決意
「なんて言うとでも思ったの? バカらしい…」
「え?」
「あー、もしかして私がたまに君を見てるから勘違いしちゃった?」
彼女にそう言われてドキッとした。完全に図星だし勘違いしていた自分が恥ずかしい。
「なんで君を見ていたと思う?」
僕のことを見ていたのは勘違いじゃなかったのか……なんで彼女はたまに僕を見ていたんだろう?
「ど、どうして…?」
「自分を戒めるため」
「?」
どういう意味なんだろう?
「あなたを見て自分はこんな風にはならないように頑張ろうって思ってたの」
「どういうこと…?」
「私はあなたみたいに何の努力もせずに諦めて、負け犬のような表情をして過ごしている人が嫌いなの」
「私は努力をしている。勉強だって元から頭が良かったわけじゃないし、人付き合いだって元から上手かったわけじゃない! 見た目だって可愛いくあろうと勉強している」
だんだんと語気が強くなっていく霧島さんに僕は圧倒されて何も言えない。
「ごめんなさい」
「え?」
「あなたに八つ当たりしてしまったわ」
「八つ当たり?」
「そう。私もあなたみたいな時期があったから……昔の自分を見ているようでイラッとしてしまったの」
あの霧島さんに僕みたいな時期があった?
「だから、ごめんなさい。あなたと付き合うのは無理」
そう言って彼女は去って行った……
・・・
気が付けば僕は自分の部屋で布団の中に入ってうずくまっていた。
学校から家までどうやって帰ってきたのかも覚えてない。
彼女に言われた事がショックで頭から離れない。
まさかここまで他人に自分を否定されるとは思わなかった…
確かに今までの僕は「どうせ無理だ」と全てを諦めていた。
それこそ彼女に言われたように…
なんだか今日一日で凄く疲れた。もう何もしたくないし、誰にも会いたくない。
明日が土曜日で本当に良かった。フラれた次の日は気まずいだろうから、告白するのを金曜日にした過去の僕を褒めてあげたい。
にしても、昔の霧島さんが僕と同じようだったなんて……とてもじゃないが信じられない。
彼女は1年生の時に転校してきたから昔の事は知らないけど…
でも…もし本当にそうだとすれば……生まれ変わるために相当な努力をしてきたということだ。
そんな彼女に僕なんかが告白するのは烏滸がましい事だったのかもしれない…
ダメだ…考えていたら余計に悲しくて辛くなってきた。
もう寝よう。
昨日は辛いのを忘れるように晩御飯を食べることもなく直ぐに寝てしまった。
寝たことで精神がリフレッシュしたのか今は落ち着いている。
そして、改めて昨日のことを考えてみて思った事がある。
僕は落ち込んでいる場合なのかと?
そもそも僕は新しい自分に生まれ変わるための一歩として霧島さんに告白したんだ。
ある程度はフラれる覚悟もしていたし、彼女には散々なフラれ方をした。
でも、霧島さんが言っていたことは事実だし……僕はそんな自分を変えたいと思ってアクションを起こしたんだ!
だったら、まずは行動を起こした自分を褒めてあげよう。
昨日は今までの人生で1番ドキドキしたし、なけなしの勇気を振り絞って勝負したんだ。
結果は実らなかったかもしれないけど、逃げ出さずにやりきった。
僕にしては良いスタートダッシュを切れたと思う。
そして、こんな所で満足していたらダメなんだ…
生まれ変わろう。
そして中学を卒業する前にもう一度彼女に告白しよう。
今度は誇れる自分で。
だけど僕1人で生まれ変わるのは難しいとも思う。
その為にも…あの人を頼ろう。
「もしもし〜」
電話をかけると可愛らしい声が聞こえてくる。
「お願いがあるんだ姉さん! どうか僕を助けて下さい!」
僕は電話越しにみっともなく土下座をしながら姉に「助けて下さい」と懇願した。