時間以上かかる高校に進学することにした。
当然、実家から通うことは難しく親にお願いして一人暮らしをさせてもらった。
両親としても社会に出る前に一人暮らしをさせようと思っていたみたいで、すんなりと説得することが出来た。
にしても、本当に懐かしい夢を見たな。僕が霧島さんにフラれて1年が経ったのか。
「光〜!」
おっと、僕を呼ぶ声がする。
きっと朝ごはんが出来たんだろう。
え、一人暮らしじゃないのかって?
一人暮らしだよ。
ただなんの因果かご飯を作りにきてる女の子の友達が出来ただけで…